イギリスの投資の格言に「Sell in May and Go Away」というものがある。これは夏相場は株価が盛り上がらないから5月に売り抜け9月に再開しろというものだ。セルインメイという言葉自体はどこかで聞いたことがあるかもしれないが、アメリカの債務上限問題を発端とする一連の騒動は、まさにセルインメイを体現するようなストーリーをたどっているともいえる。
相変わらず下落貴重な米国経済だが、仮にこのままデフォルトした場合、それはそれはパニック相場になることは間違いない。しかし、この可能性はそこまで現実的ではなく、どちらかといえば債務上限が引き上げられデフォルトは回避するというのが大方の予想である。
しかし、このデフォルト回避シナリオにおいても株価が保っていられるという約束はできない。なぜなら、2011年ごろにアメリカは同じように債務上限を挙げており、その時は株安と通貨安に見舞われたからである。
2011年の体験談を考えると、この先6月以降に株価が落ち込むことは考えられる。さらに現在の米国株価指数はやや回復傾向にあり、2022年10月頃の底値で買い入れた層が一気に売り抜ける可能性もある。これらの2つのポイントを考慮するとこれから株安になる確率は高い。そして、もう一つがドル安懸念である。アメリカはこれまで日本円に対してドル高傾向が続いてきたものの、それの反動が来るといわれている。
つまり円高ドル安に一時的になるといわれており、確かに徐々にドル安にはなっているものの6月を境にまた一段と下落する可能性はある。
アメリカが抱える問題はデフォルトリスクだけではない。いわゆるファーストリパブリック銀行破綻もまた、金融危機の一環として考えるには十分である。これまで米銀が3行も連鎖的に破綻したわけだが、直近で破綻したFR銀行はとりわけ問題がある破綻をしたといわれている。なぜなら、ファーストリパブリック銀行は預金者の預金は全額保護されるといわれている一方で、株や債券保持者にはそういった補填が一切なかったという。
FR銀行はJPモルガンにより買収されたわけだが、このケースは異例なもので、過去に同様の買収劇に見舞われた銀行ではさすがに株・債券保持者にも一定額の補填があったという。
銀行が破綻した後で預金者預金を保護し、株などの保有者に対する補填はゼロにすることでお得に買収できることから、このような買収スタイルがはやってしまうとさらに金融問題が悪化するとみる投資家もいる。このような理由で、米国経済がさらなる衰退に向かうとなると、上記の株安、通貨安問題はより現実的なものになると考えている。