タイトルから察する通り、童話作家宮沢賢治の話ですが、主人公は彼ではなく、その父親・宮沢政次郎です。この本の感想を一言でいうと、
です。政次郎は先祖から受け継いだ質屋を営んでおり、宮沢家は裕福な家庭でした。
この時代は明治維新から日露戦争が終わった時代の転換期であり、世代によって大きな認識の差がありました。政次郎は父から「質屋に学はいらん」と言われて、優秀な成績であったにもかかわらず、進学を諦めました。しかし息子の賢治には自分とは時代が違うと思い、進学を認めます。
いずれは賢治に質屋を継がせるつもりだったのの、はっきり言って賢治はドラ息子だったわけです。学校を卒業するもろくな就職はせず、実家にお金をせびって遊び、妙な宗教に浮かれて実家と東京を行ったり来たりします。
質屋を継がせるべきか、賢治の生き方を認めるべきか、もっと厳しくするべきか、賢治の信仰を認めるべきか。政次郎は質屋として有能な人で、厳格な父親でした。でも賢治や兄弟たちにもどのように接するべきかずっと悩んでいました。本当に親って大変です。
なんとなく農水省の元事務次官・熊沢氏が長男を殺害した事件について書いた、安田さんのブログを思い出した。この事件に関して、私は特に父と息子のどちらが悪いという考えはない。ただなんとなく宮沢親子の葛藤に似ているなと思った。