NewsPicks MagazineVOL.6のレビューの2回目である。
さて、AIについてもいくつか記事があったので、紹介したい。
まずご登場いただくのは、マイケル・オズボーン博士。
「10年後に『売れるスキル』『廃れるスキル』」というタイトルのインタビュー記事で、未来の雇用について語っている。
この記事の目玉は、「2030年に必要とされるスキル・ベスト30」と「2030年に必要とされなくなるスキル・ワースト10」という一覧だ。
「必要とされるスキル」のトップが「戦略的学習力(Learning Strategies)」。
これがどういうものか、博士による説明を引用する。
平たく言えば、新しいことを学ぶためのスキルです。「戦略的学習力」の高い人は、新しい知識を学ぶのが得意だということになります。「効率の良いノートの取り方を知っている」などは「戦略的学習力」の一例ですし、「専門家が知り合いにいる」というのも、有効なストラテジーといえるでしょう。言い換えれば、「新しいことを学ぶのにシステマチックなアプローチをとるスキル」ということです。
ーーマイケル・オズボーン、NewsPicks Magazine VOL.6より
なるほど。
たしかに変化の時代にあっては、学ぶ力は重要だ。
しかも、ただ闇雲に学ぶのではなくて、そこには戦略性が必要だということなのだろう。
少なくとも、教科書を読み、問題集を解くだけの学習は、AI時代には意味がなくなる。
オズボーン博士の記事の中で、もう一点興味深かったのは、「アイデアだけならAIでも出せる」というくだりだ。
AIは、ユニークなアイデアを出すことには、むしろ長けています。ただ、本当に必要なのは「ユニークかつ価値ある」アイデアを出すことですよね。目新しいアイデアなら何でもいいというわけではないでしょう。
ーーマイケル・オズボーン、NewsPicks Magazine VOL.6より
ここから考えると、価値観を持つことが、人間の価値になるのかもしれない。
つまり、人は全て知識労働者以上の存在にならなければ、働き手として無用の存在になるおそれがある。
しかし疑問も残る。
AIは本当に「ユニークかつ価値あるアイデア」を出せないのだろうか?
いつか可能になったりはしないのだろうか?
モントリオール大学のヨシュア・ベンジオ教授のインタビュー記事のタイトルは、ズバリ「人間にできて、AIにできないこと」。
ベンジオ教授は、AIが苦手なこととして、「教師なし学習」「因果関係の理解」「考えることをしぼること(考えなくていいことを考えずに済ませること)」等を列挙している。
これを読んで私が思ったのは、やはり正解のない問題において、人間のほうがAIよりも優れているということだ。(少なくとも現時点では)
データが豊富にあれば、AIのほうが強い。しかし、データや、考え方を与えられなければ、AIは問題に対応できない。
ここから考えると、「じかの体験」こそが、学習内容として本当の意味を持つのだと思う。
自分で見たり、聞いたりして、五感で確かめたことこそが、本当の学びだ。
よし、外に出よう。
いずれにしろ、今まで人が担ってきた役割の多くが、AI時代には不要になる。
そこで蔓延すると思われるのが、「役立たず感」だ。
人間の自己否定である。
AI時代には、人間の存在意義の喪失に伴って、絶望感が社会を覆うおそれがある。
私は、自己肯定感を育むことが、社会の最重要課題になっていくと思う。
いなくていい人などいない。
人はありのままでいい。
そうした考えが、根付いていくかどうか。
AI時代がユートピアとなるか、それともディストピアとなるかは、そこにかかっている。
(2020年1月27日)