NHK大河ドラマ『麒麟がくる』が2021年2月7日に最終回「本能寺の変」を迎えました。『麒麟がくる』は沢尻エリカ大麻取締法違反で放送開始が遅れるという不幸な注目のされ方をしました(林田力「沢尻エリカさんMDMA所持容疑で『麒麟がくる』どうなる」ALIS 2019年11月20日)。
放送中には新型コロナウイルスで収録できず、放送が中断しました。その結果、年を越しての最終回になりましたが、ドラマは大きく盛り上がり、謀反を起こして当然と感じさせる内容になりました。
川口春奈さんの帰蝶や染谷将太さんの織田信長のように当初は不安の声もあった配役も逆にはまり役となりました。2月23日放送の総集編は川口さんが語りを担当し、帰蝶の目線で振り返ります。
川口さんは沢尻エリカ降板による突然の代役で大変だったでしょう。これを棚からぼた餅のように見ることは間違いです。準備期間が不十分な中での代役でした。最初から川口さんがキャスティングされ、万全の準備期間があったならばどれほど素晴らしかったでしょう。沢尻ファンには川口さんをやっかむ声がありますが、むしろ川口さんが悪条件の中で尻拭いしたことを感謝しなければなりません。
第四十三回「闇に光る樹」で明智光秀は饗応役となりました。そこで織田信長からパワハラを受けます。宴席でのパワハラなのでメシハラにもなります。ところが、最終回「本能寺の変」の冒頭で信長は卑怯にも徳川家康の反応を見るための演技だったと言い訳します。これは21世紀の吉本興業ホールディングスの岡本昭彦社長の言い訳に重なります。岡本社長は恫喝発言を「場を和ませるため」「冗談のつもり」と言い訳しました(林田力「吉本興業・岡本社長のパワハラ言い訳は何故腹が立つか」ALIS 2019年7月28日)。
『麒麟がくる』は謀反人の光秀を主人公とした点で新しいですが、内容的にも日本的な組織への忠誠心が流行らなくなったことを示しています。光秀は謀反を起こした松永久秀に独断で会って話しました。古い価値観では光秀も謀反人認定されてもおかしくないですが、光秀は逆にそれを信長にチンコロした羽柴秀吉を糾弾します。
光秀は斎藤道三や信長という主君と口論になり、主君が怒って「帰れ」と言われると、帰ってしまいます。上司は本当に帰って欲しくて「帰れ」と言っているのではないと忖度するような公務員体質はありません。忖度しない光秀が支持されることは人々の意識の成熟を感じます。
NHK大河ドラマ『麒麟がくる』放送開始
『麒麟がくる』帰蝶は我がまま姫
『麒麟がくる』第四回「尾張潜入指令」本能寺に言及
『麒麟がくる』第九回「信長の失敗」
『麒麟がくる』第二十回「家康への文」何が蹴鞠だ(怒)
『麒麟がくる』第二十九回「摂津晴門の計略」押領は濡れ衣か