自民党の山下雄平議員が2021年5月14日の参院議運営委員会で金曜日に緊急事態宣言やまん延防止等重点措置を決めることを止めるように要望しました。金曜日の決定となると、適用対象となった地域の事業者は土日を返上して対応しなければならなくなるためです。自分達はルールを押し付けるだけという公務員の民間感覚欠如が背景にあります。
当然のことながら、新型コロナウイルスは土日も休んでくれません。一日でも早く緊急事態宣言を出す必要がある場合に出すことは意味のあることです。ところが、西村康稔経済再生相は「厚生労働省の病床のデータが金曜日に出てくる。1週間単位でデータを見ている、という理由が一つある」と答弁しました。
役所の働き方によって民間が振り回されています。1週間単位のデータを金曜日に区切る必然性はありません。公務員にとって金曜日の決定は、それで一仕事終えたつもりになるのでしょう。影響を被る民間の働き方への想像力が欠如しています。
公務員の民間感覚欠如は、プレミアムフライデーという世間知らずの施策に重なります。長時間労働対策として月の最終金曜日の早帰りを推奨する施策です。月の最終金曜日は月の最終営業日になることが少なくなく、よりによって最も忙しい日に早帰りさせようという性格の悪い公務員の嫌がらせに感じます(林田力「プレミアムフライデーの世間知らず」ALIS 2020/08/29)。
奥田英朗の短編小説「ここが青山」の文章を想起します。「下級官吏の嫌がらせ兼憂さ晴らしである。その性格の悪い警官は、近所で馬鹿ポリと呼ばれていた。単純だが、吐き捨てやすいネーミングである」(集英社文庫編集部編『短編工場』集英社、2012年、43頁)
山下議員の要望は朝日新聞が報道しました(鬼原民幸「自民議員から「金曜の宣言決定やめて」 土日返上に苦情」朝日新聞2021年5月15日)。タイトルの「土日返上に苦情」が独り歩きし、自民議員が土日返上になることが嫌で金曜日の緊急事態宣言決定を止めるように言っていると勘違いする反応がTwitterに出ました。ここから朝日新聞記事に自民党議員に悪印象を与える悪意があるとの指摘もあります。
金曜日の緊急事態宣言決定は野党議員も批判しています。朝日新聞記事は立憲民主党の安住淳国対委員長の皮肉を紹介します。「毎週金曜日は、緊急事態、まん延防止指定の日になっちゃうんじゃないか」。これは文字通り皮肉です。政府がコロナ感染を止められないことの批判になっても、金曜日に宣言が決定されると民間事業者が困る理由は出ていません。その意味では山下議員の要望の方が民間には意味があります。
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