「それアン」(無理やり略して流行ってる感じを演出)第3回目です。3回目なのにVol.2なのは、1回目が前書きだったのでVol.0にしたためです。わかりにくいですね。人生とはそういうものです。では早速参りましょう。
私が初めてインターネットのデジタル・コミュニティに参加したのは1980年代の中頃でした。そうしたデジタル・コミュニティに参加するには、モデムを買わなければなりませんでした。そして掲示板システムにダイヤルしなければなりませんでした。この掲示板システムは、ベースメントに住んでる誰かのホビーとして運営されていました。150人くらいの参加者がいて、彼らはちょうど私と同じくらい全員おかしなやつらでした。
他の人々には理解されない、モデムを持ってるおかしな15歳。
オンラインでの会話はとても楽しかったです。
そして90年代の終わりに向かって、掲示板システムは人気になり始めました。大きな企業が、小規模の運営者を買収し始め、広告を打ち、会員費用を請求し始めました。そしてコンテンツに“磨き”をかけ始め、“改善”し出します。もうちょっとだけ、主流の人々のお口に合うようにしようとし始めます。
「言葉づかいに気を付けて。」「悪い言葉を使わないで。」「大人向けです。」「家族向けにしましょう。」
そもそも掲示板システムを面白くしていた、興味深くておかしな人々はみんな、会話ができる他の場所を探し始めます。なぜってもう彼らはそこで歓迎されていないから。いくつかのケースでは、金銭的に参加できる余裕がないからです。
私たちがそもそもその場へ参加した理由、クリエイティブな会話の全ては今や失われてしまったのです。
実際、その当時のこうした掲示板システムのおかしな事のひとつに、参加者は全員男ばっかりでした。その頃の、1985年のオンライン掲示板システムの参加者に女性はいなかったんです。でも、企業はこうした掲示板システムを、出会い系サイトにしようと努力しました。そのために、より多くの顧客を引き付けようと、男に女性のふりをさせたのです。
そこで見るのはハンドルネームが“ヘレン”という他の男と、男が会話してる状態です。掲示板システムへのより多くの会費を得るためにです。そうマーケティング!
面白いのは、その当時も何人かは女性参加者がいました。その女性たちは男性の名前を使っていました。その方がもっと快適だったし、変態にびくびくする事も少なくてすんだからです。そして企業は偽ヘレンをその偽男性名の人達に話しかけさせ、さらなる会費を支払わせようと必死で口説かせていたのです。
その時には、私はすでにUsnetに移動していました。Usnetとはグループ・ディスカッションの場で、その当時、1980年代の終わりにかけてインターネット中で使われていました。テキストベースのコミュニティで、インターネット上にいる世界中の誰とでもメッセージの交換ができました。当時、おそらく50万人くらいの人が使っていました。
Usnetはとても奇妙、ものすごーくおかしな所でした。実際、Usnetには“alt”(代替)グループと呼ばれる特別なコーナーがあり、そのオルタナ・グループ全てにはアクセスできませんでした。でもアクセスできた場所はとても特別な場所でした。
そこにはダンジョン&ドラゴンのファンの全員がおり、全てのコミック・ブックファン、全てのおかしなSFファン、そしてたくさんの性的なコンテンツ、変な趣味。一般的に言って、うまく他のグループにフィットしない人たちが“alt”グループにいたのです。
そして企業がやって来ました。
彼らはUsenetを購読サービスとして運用し始めます。一番最初に切り離したのが“alt”グループでした。
今やお金を払えば、クリーンバージョンのUsenetが手に入りますが、“alt”グループはもう手に入れる事はできません。なぜって、“alt”グループは当時、あまり礼儀正しくなかったからです。彼らはあまり協力的でもなかったし、あまりクリーンでもなかったからです。
なので彼らはUsenetをそうした変なモノ全部、奇妙なモノ全部と共に持ち去って、スーツで身なりを整えさせ、髪を切り、そうやってUsenetはつまらなくなったんです。面白い人たちは全員去っていきました。
そしてWebが始まります。Webによってクリエイティビティと表現の爆発が起こります。始めの頃、ウェブサイトは全部おかしなものでした。多すぎる配色、点滅するタグやフォント、見た目はひどいものでした。デザインのセンス何てありもしない。
でも、そこでの会話、そこで出会えるクリエイティビティや変わった人々は素晴らしいものがありました。
そして企業が参入してきます。彼らは全部を“磨き”あげ、“キレイ”にしていきます。
「このサイトでは悪い言葉は使わないでください!」
「これは承認制コンテンツです。」
そしてCompuServeとAOLがやって来て、あらゆる汚い言葉やおかしな人々から保護され、キュレートされた(※たくさんの情報源から収集、整理、要約して必要な情報を公開すること)環境を作り上げます。
Gentrification(高級化)は波のようにインターネット中に広まり、私たちのデジタルな領土は、あの界隈のように高級化されていきます。そして全てのGentrificationのサイクルの結果はみな同じです。
その場所に行って、そこを面白いものにしていた人々は、もはや歓迎されません。金銭的に参加する余裕もなく、発言する事も許されません。そして彼らは去っていきます。
そこに参加した理由の全ては、もうそこにはありません。
そうしたキュレートされた場所を後にした多くの人々は、Webの他の場所に行きました。そして自分のウェブサイトと独立したコミュニティを立ち上げ始めました。
そしてWeb 2.0が起こります。Web 2.0が起こった時、MySpaceやそしてFacebook、そしてその他のソーシャルメディアサイトが始まりました。彼らは非常に注意深くコンテンツをキュレーションしています。
ナチスに関するメッセージをFacebook上に投稿しても、しばらくの間はやり過ごせるでしょう。でも、おっぱい見せてくれたら神様が助けてくれるかも(※翻訳者注:何言うてるんやこのおっさん。)ちょっと待って!そんなのあり得ない。ここは家庭向けの環境です!悪い言葉を使わないで。注意深くキュレートされ、たくさんのマーケティング、存分な上品化。
そして面白い人々は全員去っていきます。
今や、もしあなたがまだFacebookアカウントを持っているなら、きっとそこでは、お孫さんの写真を楽しめますね!実際、子供たちはもうFacebookを使いたくありません。その理由は、今では彼らの親までそこにいるからです。そして子供たちも去っていきます。彼らはReeditや4chanに行きます。ここでもGentrification…
今回の翻訳はここまで。
確かに黎明期のインターネットには、どこか薄暗いアングラ感が漂っておりそのただならぬ雰囲気に何かとんでもなく面白い事が起こりそうで、日々わくわくしていたのを覚えています。
広告モデルもアフィリエイトもなく、ただ人々が面白いからと言う理由でゴタゴタのフォントとバナーでデジタル空間の自分のホームを着飾り、思い思いに自己表現を爆発させていた“ほめぱけ”時代を、ひとり遠い目で回顧してしまいました。
僕がSteemitに初めて触れた時、その貧弱なユーザーインターフェイスにかえってあの頃のネットが持っていた荒々しさを想起させられ、嬉々として参加したという話は、ALISでの記念すべき1回目の投稿で触れました。
しかしそこで僕を待っていた現実は、けして僕の懐古趣味を満たしてくれるようなものではありませんでした。今のSteemitにある日本人コミュニティは非常に“上品”で“お行儀が良く”て“クリーン”な方々が多いです。僕のようにあまり他人とは積極的にコミュニケーションを図ろうとはせず、ただ毎日英語の下ネタを翻訳してせっせと投稿し続けるようなおかしなやつが、あまり歓迎されない場なのは当たり前の話です。だってそんなやつ怖い、気持ち悪すぎる。
そして暗号通貨という名を借りた、日本円の獲得という強力すぎるインセンティブが皆の上に等しく働く以上、別にカテゴリが制限されているわけでもないのに、投稿が自然と「私のおすすめグルメ!」のような一様な、つまりはBoringなものに収束していくのは致し方のない事です。
ひるがえってALISコミュニティはなんて素晴らしい!などと短絡的な結論にはならないのは、ALISもまた一つの企業が運営母体である以上、クリーンさの追求からは逃れられず、それと運命共同体であるコミュニティも日々、企業化とマーケティング、コンテンツの商品化に曝され続けていく事が運命づけられているからです。(今後、ALISが2ちゃんねるのようなカオスでアングラなカテゴリ解放を行うとは到底思えません。しかし、ありし日の2ちゃん隆盛の源泉は、あの混沌と雑多さにありました。まだトークンのトの字もインセンティブがない中、人々は良質な記事を乱発し、自然にそれが可視化されて行きました。)
「いまどきネットにアングラを求めるとか中学生かよ。」という批判が聞こえてきそうですが、ここでのキーワードもやはり多様性と共生というものになるのかなと考えています。ただ現実世界と違うのは、アントノプロスさんが言うように、自分たちが自由に遊べていたはずの場所が息苦しくなったら、人はさっさと他の居心地の良い場所・サービスに去っていきます。子供たちがFacebookからSnapChatに逃げ出したように。ここは自由なインターネット。国境警備隊はおりません。Remember Mixi. Remember ALIS.
長すぎる自分語りはこれくらいにして、引き続きアントノプロスさんのお話に耳を傾けてまいりましょう。
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