人類が体系化された文字を使ったとされるのは紀元前3200年頃、シュメール人が文明として栄えていた時期とされています。
図形の書かれたトークン(象徴)を粘土板に押し込んで刻み、数の計算をはじめとした意思疎通に使われていたことが分かっています。
また、神殿に穀物を奉納したら穀物トークンを一つ、羊を奉納したら羊トークンを一つ、奉納した人に渡すなど領収証代わりとしても使われていたそうです。
とても合理的ですね。
このシュメール人たちが使っていた文字が知られている限り最古の文字として知られており、ここから楔形文字やヒエログリフなどの古代文字に繋がっていきます。
シュメール文明よりはるか昔、およそ2万1500年前に描かれた動物たちの絵が、現在のフランス中部にて発見されます。
ラスコー洞窟の壁画として知られるそれらの絵はおよそ1500点近く存在し、旧石器時代当時の生活を解き明かすヒントになるのではないかと現在も調査が進められています。
2023年1月5日にLive Scienceに掲載された文献では、ラスコー洞窟の壁画が人類の意思疎通の道具であったかもしれないという論旨がまとめられています。
今回は、そんな古代壁画の最新研究から分かったことを紹介していきます。
参考)
洞窟の記号が初期の書き言葉?
アメリカの生物考古学者Kristina Killgrove氏ら研究チームは、ラスコー洞窟の壁画に描かれている動物と共に記されている特徴的な記号について分析をしました。
動物の身体やすぐそばに、点や線などが多く記されていることは研究者たちの間では有名でしたが、それが何を意味するのかは分かっていませんでした。
一説によるとこれらの記号は、その種の動物が交尾や出産する時期などを説明するために用いられたと考えられています。
しかしその説を支持できるほどの明確な証拠がなく、学者によってはその説を否定する者もいます。
研究チームは800以上の絵と印を比較し、ある法則があることに気づきました。
それは、動物に描かれる印の数は13を超えることがないということです。
1月を約29.53日とし、約3年に一度、1年が13か月になる太陰暦の月数の数え方と合致しています。
ヨーロッパに生きた旧石器時代の人類は、主に馬や鹿、バイソンの肉を食べて生活していた狩猟採集民族でした。
彼らが狩を行う際、動物たちの移住、交配、出産に関する情報はとても重要です。
獲物を狩りやすい時期や獰猛になる時期を認識することは、そのまま生死に関わるからです。
ここから分かることは、旧人類は“過去の出来事を記録して未来を予測することができた”ということです。
実は私たちが思っているよりも文化的な生活営んでいたのかもしれませんね。
また、時折見られるY字の記号は、絵の動物誕生期を表すと考えられていますが、より十分な証拠を探すため、現在も調査が続いています。