NHK大河ドラマ『どうする家康』第4回「清須でどうする!」が2023年1月29日に放送され、清州同盟が描かれました。第1回のタイトルは「どうする桶狭間」でしたが、今回は「清須でどうする!」と「どうする」の位置が逆になっています。第1回と第2回は家康が「どうする」という状態で終わりましたが、第3回はありませんでした。定番を予想させつつ、ずらします。
松平元康(後の徳川家康)一行は清州同盟のために織田信長の本拠の清須城を訪れます。清洲城は平安時代の大内裏や中国の宮殿のように広いです。無駄に広い空間があると防衛には非効率です。戦国時代の城郭にドラマのような余裕があったでしょうか。
紀行では清須城をとりあげましたが、紀行の清須城とドラマの清須城はかなり異なります。もっとも現在の清須城天守閣は鉄筋コンクリート造の模擬天守です。清須城は信長死後の織田信雄の時に拡張されました。このため、ドラマの清須城と現在の清須城が似ていなくても良いものです。
とはいえ、いかにもCGで作りましたという映像は萎えます。リアルにロケした映像だけが本物であると頭の固いことを言うつもりはありません。それはテレワークを否定し、出社ハラスメントをする対面コミュニケーション至上主義者と同じになってしまいます。
CGは天候待ちなどの負担を減らし、働き方改革に貢献します。2022年の大河ドラマ『鎌倉殿の13人』では働き方改革を理由として放送休止もありました。人間が楽になる技術は積極的に活用すべきです。
問題はゲーム画面のような現実感に欠ける映像です。CGは存在しないものを描けますが、時代劇で全く存在しないものを出すものではないでしょう。
リアルではセットのあるところでの撮影という制約がありました。電信柱のような存在してはならないものが写り込まないように屋外でも限定的な範囲で撮影する傾向がありました。その反動でCGを使って広々とした空間にしたいと思ったのでしょうか。
元康は信長から相撲を求められます。大勢の家臣達が観戦し、まるでローマのコロッセオのようです。『どうする家康』の武田信玄(阿部寛)は『テルマエ・ロマエ』の影響で、古代ローマ人に見えます。甲斐武田家だけでなく、尾張織田家もローマ文化の影響があるのでしょうか。
元康、木下藤吉郎(後の豊臣秀吉)、織田信長と三英傑が揃いました。藤吉郎は理由なく背中を蹴られます。織田家は理不尽なパワハラが横行するブラック組織に見えますが、最後まで見ると藤吉郎は腹立たしくて蹴りたくなります。『どうする家康』の藤吉郎は好人物を演じているものの、明らかに不誠実なものを持っていると見透かせる存在です。
秀吉は晩年の恐怖政治の暴君は別として、賤ケ岳の合戦くらいまでは人当たりの良さで周囲の支持を集めたイメージが伝統的でした。これに対してNHK大河ドラマ『麒麟がくる』や漫画『信長協奏曲』のように最初から腹黒いものをもっている秀吉像が新たな定番となりつつあります。
駿府に残された瀬名には過酷な運命が待っていました。今川氏真は同盟相手の後北条氏から早川殿を正室に迎えており、この早川殿を大切にしなければならず、側室を迎える訳にはいかないという政治的事情がありました。これに対してドラマでは氏真個人の鬼畜ぶりを際立たせました。為政者として無気力・無能でない分、敵として倒すべき存在になります。蹴鞠や和歌という芸で長生きする氏真というイメージとは大きく異なります。
『どうする家康』第3回「三河平定戦」国のために捨てる非情
『どうする家康』第2回「兎と狼」松平一族からだまし討ち
『どうする家康』第1回「どうする桶狭間」卯年らしく兎の木彫りと白兎
『鎌倉殿の13人』最終回「報いの時」毒殺と不作為
『青天を衝け』第5回「栄一、揺れる」攘夷はNo Drug
『麒麟がくる』最終回「本能寺の変」