NHK大河ドラマ『どうする家康』第7回「わしの家」が2023年2月19日に放送されました。松平元康は家康に改名します。三河を一つの家を捉えて「家を康んぜる」という意味を持たせました。それならば後の方広寺鐘銘事件で「国家安康」にケチをつけたことは卑怯な言いがかりになります。方広寺鐘銘事件を冤罪と描くでしょうか。
瀬名は元康の改名案として「泰康」を提案しました。困難な問題も「やすやす」と解決することを意図していますが、前の大河ドラマが『鎌倉殿の13人』のために北条泰時を連想します。
瀬名は三河の人々から支持されています。古典的な築山殿には三河に馴染まないイメージがあります。瀬名が三河の人々から支持されているとすると築山殿事件は徳川家中にとって苦渋の決断になります。築山殿事件の悲劇性が高まります。
織田信長は家康を鷹狩りに誘います。家康にプレッシャーをかけますが、実は家康思いです。相手には伝わらず、理解されない愛情です。大河ドラマ『麒麟がくる』の信長は明智光秀を嫌っていた訳ではないですが、光秀からすれば謀反を起こされて当然となりました。『どうする家康』では信長と家康の関係が一方通行になりそうです。
『麒麟がくる』最終回「本能寺の変」
三河一向一揆が始まります。織田信長や羽柴秀吉を主人公とした大河ドラマならば美濃攻略の陰に隠れて詳しく描かれない出来事です。歴史として知られる出来事は次回からが中心です。
今回は家康らが一向宗の本證寺に潜入します。これは創作話です。瀬名救出でも第5回「瀬名奪還作戦」で創作話を入れてから、第6回「続・瀬名奪還作戦」で歴史として知られる展開になりました。歴史事件をそのまま描くのではなく、最初に創作話を入れて登場人物を動かしたいのでしょうか。
寺院に潜入という展開から、教団の不正を暴く展開はありがちです。しかし、一向宗の空誓上人の論理は真っ当です。武士を否定する論理も農民からすれば支持できます。空誓上人は「阿呆は戦しか頭にない」と領主に年貢を納めることを否定します。現代日本政府の防衛費増税への風刺になります。
過去の大河ドラマには女性に「戦は嫌でございます」と言わせ、平和主義価値観の押し付けと批判される傾向がありました。『どうする家康』では、そのようなポジションになりそうな、お大の方は逆に好戦的です。一方で支配階級とは異なる価値観も描くところが奥深いです。
三河一向一揆では家康は和議を結んだ後に弾圧しており、一揆側からは「だまされた」と主張したくなるものでした。大坂冬の陣のような狸親父の第一歩になる出来事でした。教団側に信者をだまして搾取する要素を出せば、家康をブラックにしなくても済みますが、そのようにしない脚本は注目に値します。
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『どうする家康』第1回「どうする桶狭間」卯年らしく兎の木彫りと白兎