題名 82年生まれ、キム・ジヨン
著者 チョ・ナムジュ
訳者 斎藤真理子
発行 筑摩書房
ページ数 189
キム・ジヨン 韓国人女性。凡人だが努力家。発病し精神科を受診する。
チョン・デヒョン ジヨンの夫。おおらかな性格。
コ・スンブン ジヨンの祖母。韓国の昔の女性を体現する人。
オ・ミスク ジヨンの母。しっかり者で才覚のある人。苦労人。
キム・ウニョン ジヨンの姉。ジヨンを支える。
精神科医 ジヨンを診たカウンセラー。この物語の語り手。妻の症状とジヨンの症状の共通性に気づく。
キム・ジヨンはごく普通の韓国人女性です。ある日、ジヨンはあたかも他人に憑依されたかのような言動をし始めます。祖母や母のような話し方をし、あとで聞いても話していた内容を覚えていません。ジヨンは精神科を受診します。カウンセラーは原因を探ろうと、ジヨンと夫のチョン・デヒョンから、ジヨンの過去を聞き出します。
読者はジヨンの半生を追体験します。明らかになるのは、韓国の女性の生きづらさです。まるで社会学のように、統計データをもとに、女児の堕胎とそれに伴う性比のいびつさ、女性の進学・就職のしづらさが示されます。
投薬によりジヨンの症状は和らぎますが、完治はしません。カウンセラーは自分の妻のことを思います。妻の症状もジヨンと同じ原因から来ているのではないだろうかと。しかしこのカウンセラーも昔ながらの男の考えを持つことが最後に明らかになります。「医院の女性スタッフは、育児の問題を抱えていない未婚女性がいい」...。
これを読んで、ネトウヨなど一部の人は、歓喜の声をあげるかもしれません(そもそもネトウヨは韓国の本を読まないでしょうか)。「ほらみろ、やはり韓国は【ヘル朝鮮】なんだ」と。しかし多くの人は、こう思うのではないでしょうか。「これって、ちょっと前の日本のことだよな」と。そうなのです。本書に出てくる韓国を日本に置き換えてもそのまま通用するのです。
東京オリンピック・パラリンピック競技大会組織委員会の問題が起きたときにこの本を読んだので、とれもタイムリーでした。私は老害によるものとは思っていません。自分を更新できなかった男による、育ってきた文化による発言だったと思っています。
本書に登場する男性は、ジヨンの夫・チョン・デヒョン以外著者から名前を与えられていません。個人的には、チョン・デヒョンも名前がなくてもよかったのではないかと思います。そこになんらかの著者のメッセージがあるのかもしれません。世の女性の恋人、夫よ、気をつけなさいということなのでしょうか。
本書は訳がこなれていて、とても読みやすいです。渡韓して数十年の女性が翻訳しています。かなりの実力者と見ました。
若い女性達には、このビデオを贈ります。女性を鼓舞する歌です。アニー・レノックスが美しい!(セクハラ発言ではないつもりですが...)アレサ・フランクリンも若いですね。
Eurythmics - Sisters Are Doin' It for Themselves (Official Video)
以上