Christian Peters
May 23, 2022
Flowcarbon / 翻訳:Takeshi_TGAL
暗号技術/ブロックチェーン分野において、変化は加速度的に起こっており、最新かつ最高のものを把握し続けることは困難です。
時々、私たちは映画「カサブランカ」のイルサ・ルンドのようになってしまうことがあります。私たちの周りのあらゆることが変化しているにもかかわらず、世界を支える核心部分の構成要素は不変であることを思い出させてくれるサムのような存在が必要になります。
この記事では、分散型金融(DeFi)の最先端で何が起きているのかについての、私の考察を紹介していきます。金融におけるアイデアを基に、DeFiを動かす仕組みを導き出し、なぜトークン化が必要なのか、それがカーボン市場にどのような影響を与えるのかを共有していきます。
映画の話に戻れば、サムは正しかったのです。時間が経っても、基本的なことは何も変わらないのです。
金融は、リスクとリターンのトレードオフ、効率的市場仮説、資産価格決定の基本定理という、市場を支える3つの概念が絡み合って構成されます。
このような考え方の本質は、現代社会で大きな影響力を持っているにもかかわらず、学校で教えてくれることはありません。
資本主義の基本理念は「成長」にあります。これを踏まえれば、金融の世界でも成長が重要な役割を果たすことは、全く驚くことではありません。お金を持つ人は、自分が信じる企業やプロジェクトに投資をし、リスクを取ってリターンを得るというのが、雪だるま式に成長させるためのコンセプトです。より高いリターンを求めるなら、より高いリスクを伴う、これがトレードオフとなります。
効率的市場仮説は、資産価格が利用可能な全ての情報を反映して成り立っているとするものです。つまり、TSLAの株を買いたい場合、ebayのような検索エンジンで最安値を探す必要はありません。取引アプリの価格が何であれ、それがTSLAの最高かつ公正な価格であると定義されるからです。これは、金融商品を作るのに大いに役立ちます。
この仮説の副作用は、市場に勝てないということです。なぜなら、そのためには他の誰よりも良い取引をする必要があり、まさにこの仮説が最も強力に妨げていることだからです。
これは、ウォーレンビュッフェやレイダリオのような有名な投資家が、実際に一貫して市場に勝ち続けているという現実とは矛盾します。 しかし、金融市場が成熟し、技術革新が進むにつれて、それは日々難しくなっています。
ほとんどの人は、私たちが話している効率性のレベルがどのようなものであるのか、見当もつかないのではないでしょうか。もし、金融の裏側を知りたければ、「Flash Boys」の物語を読まれることをお勧めします。著者のマイケル・ルイスは、シカゴ先物取引所とニューヨーク証券取引所を結ぶ光ファイバー直通ケーブルの建設について解き明かしています。
内容の一部を抜粋すると次のとおりです。「邪魔な家があれば購入して解体し、川がある場合は干上がらせ、山がある場合は爆破します。 私たちは直線的に全てを構築しています。」 目標は、信号の送信を17ミリ秒から13ミリ秒にすることでした。これは、物理的な最小値に途方もなく近い値です。 このための資金は、ほぼ即座にオーバーサブスクライブされました。
したがって、ひも理論に大きく貢献し、同じような経験を持つ人たちが大挙して押し寄せない限り、効率的市場仮説はあなたにとって真実であると言えるでしょう。
効率性を追求するのは、市場参加者がアービトラージの機会を得ようとするインセンティブが働くからであるといえます。アービトラージは金融市場の闇の力であり、資産価格の基本定理の関心事なのです。
アービトラージの数学的定義の概念はむしろ直感的なものであり、この取引自体はリスクのない利益を生み出すものです。例えばTSLAがロンドンで1000ドル、ニューヨークで1010ドルで取引されているとすると、ロンドンで買ってすぐにニューヨークで売れば、リスクを取らずに10ドルの利益を得ることができるのです。
リスクを取らない利益は、成長に対する直接的な攻撃であることに注意してください。テスラの電気自動車やバイオンテックの癌治療などのように、リスクを取らずに儲けることができるのに、なぜリスクを取ってまで投資する人が増えるでしょうか?もし、リスクなしで儲かるなら、投資をする必要は無くなります。なぜなら、リターンはリスクとトレードオフにならないからだ。投資がなくなれば成長はなく、したがって全てのフライホイールが止まってしまいます。
豊かで繁栄する経済は、アービトラージの機会をなくすよう努力する必要があるのです。資産価格に関する基本定理は、市場がアービトラージを行わないための必要十分条件を示しています。
抽象的で理想的な市場ですが、現代の金融システムは大きく飛躍し、現在では多くのシナリオで、これらの条件の範囲内で市場を「完全」と単純化することで十分であるといえます。
さて、金融の構成要素を理解したところで、分散型金融とは何かを理解していきましょう。
以下がその定義です:
・DeFiは、分散型市場が必要とする条件に近づくためのプリミティブを提 供する運動である。
・分散型市場において、基本定理の求める条件に近づくためのプリミティブを提供する動きである。
・資産価格決定の基本定理で求められる条件に近づくために、分散型市場のためのプリミティブを提供する動きである。
実際には公の定義ではなく、この記事を書きながら作ったものです。しかし、ブロックチェーン市場の成長を促したいのであれば、イノベーションが必要である、という考えは確固たるものだと思います。無リスクの利益が支配する市場では、イノベーションは存在し得ないことを私たちは知っています。したがって、市場が完全な市場に向かうためのビルディングブロックを用意する必要があるのです。
完全な市場のまさに基本的な構成要素は流動性です。
流動性とは、市場価格に影響を与えることなく、資産を他の資産に変換することができる容易さのことです。
これも直感的に理解できる概念です。あなたが自由に使える1000ドルを持っていて、ロンドン証券取引所でTSLAに投資し、これが市場を動かすと、TSLAは高い価格で取引され、TSLAの以前の適正価格でまだ取引されているニューヨーク証券取引所に向かって裁定取引の機会を作ることになるのです。
私たちが欲しいのはアービトラージの機会ではなく、流動性です。買いたい人は、常に公正な市場価格で売り手を見つける必要があります。その逆もまた然りです。流動性は、非常に基本的な概念なので、昔も今も分散型金融の最大の研究対象になっています。
その黎明期には、多くの人によって分散型市場において流動性はあり得ないと固く信じられていました。
ブロックタイム、スループットの制約、そして保留中の取引の前倒しといった問題により買い手と売り手が価格に合意することは困難であり、従来の流動性の重要なブロックであるオーダーブックは、分散型金融では構築不可能と思われていたのです。
この問題を解決することで、暗号分野におけるDeFiのブルランが始まりました。Bancor、Uniswap、MakerDAOなどのプロトコルは暗号分野の冬の時代を乗り越え、DeFiイノベーションの本にその名を刻みました。最近の分散型金融の最大のアイデアの1つは、オーダーブックに対して取引を行わないということです。カーブに対して取引するのです。
最も基本的なバージョンでは、X軸とY軸に取引ペアをプロットします。トークンBを買うには、そのカーブに対応するトークンAを支払う必要があります。
現在、私たちは一般的な分散型取引だけでなく、融資や保険、その他多くの分野でも同等のものを手に入れることができます。
これらは相互に積み重なるものであり、例えばレンディングとトレーディングの機能があれば、信用取引を行うことができます。信用取引が可能であれば、空売りができます。空売りができれば、ポートフォリオのデリバティブポジションを相殺することができます — などです。
資産の需要をY軸に、流動性をX軸にとった2次元の空間を描いてみましょう:
ある資産がその空間で上にあればあるほど、人々はそれを手に入れたいと思うもの、つまり需要があることを示し、その資産が右肩上がりであればあるほど、流動性は高いことを示します。
例で説明してみましょう:
これは目測であり、軸となる数字がないことに注意してください。
Appleは世界で最も価値のある企業であるため、多くの人がポートフォリオに入れることを良い選択肢として持っています。
バフェットも欲しがっているし、多くのファンドも欲しがっていて、需要はかなり高く、非常に高い流動性があります。適当な証券取引所があれば、かなりの確率でAAPLがそこで取引されているでしょう。そして、トレーディングアプリを使えば、おそらくホット&トレンドビューにAAPLが表示されていることでしょう。これが需要が高く、流動性が高い資産を意味します。右上の大部分は、伝統的な金融の領域からの資産とデリバティブで構成されています。
一方で、ロシア国債は需要も、流動性もほとんどない例として挙げられます。現状、ロシアは金融市場のほとんどから排除されており、西側諸国の制裁によって、取引が違法となることさえあります。その上、ロシアは将来の利回りをルーブルで支払うという需要を無視した動きを発表しています。ロシア国債は世界で最も有害な資産クラスであるため、需要がないのです。
ロシア国債を持っている人は皆売りたがっていますが、誰もその資産を買いたがらないので、流動性もありません。その結果、ロシア国債が最も多く取引されているロシアの証券取引所は数週間閉鎖され、機能することはなく、今日でも厳しく制限されています。
その中間に位置するのが分散型金融です。
DeFiはまだ従来の金融ほど流動的ではなく、需要も多くありません。しかし、多くの進歩を遂げています。DeFiへの投資は、基本的に、DeFiが需要/流動性空間の右上に移動し、TradFiの領域を征服することに賭けることを意味します。
DeFiは過去数年間、資産を流動化させるためのツールを数多く開発してきており、これは、この分野でのチャンスの窓を開くためのものです:
問題は、高い需要を持ちながら流動性のない資産クラスが存在するということです。もし、そのような資産クラスを特定し、DeFiスペースに接続して流動性を高めることができれば、需要の高い実際のユースケースができ、DeFiの動きを加速させることができるでしょう。
このように資産クラスをDeFiに接続するプロセスは、トークン化と呼ばれています。数年前は、DeFiのツールがまだ成熟していなかったため、実現できませんでした。今、この領域はそこに到達しつつあります。
この記事はflowcarbon.comの記事としてお読みいただいているので、おそらく私が何を言いたいか察しがつくと思います。私たちflowcarbonは、左上隅、トークン化ハイプトレインのメインステーションにある資産があると信じています。それが、カーボンクレジットです。
現在のカーボンクレジット市場は、価格発見が明確でなく、不透明な個別交渉が存在し、流動性の低い市場となっています。一方で、この産業の予想成長率は驚くべきもので、2030年までに15倍、2050年までに100倍になると予想されており、需要を持つ企業側は何十億ドルもの資金を用意しています。
今、私たちFlowcarbonは全てのピースを組み合わせるための取り組みを進めています。
ReFi(再生金融)とは、搾取ではなく、回復させることを目的とします。現在の資本主義は、報酬を懐に入れながら、環境リスクを無視し、アウトソーシングされることによって形骸化されているのが実情です。この悪しき流れを止め、カーボン市場および資産をは金融分野で「一流」のカテゴリと成長させていく必要があります。
それがFlowcarbonの仕事です。私たちは、カーボンクレジットを流動化するビジネスを行っており、X軸の左端にあるカーボンクレジットを、可能な限り右側に持っていくのがミッションです。
流動性の提供が、この分野で現在最も求められている要素であり、Flowcarbonはその要求に応えるために取り組みを続けていきます。
Flowcarbonは、カーボンオフセットをブロックチェーン上で実現する気候変動技術のパイオニア企業です。私たちのミッションは、カーボン市場をアクセス可能で透明性の高いものにし、数十億ドル規模の資金を気候変動プロジェクトに直接投資することです。炭素、持続可能性、ブロックチェーン技術の専門知識を結集した経験豊富な起業家チームによって設立され、世界有数の投資家の支援を受けており、人類、生物の多様性、地球にとって真のポジティブなインパクトをもたらすために全力を注いでいます。
気候変動の緩和には、組織的な行動が必要であり、個人でオフセットをお考えの方にも、組織としてオフセットをお考えの方にも、それぞれのニーズに合わせたカーボンソリューションを提供します。実際に、多くの組織がカーボンオフセットを利用して、ネットゼロの目標達成に取り組んでいます。
Flowcarbonは、カーボンクレジットをチェーンに乗せ、トークンに変換し、ボランタリーカーボン市場をより透明で、流動的で、アクセスしやすいものにします。そして、フラッグシップトークンであるGNTは、組織レベルのカーボンクレジットに支えられており、個人および企業のオフセットニーズに適合して機能します。
地球を守るために、Flowcarbonがどのように世界中の人々のオフセットニーズをサポートできるかについて、各コンテンツをフォローして情報を入手していきましょう。
翻訳:Takeshi_TGAL
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Nicole Shore
Head of Communications, Flowcarbon
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