老化の防止や健康寿命を伸ばすことは、科学が発達する以前から人類が追い求めている大きな課題です。
長寿遺伝子の活性やテロメアの短縮抑制など、寿命に関する様々な研究が進む中、新たにこの健康や寿命に関する発見があったようです。
今回はその中心的テーマである、“タウリンと老化防止”についての研究紹介です。
参考記事)
・Boosting One Amino Acid Might Be The Secret to Longer Lifespans(2023/06/11)
参考研究)
・Taurine deficiency as a driver of aging(2023/06/09)
コロンビア大学、ミュンヘン工科大学らの研究者は、アミノ酸であるタウリンが体内で不足すると、動物の老化が早まることを発見しました。
また、タウリンの経口摂取によって老化を遅らせ、健康寿命を伸ばすことができることを発見しました。
研究では、タウリンのサプリメントを摂取したミミズ、マウス、サルのいずれも老化を遅らせ、中年回すの健康寿命を最大12%伸ばすことが示されました。
タウリンの補給によって、DNAの損傷、テロメラーゼの欠損、ミトコンドリアの機能低下、細胞の老化といった老化の主要なマーカーを遅らせることも示唆されました。
また、持久力や筋持久力及び筋力の向上、記憶力の改善、抑うつ行動の改善などタウリンを摂取させていないコントロール群と比べても、有意な結果が報告されています。(下図参考)
研究の責任者であるコロンビア大学の生物学者ヴィジャイ・ヤダヴ氏は「今回の研究はタウリンが、私たちをより健康に長生きさせてくれる万能薬になりうる可能性を示している」と述べています。
タウリンは肉、魚、乳製品に自然に含まれていますが、植物にはあまり含まれていない成分です。
新生児の体はタウリンを生成することに長けていないため、幼少期には栄養源が必要になることが多いです。
タウリンの研究では、糖尿病や抗酸化作用に効果があることが示されていますが、多くの場合、その役割はよく分かっていません。
ヤダヴ氏は、「タウリンが加齢と共に減少する、これらのプロセスを全て制御しているのであれば、血流中のタウリンレベルや健康全般や寿命に影響を与えるだろう」と述べ、タウリンと健康の強い関連性を訴えています。
以下の図は、研究によって示されたタウリン接種後の健康寿命の変化や影響についてまとめたものです。
ミュンヘン工科大学の分子運動物理学者ヘニング・ワッカーハーゲ氏は、「この発見は、運動による健康効果や老化防止効果の一端を説明できるかもしれない」と述べています。
一方、研究に参加していないペンシルバニアの生理学者ジョセフ・マクガン氏とジョセフ・バウアー氏は、「注意すべき点は、相関関係はあれど、因果関係が検証されないままであることだ」と指摘しています。
タウリンは、赤ちゃん用の粉ミルクやエナジードリンクなどに配合されており、大きなリスクは示唆されていませんが、潜在的なリスクや他の要因との相互関係を考慮することが重要とされています。
これを知るためには、大規模で長期的な人でのランダム化比較試験が必要です。
タウリンに関連する毒性作用は知られていませんが、この研究で使用された容量は人ではほとんど使用されたことがないほどの量であることも注意点となります。
ヤダヴ氏は「タウリンの補給がアンチエイジングに繋がるかどうかはいくつかの動物種での研究とサルへの介入から良い結果が分かっていますが、少なくとも今後テストしていく必要はあるだろう」と研究をまとめています。
・タウリンによって老化に関連する機能の改善が見られた
・タウリンが不足することによって、老化に関連する機能低下が助長されるように見られる
・研究では、ヒトが普段摂取しないレベルでのタウリンを摂取した点など注意点もある
・今後の研究結果次第では、人間の寿命を伸ばし、若さを保つ大きな発見になるかもしれない
研究でも言われていますが、タウリンは魚介類や肉に多く含まれ、野菜やフルーツにはほとんど含まれていないことから、ベジタリアンには不足しやすい成分でもあります。
タウリンが多く含まれる食材としては、牡蠣、アサリ、シジミ、ホタテ、イカ、タコ、アジア、サバ、ブリ、カツオなどの魚介類が挙げられます。
もし身体に元気がなくなってきたと感じたら、こういった魚介類を積極的に摂取してみるとより活発的になるかもしれませんね。
自分も今後意識して摂取みたい成分です。