NHK大河ドラマ『鎌倉殿の13人』が2022年8月14日に第31回「諦めの悪い男」を放送しました。源頼家が重病に陥ります。阿野全成が殺害されたばかりであり、怨霊を連想します。冤罪による怨霊は菅原道真など定番です。
全成は第30回「全成の確率」で頼家を呪詛したと告発され、殺害されました。全成は殺される直前に嵐を呼びました。これによって全成は嵐を呼ぶことができる本物の呪力を持っている人物であると示しました。本気で呪ったならば頼家を殺害できていたことを示します。全成は冤罪で殺害されたことになり、怨霊になる資格があります。
頼家は回復の見込みがないと判断され、頼家の跡目が問題になります。比企は一幡、北条は千幡を推して対立します。妥協案として一幡が惣守護職と関東二十八ヵ国の地頭職、千幡が関西三十八ヵ国の地頭職を分割相続する案が出されました。分割相続を認めず遺産を独り占めしようとする比企の強欲が比企能員の変をもたらしました。
東西の地頭職を分割する案は、源頼朝の構想に忠実という見方があります。頼朝は長生きしていたら娘の入内など朝廷へのプレゼンスを強めたと見られています。頼家は二代目鎌倉殿として東国を支配させ、千幡は上洛して朝廷と西国を支配する構想です。
実は分割相続を認めず遺産を独り占めしようとする強欲は比企氏の中にもあります。比企氏が頼朝に重用された理由は比企尼が頼朝の乳母であることです。比企尼あっての比企氏ですが、実子の朝宗は亡くなり、能員を猶子にして惣領としました。朝宗の娘が姫の前です。姫の前からすれば自分や自分と義時の子どもが比企家の財産を相続してもおかしくないくらいの感覚があったかもしれません。
姫の前は比企能員の変後に離縁したとされますが、姫の前にとって比企能員の変は必ずしも不幸とは言えないかもしれません。義時の姫の前の子どもは名越流と極楽寺流という北条氏一門として存続します。
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