今回紹介するのは、以前紹介したスペルミジンの研究についてです。
【以前の記事】
月間オートファジー2019年9月号掲載の研究報告を参考に、最新の研究の概要をまとめます。
スペルミジンとは…?
スペルミジンは、オートファジーやマイクロオートファジーなど細胞を保護する働きを促す成分(ポリアミン)の一つです。
スペルミジンを外部から摂取した場合でも寿命や健康寿命を延ばすことができる可能性を酵母菌、線虫、ハエ、マウスで確認しています。
人間においては、年齢と共にスペルミジンのレベルが低下することで、老化との関係が示唆されています。
スペルミジンが豊富な食べ物を食べることは、心疾患やガンのリスクを低減する可能性があることも分かってきました。
この研究では、年齢によるスペルミジンの減少に対抗するための栄養や他の方法について議論しています。
研究のまとめ
・スペルミジンには抗炎症作用があり、細胞(ミトコンドリア)の代謝を促進し、タンパク質の恒常性に効果があります。
・外部からスペルミジンを摂取した場合も、老化に伴う疾患に有益な効果をもたらすことが分かっています。(マウスなどの生物研究より)
・例として、寿命の延長・心肺機能の向上・神経保護・腫瘍対する免疫機能刺激・免疫老化機能の回避など…。
・スペルミジンは、いくつかのアセチルトランスフェラーゼの阻害を介してオートファジーを誘導します。
・スペルミジンがなどで活性化されたオートファジーは、様々な疾患の対抗策となることが分かっています。
・細胞内の毒性物質の蓄積が原因で起こる、がん、神経変性、心血管疾患などの加齢に伴う疾患にも対抗できる機能として確立されています。
・その効力は多臓器移植の拒絶反応を抑制したり、抗がん活性を促すラパマイシンと同等の力があるとされています。
・しかし、オートファジーが不活性化するとスペルミジンの抗がん作用や免疫機能が
失われます。(マウスでの実験結果より)
・ポリアミンの量や濃度などは、生物によって多種多様ですが共通していることが一つあります。
・それは年齢によってスペルミジンの量が減少するということです。
・健康に年を取るために(年によって健康を維持するために)必要なスペルミジンの量については不明瞭なところがあり、引き続き研究する必要があります。
年齢によって減少するスペルミジンの対抗策
老化とともに減少するスペルミジンを増やす(減らさない)ためには、どのような手段があるのかも記載されています。
①ポリアミンを多く含む食べ物を摂取する
②ポリアミンを多く含む植物抽出液を摂取する(↑と何が違うんだろう?)
③人工的に合成されたスペルミジンを摂取する
④腸内環境の改善(プロバイオティクスとプレバイオティクスの補充)
プロバイオティクス:乳酸菌、ビフィズス菌、酵母菌など
プレバイオティクス:食物繊維やオリゴ糖などの難消化性食品
さらに、マウスでの実験結果ではありますが、アルギニンの摂取がスペルミジンを合成するためのプレバイオティクスである可能性も示唆されています。
【スペルミジンが豊富な食べ物】
→大豆(納豆、味噌など)、チーズ、ヨーグルト、醤油、ミドリムシ、きのこ類…
→ピーマン、カリフラワー、ブロッコリー、ドリアン、ミドリムシ…
【アルギニンが多い食べ物】
→大豆(豆腐、納豆など)、エビ、かつお、鶏肉、豚ゼラチン、ナッツ…
まとめ
腸内の環境を整えることは、健康にも肌にもとても良いこととされています。
腸内環境を整えるのに必要な発酵食品の摂取は、健康をさらに増進させてくれるスペルミジンにとっても良いものです。
特に大豆は、スペルミジンもアルギニンも豊富に含んでいる万能食品です。
納豆、味噌、醤油などなど、大豆から作られる食べ物は、日本人の体に合うものが多いので意識的に摂取していきたいですね。