ちょうどALISのICOによる会計処理が話題になったところですが、仮想通貨への期待の高まりから、新たな資金調達の手段としてのICO(InitialCoinOffering、首度公開發行)に注目が集まっていますね。
台湾でもICOを実施する企業が徐々に増えてきています。僕の記事でも、これまでに「MITH(秘銀幣)→関連記事」や「SBT(スタービットトークン)→関連記事」などを取り上げてきました。
ICOによる資金調達によって、仮想通貨・ブロックチェーンを用いた様々なプロジェクトが実現されていく様子は、世界が変わっていく瞬間を目の当たりにするようでワクワクします。
そうした動きを追いかけている中で、今日は台湾の「二大仮想通貨交換業者」のひとつといわれている「BitoEX」が、取引所「BitoPro」を通じてICOを実施したというニュースを目にしたので、ここで取り上げてみたいと思います。
工商時報(中国時報系列の経済紙)が5月7日に報じたところによると、台湾の仮想通貨交換業者BitoEX(幣託)が、自ら運営する取引所「BitoPro」を通じて実施したICOによって、26時間のうちにトークン「BITO」を1.75億枚発行し、約6億台湾元相当の資金を調達したとのことです。
BitoProの「BITO」専用ウェブサイトを見てみると、「トークンローンチ(代幣發售)」のページはすでに売り切れ(發售完畢)となっています。2018年5月2日がICO開始日だったということなので、本当にわずかな期間で売り切れてしまったようです。
なお、「BITO」はイーサリアムとの交換で発行され、基本レートは1ETH=6,000BITOに設定されていましたが、今回のICOでは1ETH=6,666BITOの優遇レートが適用されたようです。また、ICOは、BitoProのユーザー限定でBitoPro内で実施されたとのことです。
台湾の仮想通貨販売所/取引所については、こちらの記事で少し書きましたが、「BitoEX」と「MaiCoin」が「二大業者」とされています。それぞれに、取引所である「BitoPro」と「MAX」を運営しています。そのうちの一方であるBitoEXがICOを実施したということで、注目されているわけですね。
ちなみに、上に挙げた記事にはもう一方のMaiCoinの動向についても触れられています。これについては後で触れるとして、まずは、BitoEXのICOについて見てみたいと思います。
ウェブサイトにはBitoEXが今回のICOを通じて何を実現しようとしているのかがわかりやすくまとめられています。ホワイトペーパーも参照しながら、そのあたりを少し見てみます。
「BITO」はこれから想定されている用途として、まずは、取引所、法定通貨(法幣)交換、BitoPro簽帳卡(BitoPro Debit Card)決済時の手数料利用が考えられています。
とりわけ、取引所での仮想通貨購入時には手数料の割引優遇が受けられるとしています。このあたりはBinanceのBNBトークンなどと似たような感じですね。
そのほか、「BITO」を所有しているユーザーには、今後、取引所内で上場されるICOの優先サブスクリプション(認講)権が与えられたり、エアドロップ(空投)を受けられたりといった特典があるようです。
これらの特典は、これからBitoProが発展していくことによって、より多くの恩恵をトークン所有者が受けられるという形になっていますね。
当面、BitoPro上で「BITO」が使用できるのは2018年6月5日の予定だそうです。購入した人はワクワクしているでしょうね。
BitoProは台湾の取引所として仮想通貨取引のフロントランナーであろうとしているようですが、台湾から世界を見据えているように感じます。
というのも、ウェブサイトやホワイトペーパーには、投資家に向けた「BITO」と法定通貨とのスピーディでスムーズな取引を軸としたグローバルな「キャリートレード(價差套利交易)」の実現が、BitoProの特徴として打ち出されています。
それを実現するための技術として「TTCode」と呼ばれる独自の「ハッシュコード(雜湊代碼)」を開発したと書かれています。
技術的に細かいことはわからないのですが(^^;)、ホワイトペーパーの至るところに「TTCode」の名前が出てくるので、この技術を強みとして打ち出しているんだなということがわかります。
こうしたグローバルな展開を見据えて、BitoEXは今後、シンガポール(新加坡)とインド(印度)での取引所開設を目指しています。ウェブサイトにもcoming soonという形で、両国での取引がこれからできることが示されていて、着実にロードマップを実現していこうとしていることがうかがわれます。
BitoEXの活発な動きが伝えられるなかで、上に挙げた工商時報の記事には、もう一方の大手事業者であるMaiCoinの動きについても言及されています。
現在、MaiCoinはMAXという取引所を運営していますが、ここには僕も以前に記事を書いた「MITH(秘銀幣)」が唯一上場されています。当面はこれをセールスポイントとして推し進めていくとの見解が、MAXのCEO(執行長)である劉世偉さんのコメントとして掲載されています。
また、将来的にMaiCoinが独自トークンを発行することがあるとしても、当面は台湾内の投資家を対象とはしないとしています。その理由として、劉世偉さんは法制度の未整備を挙げています。
BitoEXの今回のICOも、政府機関や立法院、法律事務所と数か月にわたって相談を重ねたうえで実施されたようです。ALISのICOと会計処理との関係が話題になっていたように、台湾のICOをめぐっても、法制度の整備状況をにらみながら、慎重に考えられているようですね。
取引所をめぐる動向は、仮想通貨の発展状況を把握するためには欠かすことができません。また、ICOの実施状況は、ブロックチェーン技術の発展全体にかかわる重要なトピックでもあります。
こうした動きには、仮想通貨・ブロックチェーンに関するあらゆる課題や可能性が凝縮されているように感じますので、まだまだこれからもコツコツ勉強していきたいと思います。
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台湾発の仮想通貨「MITH(秘銀幣)」に興味を持ってみました(ALISとの共通点?)