NHK大河ドラマ『どうする家康』第20回「岡崎クーデター」が2023年5月28日に放送されました。武田信玄の跡を継いだ武田勝頼は攻勢を続けます。今回は築山殿事件の前奏曲となる大岡弥四郎事件が起きます。瀬名や松平信康と五徳との溝が生じており、築山殿事件の構図が生まれつつあります。
岐阜城では織田信長と明智光秀が武田信玄死後の状況を話しています。光秀は信玄が亡くなったことで脅威が去り、徳川家康は領地を取り戻すだろうと楽観的な予測をします。これに対して信長は勝頼の才覚を評価します。勝頼を評価する点は梶川卓郎原作、西村ミツル作画『信長のシェフ』の信長と同じです。現実に武田家は勝頼の時に最大版図となります。
信長と光秀が二人で話していることから光秀は腹心ポジションです。しかし、光秀は信長に常識的な予測をして信長にあっさり否定する平凡な家臣になっています。光秀は信長の常識から外れた思考を理解できる人物と描かれることが多いですが、『どうする家康』はそこまでの人物ではないようです。
武田軍は遠江だけでなく、三河の岡崎城も攻撃します。五徳は信長の娘であることを理由に威張っています。瀬名も負傷兵の救護をしますが、五徳は手伝いません。従来の物語では築山殿が今川風を吹かせて徳川家の中で孤立していました。これに対して『どうする家康』では瀬名は徳川家に溶け込んでいますが、五徳が浮いています。
五徳の子ども時代は不満があると「父上に言いつける」と脅迫するワガママ娘でした。俳優が子役から乃木坂46の久保史緒里さんに変わった後では落ち着きが出ましたが、今回は子ども時代と同じチンコロ体質が出ました。俳優が可哀想になるほど嫌な性格です。アイドルだから好感度を上げる役しかやらないとはならない点は立派です。
井伊直政(虎松)が家康の家臣となります。本多忠勝や榊原康政と共に戦います。徳川四天王が揃いました。新参の直政は味方の顔も分かりません。『おんな城主直虎』では下足番をやらされましたが、家臣の顔を覚えるためには意味のある仕事でした。
直政は家康の家臣には珍しく外交ができる家臣であり、それ故に家康から重用されました。現在の虎松は「腕はいい」と言われるように武力に特化したイメージです。しかし、井伊家は松平家以上に歴史のある家であり、そこが外交力になるのでしょう。
瀬名は家臣が調略されることを避けるために自ら武田の間者と会って話します。それを五徳に見られて武田に内通していると決めつけられ、信長に虚偽告訴したのでしょうか。築山殿事件を冤罪の悲劇と描きそうです。
武田とは戦争中ですが、トップが交渉の口を持っておくことは必ずしも間違ったことではありません。むしろ浜松の家康が何もしていないことが問題です。近時は築山殿事件を浜松派と岡崎派の対立と描く傾向が強いですが、それも岡崎を放置した家康に問題があるでしょう。
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