東京オリンピック中止論が高まっています。背景に官民対立・民業圧迫があります。国が自粛を呼びかけるならば率先して国が関わるイベントは中止するものです。そのようになっていないことが問題です。東京都杉並区は緊急事態宣言中の2021年1月11日の成人の日に東京23区で唯一リアル成人式を開催しました。杉並区の方針は批判されました。東京オリンピック中止論は、これと同じ問題です。
ワクチン接種が進んでいる英国でもデルタ株が流行し、ボリス・ジョンソン首相は21日に予定していたイングランドのロックダウン緩和を4週間延期すると発表しました。ワクチンを接種しても免疫ができる前に感染対策を止めて新型コロナウイルスに感染する例があります。コロナ禍は楽観できる状況ではありません。
民間に自粛を要求しながら、公務員は無視している実態も明らかになりました。兵庫県警神戸西警察署では居酒屋で歓迎会を開催し、新型コロナウイルス感染症の集団感染が起きました(林田力「居酒屋歓迎会の神戸西警察署長が新型コロナウイルス感染」ALIS 2020年4月14日)。
埼玉県警では上尾警察署地域課の20代の男性巡査が同僚6人と会食後に新型コロナウイルスに感染しました。警視庁尾久警察署長は十数人の懇親会参加後に新型コロナウイルスに感染しました。神奈川県警藤沢署員計9人は飲酒を伴う会食を行い、このうち4人が新型コロナウイルスに感染しました。宮崎県警日向警察署では同僚と会食し、午前2時までカラオケ店で過ごした生活安全課の男性警察官が新型コロナウイルスに感染しました。
東京五輪はコロナ禍がなくても、民間ビジネスにとって交通規制で首都圏の物流に影響を及ぼす迷惑な要素がありました。2020年は五輪が延期され、物品の納期を間に合わせるために特別な配力をしなくて良くなったと胸をなでおろしたものでした。これは納期意識の乏しい公務員には理解できないことかもしれません。中止を歓迎する土壌は元々あります。
五輪のために民間に我慢や負担を押し付けられることは民業圧迫です。政府は五輪期間中に集中的なテレワークを呼びかけますが、本来は歓迎できるテレワークも五輪のために強制されるならば悪印象を与えかねません。日本のテレワークの普及にマイナスになりかねません。働き方改革は個々人に自由な働き方の選択肢を増やすことであって、皆が一斉に同じことをするならば昭和の集団労働に逆戻りします(林田力「プレミアムフライデーの世間知らず」ALIS 2020/08/29)。
この官民対立・民業圧迫の視点に立てば、プロ野球などの民間イベント開催は、東京五輪開催の正当化になりません。率先垂範する立場である国の問題です。東京五輪中止論は、厳格な感染防止を求めて民間イベントも東京五輪も全て中止に賛成という立場だけのものではありません。民間イベント開催には問題意識を持たないが、東京五輪中止は賛成という立場も成り立ちます。それどころか映画の上映や飲食店の酒類提供などを求める立場からの東京五輪中止賛成も成り立ちます。
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埼玉県警察不祥事