「ウィークエンドはパリで」DVDで観た。
結婚30年の夫婦というところに人々の目はいくようだけど、僕はこの男性の自己実現という視点がその前に重要なのではないかと思った。
左翼文系教養人で、大学教授であった彼は失言が元で黒人差別を糾弾され、大学をクビになる。
パリでの若い頃の友人との再会。
彼は昔、主人公の紹介でチャンスをつかみ、今では有名作家である。
しかし、彼も本当の本当に幸せかというと、今ベストセラーになっているのは、昔からの評論の編集版であって、今この時代における新たな発言ではないのだ。
だからこの友人もすこし後ろむきで、だからこそ主人公との再会を喜び、パリの教養人のパーティに招き、まるで空虚を常に埋めることに必死なように僕には見えた。
友人は成功した文化人としての自分にしがみつき、主人公は妻にしがみつく。
背景に、彼らの青春時代の左翼文系隆盛の「サルトルな時代」がある。
結局、その思想や、個人的・社会的実現がどうなったのかの方が問題で、そこを飛ばして、この夫婦はどうなったかに視点を移すから、夫の妻への依存がどうのという話に、すり替わるのだと僕は思った。
だが、そういうレビューは少ない気がするので、僕が書いておく。
これは自己実現に失敗した教養人の物語で、夫婦問題はその二階に過ぎない。