メンタルヘルスマネジメント検定Ⅱ種を目指して、覚えたこと、感じたことなどをアウトプットしていくことで、記憶の定着と自分の考えの整理をしていきたいと思います。なお、内容については間違いなど普通にあると思います。これを見て落ちても責任は取れませんので悪しからず。
第14回目は、第5章もそろそろ最後となります。前回はこちら。
いままで、相談対応の基盤となるコミュニケーションの重要性、具体的スキルを見てきました。次は、飛ばしてしまいましたが、メンタルヘルス不調の早期発見には、部下のいつもと違う様子に気づくためのポイントというものがありました。そして、管理監督者が話を聴くということの重要性を、話すことで部下のセルフケアにもなるということ一緒に見てきました。
第5章の最後は、不調が疑われたときの対応となります。
管理監督者の役割は、何度も書いた気がしますが、「日常的に、労働者からの自発的な相談に対応するように努める必要があり、特に、長時間労働等により疲労の蓄積が認められる労働者、強度の心理的負荷を伴う出来事を経験した労働者、その他特に個別の配慮が必要と思われる労働者から、話を聴き、適切な情報を提供し、必要に応じ事業場内産業保健スタッフ等や事業場外資源への相談や受診を促すように努める」ことです。ただし、メンタルヘルス不調の相談に対しては、いつまでも管理監督者だけで対応することは危険です。早くしかるべき専門家に繋ぐのも管理監督者に期待されている役割です。
まずは行うことは傾聴です。相手に対する関心と相手を大切にする気持ちをもって、話される言葉だけでなく感情も含めて汲み取ろうとする姿勢が必要です。傾聴のポイントは以下の3つです。
1)他人に聞かれない場所で、ゆっくりと話せる環境を用意する
ただし、無制限に時間を割くのではなく、適切な時間(1~2時間)でいったん結論を出すか、日時を改めて話を聴くといった工夫も必要です。
2)少なくとも最初のうちは、自由に自分の言葉で語らせる
適度に相づちを打ち、分かったことは分かったと伝え、分からないことは質問するなどして、聴く姿勢に徹します。分かったつもりになったり、注意や説教・説得を早く言いすぎたりすると、「分かってもらえなかった」「受け入れてもらえなかった」と感じ、相談する意欲を失ってしまいます。
3)相手の発言の言外の意味や表現(表情、態度、声の調子など)、言葉の背後にある感情に注目する
ただし、相手が隠している感情を暴き出して指摘するようなことはしてはいけません。相手にとって非常につらいことになります。
相手のありのままを受け入れる姿勢で話を聴き分かろうとすることが重要です。と、テキストの内容を書いてみましたが、これは以下の
第12回で開設したマイクロ技法でいうところの、基本的かかわり行動と、基本的傾聴の連鎖の部分となります。↑に詳しく説明していますので、復習がてら読み返しておいてください。
テキストでは、傾聴でもって、相手が「尊重してもらえている」「分かってもらえる」と感じて積極的に話をするようになると示しています。自らの考えや感情を伝えようとすることで、曖昧だった考えや感情が明確になり、自ら問題の解決策を見いだす可能性が高くなると示しています。
これは、思考の言語化といわれるもので、頭で考えていたモヤモヤを言葉として可視化することで、さらに深堀ったり、視点を変えたり、抽象度を変えるなどすることで、問題が整理され解決に近づくことができます。
言語化をするためには、アウトプットの練習をするのが良いですが、それよりも重要なことがあります。それは、インプットを増やすことです。人間が思考する場合、言葉を使います。言葉を知らなければ思考もできません。語彙力を増やす過程で、多くの考え方や理論など新しい知識も手に入ります。自身の思考を整理する際に、より適切な言葉を利用することができるようになります。これは相手の思考を整理する場合も同様で、相手の語彙力に合わせた適切な言葉を選び話をすることで、相手の思考の整理を促すことできます。
言語化のいい例として、議論メシのオーナーである黒田さんが書いたnoteを紹介します。言葉を生業としている人の言葉はほんと凄い!
さて、テキストに戻ります。テキストでは、「分かるということ」とは?ということで、事例を挙げてポイント解説を行っています。そのまま書いても芸がないので、メンタルヘルスといえば「こころの耳」!ここには事例がたくさん紹介されていますので、テキストで分かった気にならず、ここを見て理解を深めるようにしてください。
相談を受けるうえでの2つの留意点があります。
1)先入観を捨てる
身近にいるからこそ、普段接しているからこそ、管理監督者は相談者に対する先入観を捨て、中立性を保つ必要があります。相談者が同僚の批判をするのであれば、相談を受ける側の先入観で判断せず、当の同僚や周囲の話も聴き、客観的な情報をもとに判断することが重要です。
2)自身の価値観は置いておく
自身の固有の価値観や人生観を相談者に押し付けてはいけません。説得、説教、注意をする場合や、相談者に共感する場合は注意が必要です。
相談者は自身の価値観や人生観が周囲と合わないために悩んで相談に来ています。なのに管理監督者が周りと同じような価値観、人生観を押し付けてきたら、もう、相談には来なくなってしまいます。逆に、共感していればよいかといえば、そうでもありません。共感しすぎると、簡単に分かったつもりになってしまい、その先にある大切な真実が見えなくなってしまいます。管理監督者が相談者と一緒になって怒ったり興奮したりしては、相談の意味がありません。
では、アドバイスはどうやって行えばよいのでしょうか?
管理監督職は助言や情報提供を求められた場合に適切な回答をしなければなりません。客観的情報であれば支障のない範囲で伝えることことは問題ありません。問題になるのは、考えや判断を求められる場合です。結果に責任が持てないことに対して断定的な回答をするより、「分からない」と答えるほうが誠実な場合があります。その場合でも、①相談者が判断を下す材料となる情報はできるだけ伝えるか、情報を得る方法を伝えます。②確実でないがある程度の確度をもって判断できるものについては断定的な言い方は避け、「自分ならこうするかもしれない」という言い方をします。信頼関係が十分ある場合は、自分のこと(生き方)に自分で責任を持つように助言するのもいいかもしれません。
また、自身の知識や権限を越えた助言や情報を提供すべきではありません。無茶な要求であった場合は忽然とした態度で臨むことも必要です。特別扱いや例外扱いは避けるべきです。管理監督者は対応に苦慮する場合は、人事労務管理スタッフや産業保健スタッフと連携することが重要です。
専門家へいち早く繋ぐことも管理監督者の役割の一つですが、専門家の診断や治療につなげることに抵抗を感じることがあります。
1)メンタルヘルス不調を疑うことに一種の罪悪感を感じる
2)相談者から頼りないと思われる
3)管理監督者自身が産業保健スタッフや専門医への相談に強く反発
これらの理由により、専門家への連携が遅れてしまい、手当てが遅れてしまうことがあります。また、自殺などの事故が発生する危険が高まり、安全配慮義務違反や注意義務違反ともされかねません。
メンタルヘルス不調者の相談の場合、自ら病気であるという自覚を持ち、治療を希望する者も多いですが、周囲のものが本人の健康状態を心配したり、本人の言動によって迷惑を被るなどして困っているだけで、本人は困っていないようにみえる場合が少なくありません。メンタルヘルス不調と思われる理由で正常な労務が提供できていなければ、明確に、なぜ受診が必要であるかを伝える必要があります。本人の健康状態がどのように心配なのか、周囲がなぜ困っているのかといったことを具体的に示し、非難するような言い方にならないように配慮しつつ、治療の必要性を説得すべきです。本人が受診の理由を理解してこそ、治療がうまくいくというものです。
管理監督者が相談を受け、自らの手に余ると感じた場合は、頼るべきはまずは産業保健スタッフです。本人を産業保健スタッフのもとへ相談に行かせることが困難であれば、困っている管理監督者が相談に行きましょう。一人で悩まずに助言や指導をもらうようにします。また、産業保健スタッフは、事業場外資源の専門医療機関(精神科、メンタルクリニック、心療内科など)や相談機関(精神保健福祉センター、保健所、産業保健総合センターなど)を紹介してくれます。
本人が受診を拒否している場合は、家族との連携も考える必要があります。問題の深刻さにもよりますが、本人の了解を得て家族に連絡を取り、家族に受診の必要性を理解してもらい、家族から本人に受診を説得してもらうべきです。家族の同意も得られない場合は、原則として強引に受診させることはできません。産業保健スタッフや人事労務管理スタッフを交えて検討する筆よぐあります。
緊急の対応を要するメンタルヘルス不調は、自殺の恐れがある事例です。自殺は本人と家族のためにも防止しなければなりません。また、過労自殺など自殺の業務起因性が認められる事例もあるため、企業の危機管理の面からも自殺の防止が必要です。
自殺のサインは以下に示しますが、予測することは難しいため、日ごろから「いつもの様子」を把握しておくことが重要です。
自殺予防の十箇条
1)うつ病の症状に気を付ける
2)原因不明の身体の不調が長引く
3)酒量が増す
4)安全や健康が保てない
5)仕事の負担が急に増える、大きな失敗をする、職を失う
6)職場や家庭でのサポートが得られない
7)本人にとって価値あるモノを失う
8)重症の身体の病気にかかる
9)自殺を口にする
10)自殺未遂の及ぶ
このようなサインがみられる場合は、1日でも早く専門医に受診させ、それまでの間、本人を一人にしないことが重要です。一人で帰すのはもってのほかで、上司が家まで送り届けるか、家族に迎えに来てもらい、事情を説明して目を離さないようにしてもらい、翌朝家族が付き添って(可能なら上司も)専門医に受診さえるように計らうべきです。メンタルヘルスにかかわる個人情報を他のものに伝える場合は、原則として本人の了解を得る必要がありますが、自殺のサインなどがみられる場合は、自殺防止のため、本人の了解を得られなくても関係者にしかるべき情報を伝えてよいです。
幻覚妄想状態である場合は、正常な判断力を失い事故を起こす危険があります。できる限り早く精神科を受診させなければなりません。自ら病気とは思わないばかりか、病気をみなされることにも抵抗を感じていることが多いので、受診は容易ではありません。本人が受診拒否を知る場合は、家族に連絡を取って家族に受診をさせるように働きかけます。幻覚妄想状態の場合は、本人の同意なく家族に連絡を取っても問題ないと思われます。また、受診の主体はあくまでも家族にあって、家族の要請で職場のモノが力を貸すという形はとっておかなければなりません。このケースでは服薬治療が必要になることが多いため、家族の理解・協力が不可欠だからです。
躁状態の場合も注意が必要です。職場では、部下・同僚だけでなく上司や大切な顧客も含めて相手かまわず激しく批判する・暴言を吐く・ケンカする、自身の権限を越えて顧客等との約束や契約を取り交わす、非常識・無謀な提案・主張をして改めない、危険な項により事故を起こすといったトラブルが生じます。治療は服薬が中心となります。ただ、これも本人が受診しようとしないことが多いです。受診のための手順は今までと同じです。受診する際は、本人の話だけでは適切な判断ができない場合があるので、必要に応じて、上司等が受診に同伴したり、産業医を通じて診察する医師に職場での状況を伝えるようにします。特に職場で深刻なトラブルを起こしていて、勤務に耐えられないと判断した場合は、家族と主治医に状況を伝え、休業(または入院)を検討するように依頼してください。
なお、躁状態はいったん改善しても、うつ状態や躁状態にまたなる場合が少なくありません。注意して見守り、症状が見れた場合は、家族や主治医と連携して適切な治療が受けられるように心がけましょう。
いままで、不調とは?メンタルヘルスケアとは?という知識に関することが多かったですが、この章は手法や手順といった実際に役立つ内容満載でした。ただ、気になっていることがあります。
それは、「主治医」についてです。みなさん、主治医っていますか?ちょくちょく登場するこのワードなんですが、歯医者や眼科、健康診断でいく健診センターくらいしか、定期的に病院にいかない私の主治医って誰問題があると思っています。
メンタルヘルスに関して主治医と呼べる人がいる人は、そもそもここで問題になる割合は低いんじゃないかと思うわけです。主治医についてはWikiでも明確ではないとしているので、答えは人それぞれなんだろうなというのがひとまずの結論です。そして、少なくとも私は主治医が誰だか分かりませんw