NHK大河ドラマ『鎌倉殿の13人』が2022年7月17日に第27回「鎌倉殿と13人」を放送しました。ついに十三人の合議制が登場しました。十三人の合議制が源頼家の権力制限を目的としたものか、補佐を目的としたかは歴史学の論争があります。ドラマはどちらの要素もあるように描きました。現実は学説のように二者択一ではないということでしょうか。
頼家は暗君や暴君ではありませんが、独力で鎌倉政権を担うには力不足でした。頼家は若手側近達に蹴鞠の練習をさせます。『吾妻鏡』は将軍家の公家文化への傾倒に批判的です。
これに対して昭和の感覚では接待ゴルフのアナロジーから、むしろ当時の人々にとって意味のある教養と頼家への支持があるかもしれません。しかし、それは21世紀の感覚ではありません。2020年の大河ドラマ『麒麟がくる』で明智光秀は「何が蹴鞠だ」と怒りました。
合議制の十三人の人選はどうしようもないものでした。比企能員と北条時政の派閥争いを反映したものでした。但し、文官4人が入ることは否定しません。文治派と武断派の対立が起きた豊臣政権末期よりはまともでしょうか。
頼家がもう少し我を抑えられたら、不幸な結末にはならなかったのではないかとの歴史のIFを考えたくなりますが、それは容易ではありません。家庭内では若狭局(せつ)と辻殿(つつじ)が争っています。これは一幡と公暁の後継者争いになります。一幡には比企能員、公暁には乳母夫の三浦義村がバックにつくため、御家人の権力争いから逃れられません。
頼家が安楽な一生を送りたいと思ったとしても、頼朝のように覇道を歩むことが唯一の解になるかもしれません。頼家は若手近習を頼みにします。これは頼朝も採った方法です。実際、北条(江間四郎)義時は頼朝の若手近習でした。但し、義時は江間という分家を興して北条から相対的に自立しましたが、頼家の若手近習が自身の属する一族よりも頼家を優先するかは未知です。
むしろ頼家に必要なことは頼朝の遺産を上手く使いこなすことでしょう。遺産の一つが景時です。梶原景時は讒言ばかりの佞臣イメージがありますが、『鎌倉殿の13人』では私情を持たずにまともです。頼家にとっては忠臣でした。次回は「梶原景時の変」です。景時を守れなかったことが頼家の不幸につながります。
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