今、再びクリプト界隈が盛り上がっている。Redditのクリプトトークンの高騰、世界最大の資産運用会社であるブラックロックのビットコインETF申請、そしてSECリップル提訴の一部勝訴という事実は、これまで冷めていたクリプト界隈を再び熱狂が気にかけるきっかけになるかもしれない。
しかし、その前の月に起きたきことは全くの逆だ。暗号資産2大取引所であるバイナンスとコインベースがSECに提訴されたばかりだった。また、国際決済銀行は暗号資産について「新しい決済システムが従来の法定通貨を混乱させたり、置き換えたりする恐れ」があるとし、ハッキングリスクや不安定性、スケーリングの問題を解決できていないなど非常に懐疑的な見方を示している。
現状の暗号資産取引システムはブロックチェーンを使い何だか新しく完備なものとして移りそうではあるが、現実的、現状的に見て数多くのトラブルや困難を抱えていることは間違いない。慣れたり自己管理してやりくりすればいいというのは最もだが、クリプトが目指すのは一部の界隈が理解できればいいというポイントで良いのだろうか。
全てを完備にする必要はないまでも、まだクリプトを広く利用できるレベルで安全だと言えるかといえば言えない。これがより規制が強化され、整いつつあるならば、それが万全とは言えなくともクリプトの波に乗る国やコミュニティはさらに大きくなっていくだろう。
一連のリップルをめぐる騒動でその他のアルトコインの価格も吊り上がっている。リップルの価格は一時0.84ドルまで上昇したが、その後下降に転じ現在では0.69ドル付近を推移している。このことはステラルーメンやMATIC、SOLANAなどのほかのアルトにも同様に言え、今後の価格変動に注視したいところである。
SOLANAについても一時的に上昇。しかし、その後下落相場が続き現在では上昇前の水準にまで落ち込んでいる。
しかし、これらの通貨がパンプアップしたのはリップルの影響によるものであり、今のところ続報がなければそれ以外に上昇要因になるものはない。とはいえ、半減期が近づきつつあるビットコインを考えると、上昇に対する圧力は徐々に強くなっていくだろう。
ペペコインやドージコインなどの「ミームコイン」には以前から一定以上のジョーク性と一時的なバブルが生じることが指摘されており、それがクリプトのコミュニティへいかなる影響を与えるのかが注目されてきた。
暗号資産界隈にはこの世の法定通貨に比べて圧倒的な量のコイン銘柄があり、それぞれがプロジェクト単位であったりブロックチェーン単位であったりで価格変動を日々更新し続けている。ミームコインのような値動きの激しいものから、ステーブルコインのようにまったく動じないものまでその種類はいろいろあり、クリプトと一口に言っても三者三葉の様相を呈している。
ミームコインの問題は上に述べた通りで、いわゆるバブル的上昇、そして暴落を繰り返すことによる新参投資家の巻き添え(バックホールド)や機関投資家、大口投資家、著名人などがある程度ウェーブを生み出せること(パンプアンドダンプスキーム)が原因で長期的な投資対象としてみなされるかどうかという懸念をぬぐえないところにある。
とはいえ、ミームコインのような投機的商品は暗号資産界隈には山ほどあり、それが自称、もしくは公称で「ミームコイン」と名乗っていなくとも、値動きだけ見ればミームコインのようなアルトコインも大量にある。どちらの場合でも市場参加者はまるで噂をより効率よく救い上げて利益を獲得できるかどうかのPvP的なDYOR情報戦に誘われてしまうことになり、クリプトの持つ一つの特徴だともいえる。
今後のクリプトの発展を考えるとき、このようなほぼ同時刻に大量の人々が情報を得ることで値動きが生まれるという現象にどう対処していくのかというのは一つに動向が見ものであり、次に述べる「ワールドコイン」が仮に世界的に普及した場合、どのようにしてそれが現行のシステムに組み込まれるのかもまた注視すべきところだともいえる。
OpenAI社は今年の5月にクリプト界隈に参入することを暗示するかの如く、「ワールドコイン」なる暗号通貨を発表、同時にPlayストアにWorld Appという専用アプリまでリリースした。これにより、利用者は簡単にワールドコインを手に入れ運用することができるようになるが、これまでビットコインをはじめとして、Metaのディエムやイーサリアム、ステーブルコイン、CBDCなど数多のデジタル通貨が提案されてきたが、いまだに世の中に実装されたことはない。
それはそうで、これまでのクリプトはどちらかといえば現行の通貨システムにケンカを売るようなスタンスを垣間見ることができ、それがカジュアルで革新的に見えた一方で、問題を隠しきれていないという不安への対処がおろそかになっていた。それが最終的にテラルナショックやFTXの破綻によって露呈し、バイナンスやコインベースがSECの目の敵にされた一つの原因ではないかとも考えられる。結局のところ、以前から慢性的にクリプト界にあるハッキングや資金洗浄手法がなくならないことへの疑念がそれを生んでいる。
そういう意味では「クリプト界隈からではなく、AIから参戦する」OpenAI社なる存在は、信頼が揺らぐクリプト界隈に新しい風と信頼の回復を呼び寄せるかもしれない。その希望がワールドコインのムーブメントを前進させているのかもしれないが、それだけがワールドコインを押し上げている要因ではないかという疑惑もまた生まれている。つまり、新しい業界から来ただけで、これまでのクリプトを推し進めることは変わらず、本当にそれで何か解決するのでしょうか?という謎めいた不安が「幾多の暴落と破綻」を経験してきた現在のWeb3、クリプト界隈に生じているのではないかと考えている。