これまでの記事で取り上げてきたように、「區塊鏈元年(ブロックチェーン元年)」を迎えている台湾では、ブロックチェーン技術をいろんな形で応用していこうとする動きがさまざまな場所で展開されています。
そうした動きを先導しているのが、仮想通貨を直接的に取り扱う「取引所」ではないのかなと思っています。台湾でも、これまでに記事に書いてきた「BitoEX(幣託)」や「OTCBTC」などは、活発な動きで注目を集めています。(BitoEXについてはこちらで、OTCBTCについてはこちらで取り上げています)
…というように、台湾の仮想通貨取引所について話を進めていくと「COBINHOOD」について触れないわけにはいかないんですよね。2017年12月に日本進出のニュースが報じられて、日本でも話題になりましたね。
トークンのエアドロップ(空投)を実施していたこともあって、日本語で読める解説記事がたくさん出ています。(たとえばCoinwallのこちらの記事やSteemit Korea BETAに上げられているこちらの記事など)
なので、正直なところ「僕が今さら書くこともないよなぁ…」と思っていたのですが…
CEOやテクニカルリーダーのインタビュー記事が公開されて、記事に目を通すといろいろと「へぇ~」と思う部分があったので、この記事を中心に少し書き留めておきたいと思います。
COBINHOOD(柯賓漢)は、陳泰元(PopoChen)さんが2017年8月に創業し、ICOを実施して約4億台湾元を集め、同年12月に仮想通貨取引所を開設しています。
取引所としての強みは、公式ウェブサイトのトップページにも大きく表示されていますが、世界で初めて「零交易手續費(取引手数料ゼロ)」を実現した仮想通貨取引所であるということです。
COBINHOODは取引手数料をゼロにする代わりに、ICOの実施サポートおよび上場サービスを提供することにより、該当トークンの5%から15%を手にすることで収益を得ているようです
現物取引(現貨交易)や10倍までのレバレッジ取引(槓桿交易)の手数料が無料で、100種類以上のコインを取り扱っていること、また、万が一の盗難補償は100%などなど、取引上のメリットが多くみられることもあって、台湾のビジネス雑誌『商周雑誌』に掲載されたインタビュー記事によれば、欧米諸国での取引が全体の7割に及ぶようです。
こうして見てみると、日本での開設を待ちわびている人が少なくない理由も分かる気がしますね。
COBINHOODを作った陳泰元さんは27歳。インタビュー記事によれば、台湾での若き「連續創業者(連続起業家)」と呼ばれていて、ここ5年のうちに6つのアプリとひとつの「直播平台(ライブプラットフォーム)」、そして、手数料ゼロの仮想通貨取引所を作ったと紹介されています。
ここに挙げられている「直播平台」が、アジア全域で多くのユーザーを持ち、日本でも配信されているライブアプリ「17直播(17video)」なんですね。
最近、分散型SNSである「Mithril」を立ち上げた黄立成さんと共同で、陳泰元さんはこのサービスを2015年に立ち上げました。(Mithrilについては、こちらの記事にまとめました)
インタビューで陳泰元さんは、このときのことを以下のように語っています。
(創業)最難就是從零到一,後面就交由專業經理人maintain(營運)。就像賈伯斯開發商品,找庫克來營運,我是類似賈伯斯的角色。(創業のもっとも難しいところはゼロからイチを作ることで、後に専門の責任者に経営を任せた。まるで(スティーブ)ジョブズが商品を開発し、(ティム)クックを探してきて経営をさせたように。僕はジョブズのような役割を果たしていた)
黄立成さんとの役割分担をこう例えたうえで、陳泰元さんは17videoの創業から1年で17videoを離れます。
そして、仮想通貨とブロックチェーンが、停滞する台湾のテクノロジー界を救うチャンスになると感じて、この世界に足を踏み入れたのだそうです。
記事中に載っている調査では、COBINHOODは1日あたりの平均取引額は7億台湾元ということで、台湾人が作った取引所のなかではトップですが、世界の取引所のなかでは取引量トップのBitMEXの1%を超えるぐらいの位置にいます。
こうした現状を受けて、今のCOBINHOODはまだ3割程度しか、構想の実現を果たしていないと陳泰元さんたちは考えているようです。
これからはDEX、つまり分散型の仮想通貨取引所の開設をはじめ、ブロックチェーン技術を利用したさまざまなサービス展開を考えているようで、開発に携わる人材をヘッドハンティングしているとのことです。記事には、Mozilla Taiwan(謀智台灣)やGoogleから積極的に引き抜きをおこなっていることが紹介されていました。
スピード感を持ってさまざまなサービスを実際に実現していくことによって、本気で世界を変えようとしているようです。インタビューは陳泰元さんの次の言葉で締めくくられていました。
會是超屌的技術,就是要顛覆世界。(クソかっこいい技術は、世界を変える)
雑誌記事らしいまとめかたですが、これまであまりメディアに出てくることがなかった陳泰元さんの静かな「本気」が垣間見えるように感じました。
もうすでにICO実施の段階から日本でも注目をされてきたCOBINHOODですが、今回の記事を読むと、むしろこれからの動きに注目かなという気がしました。
実際に記事のなかには、COBINHOODに投資をしている日本のIVPの黄立安さんという方のコメントとして、COBINHOODがどのようにして自らの特色と位置を見つけていくのかということがこれからの課題と指摘されていました。
日本での展開もこれからですし、どのようにサービスが展開されていくのかということが楽しみかなと感じました。コツコツと動きを追いかけていきたいと思います!
(5月24日追記:COBINHOODが台湾の金管會(金融監督管理委員会)の審査を通過して台湾内でも利用できるようになったようです。出典はTechNews科技新報のこちらの記事です)
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台湾・中華圏の仮想通貨取引所については、こんな記事も書いています。
台湾のOTCBTCは「場外取引」のプラットフォームとして注目されています(あと、CEOが台北市長選に立候補とか?)