神奈川県警第1交通機動隊の巡査(24)がキャッシュカードの保全措置をすると偽って高齢者からキャッシュカードを盗んだとして窃盗容疑で逮捕されました。巡査は特殊詐欺グループの受け子とみられ、取り調べに対して容疑を認めています。警察官が警察の職務を騙って詐欺を行った犯罪です。
横須賀市の高齢男性(80)は2019年10月7日に横須賀警察署員を名乗る男から以下の虚偽の電話を受けました。「逮捕した詐欺事件の犯人があなたの口座から現金を引き出したと言っているので、刑事を向かわせます」(「巡査を逮捕 特殊詐欺の受け子か」NHK 2019年11月1日)
「振り込め詐欺の犯人を捕まえた。あなたの口座から金を引き出したと言っている。カードの保全措置を行うので、これから警察官を行かせる」(「神奈川県警交通機動隊巡査 特殊詐欺「受け子」役 窃盗疑いで逮捕」毎日新聞2019年10月31日)
この電話の最中または30分後に巡査が男性宅を訪れました。NHKは電話の最中とし、毎日新聞は30分後とします。巡査は男性に封筒へカードを入れるよう指示しました。男性が目を離した隙に、予め用意していたプラスチックカード入りの封筒とすり替えました。劇場型詐欺です。この日の夜にカードから横浜市内のコンビニで50万円が引き出されました。防犯カメラには男性のカードを使って現金50万円を引き出す巡査の姿が映っていました。
近時の警察不祥事では警察官が職務を騙って犯罪を行う警察犯罪が目に付きます。消費者保護の分野では警察官による詐欺(警察詐欺)というジャンルを考えるべきでしょう。この警察詐欺と呼ぶべき警察不祥事は埼玉県警が先鞭です。埼玉県警草加署巡査(22)は死体検案名目で遺族から現金82万円をだまし取りました。埼玉県警川越署巡査(25)は遺族に遺体の防腐処置費用として現金50万円をだまし取ろうとしました。
警察不祥事と言えば神奈川県警が代名詞になっていますが、埼玉県警の桶川ストーカー殺人事件は警察の体質批判の先鞭となりました。今風に言えば半グレ・ヤンキーの味方をするような埼玉県警の対応は大いに批判されました。警察詐欺の分野でも埼玉県警の警察不祥事が先鞭になっていることは象徴的です。
警察不祥事がエスカレートして新たな段階に入ったと見るべきでしょう。警察不祥事の処分が甘いために警察犯罪にエスカレートしたのでしょうか。かつての発展途上国がグローバリゼーションの影響で民間感覚を取り入れて透明性を高める一方で、日本の警察が20世紀の発展途上国並みに腐敗していると言えます。
警察詐欺は公権力を背景とした詐欺であり、悪質さの度合いが高いものです。警察を称して相手を油断させられます。捜査の仕方を分かっているために証拠隠滅もしやすいでしょう。通常より厳罰にすることが公正です。
これら警察詐欺では若い警察官が目につきます。神奈川県警第1交通機動隊巡査(24)、埼玉県警草加署巡査(22)、埼玉県警川越署巡査(25)と。伝統的な警察不祥事では最初は真面目な警察官が組織の中で腐敗していくパターンが典型です。例えば北海道警察の稲葉事件や映画『ポチの告白』(高橋玄監督)です。これは意味のあるものです。私の『ポチの告白』の以下のコメントは雑誌『ぴあ』に掲載されています。「警察犯罪という問題の深さを知った。国民が誰もチェックできない仕組みは改善すべきではないのか」(『ぴあ』2009年2月19日号37頁)
一方で警察詐欺を踏まえると採用の問題も考えたくなります。神奈川県警第1交通機動隊巡査(24)は2013年から県警勤務と報道されました。埼玉県警草加署巡査(22)は2015年に警察官になり、2018年で22歳です。
これらを見ると大卒は十分に意味のある資格であると感じます。大学はレジャーランドと言われていますが、逆に自由であるために最低限の自律心がなければ卒業できません。ここは高校までの学校とは大きく異なるところです。たとえばゲームにはまって授業に出なくなれば単位がとれず、卒業できません。
埼玉県警川越署では刑事課巡査(22)が無免許で警察車両を運転する警察不祥事もありました。巡査は2015年4月に埼玉県警の警察官になり、2019年4月時点で22歳であるため、2015年時点では18歳となります。この巡査は自動車教習所に「面倒くさくて通わなくなった」と供述したとされます(「川越署刑事課の女性巡査、警察車両を無免許運転した疑いで書類送検 県警が処分、署の駐車場で当て逃げも」埼玉新聞2019年4月27日)。申告漏れが指摘されたチュートリアルの徳井義実さんのような言い訳です。大学で単位を取得する能力があれば、「面倒くさくて通わなくなった」とはならないでしょう。