NHK大河ドラマ『鎌倉殿の13人』が2022年9月18日に第36回「武士の鑑」を放送しました。畠山重忠が冤罪で滅ぼされます。重忠の冤罪は吾妻鏡も認めています。『鎌倉殿の13人』では北条時政の暴走であることが最初から分かっています。
畠山重忠を討つ根拠は、時政が内容を説明せずに源実朝に出させた下文のみです。実態がないのに文書があることを根拠に冤罪が止められない状況には腹立たしさがあります。とはいえ現代日本でも裁判所が逮捕令状の自動発券機になっていると批判されます(「裁判所は逮捕令状の自動発券機…激ヤバミスに批判集中」弁護士ドットコム2019年4月14日)。
畠山重忠の乱の後は史実では牧氏事件(北条時政追放)となります。冤罪の責任としては当然です。死ではなく、追放で済んだことが甘いくらいです。しかし、簡単には追放となりません。北条義時は時政の人望を落とすために陰謀をめぐらせます。そこまでしなければ冤罪の責任を取らせることもできないことに暗澹たる思いがします。
畠山重忠の乱は戦争シーンの描写が凝っています。源平の合戦でも、ここまで戦争シーンを描きませんでした。屋島の戦いの扇の的のような有名エピソードよりも、畠山重忠の乱をフィーチャーするところに新しさがあります。昭和の時代劇とは異なります。とはいえ、江戸時代は歌舞伎『景清』などに登場する人気者でした。21世紀の日本人も『鎌倉殿の13人』で英傑イメージを抱くでしょう。
畠山重忠は自己の武力で抗いました。オープニングのナレーションで重忠は北条の力に屈しないと紹介されました。その説明の通り、戦争には負けても、勝負には勝っていました。
次の北条氏の他氏排斥である和田合戦で和田義盛は将軍御所を攻め、源実朝の身柄を押さえようとしました。将軍という錦の御旗を得ることで自らを官軍とする作戦です。重忠は自己の武力で抗い、重忠よりも単純そうな義盛が錦の御旗獲得という政治的な動きをすることは興味深いです。畠山重忠の乱で学習したのでしょうか。
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