NHK大河ドラマ『鎌倉殿の13人』は2022年6月12日に第23回「狩りと獲物」を放送しました。建久4年(1193年)の富士の巻狩りが描かれます。ここでは日本三大仇討ちの曾我兄弟の仇討ちが起きます。
曾我兄弟の仇討ちでは曾我五郎が工藤祐経を討ち果たした後に源頼朝の陣に侵入しており、頼朝に対する陰謀があったのではないかとの見方がありました。『鎌倉殿の13人』は主客転倒させた斬新さがあります。しかも、歴史の作り替えを北条義時が主導しており、大河ドラマに珍しい黒い主人公です。
義時の嫡男の金剛(後の北条泰時)は今回から子役から坂口健太郎に変わりました。配役紹介では義時の小栗旬、北条政子の小池栄子に次ぐ三番手で紹介されました。金剛(10)が坂口健太郎(30)になることは「成長著しい金剛」では済まないギャップがあります。とはいえ、過去の大河ドラマの『おんな城主 直虎』では阿部サダヲが松平竹千代(13)を演じました。
富士の巻狩りは頼朝の嫡男の万寿(後の源頼家)の晴れ舞台として演出されます。しかし、金剛は万寿を立てる接待巻狩に不満顔です。坂口健太郎が過去に主演したテレビドラマ『イノセンス冤罪弁護士』の弁護士らしく忖度しません。
周囲の御膳立てにより、万寿は見事鹿を射とめたことになりました。鎌倉の北条政子らに報告されますが、『吾妻鏡』では「鹿を射止めることは当たり前のこと」と冷たい反応でした。『鎌倉殿の13人』も『吾妻鏡』を踏襲しますが、大姫と二人きりになると「万寿が帰ったらうんと誉めてやりましょう」とはしゃぎます。比企能員夫婦の前では褒めないという政治的駆け引きです。
頼家は頼朝の死後に二代目の鎌倉殿になりますが、十三人の合議制に権限を奪われます。これは頼家が身勝手な暗君だったためと描かれがちです。ところが、富士の巻狩りの万寿は弓矢の技量は劣るものの、周囲の思惑を理解する人物に描かれます。頼家がダメな人物だからではなく、逆に立派な人物だから北条時政や義時に都合が悪く、十三人の合議制が成立したという視聴者は鬱になる展開になるでしょうか。
頼朝は命拾いしますが、天の声が聞こえなかったとして、自分が天から与えられた役割を終えたと弱気になります。序盤の頼朝は後白河法皇が夢に登場してうなされました。普通の人にとっては迷惑な話ですが、むしろ役割を与えられたとモチベーションになっていたのでしょうか。
工藤祐経は頼朝の命じられた通りに動いて命を落とします。頼朝の犠牲になったようなものです。逆に自分で判断して危機対応した源範頼は頼朝の疑いを招きます。第17話「助命と宿命」(2022年5月1日)で武田信義は「おまえたちはおかしい。狂っておる」と言いました。独裁者の支配する組織では何をしても詰んでしまいます。
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