香港社会で激しい衝突を招いていた「逃犯条例」の修正法案について、2019年9月14日に林鄭月娥行政長官が公式に、修正法案の撤回を明言しました。
修正法案の撤回を含めた談話の全文が以下のとおり、香港政府の「新聞公報」のページに公開されました。
以下、急遽日本語に翻訳してみましたので、「仮訳」としてまとめておきます。
(注記)記事へのトークンについて
本記事への投げ銭は、「投げ銭ランキング」に上がって少しでも多くの方の目につくと言う意味で大歓迎ですが、投げていただいたトークンはそのままお返し致します。
また、本記事に付与されたトークンは投げ銭をお返しする時のバーン分に充当しますが、消化しきれなかった場合は別の方法で消化します。
2019年9月4日「行政長官から全香港市民に向けて発表した談話(行政長官向全港市民發表講話)」
香港市民のみなさん:
逃犯条例の修正が引き起こしたデモと衝突は、すでに2か月以上続いています。多くの香港人は、わたしたちの街がなにか違うものに変わってしまったと言います。次々に続く暴力事件で、多くの市民、警察、記者が負傷しました。安全で素晴らしかった空港やMTRは、ある人々の悪意で破壊され、混乱を招きました。道路やトンネルは突然ふさがれました。旅行客は香港が安全であるかどうか心配し、香港へ旅行やビジネスで訪れようとはしなくなりました。家族や友人のあいだで見解の違いから互いを敵視し、異なる意見を持っている人を街中で、学校で、ネット上で非難し、互いに攻撃するようになってしまいました。
この2か月間に発生したことは、ひとりひとりの香港人に心の傷を与え、みなが香港に対して焦りと痛みをもたらしました。みなが心配し、目の前の困難から早く抜け出したいと望んでいます。
デモの人々が示した「五大要求」について、わたしたちは異なる場面で回答してきました。
1、条例草案の撤回については、わたしは6月15日にすでに条例草案の停止を宣言しました。そののちに、修正作業は完全に停止し、条例草案は来年7月に自動的に失効すると表明しました。
2、独立調査委員会の設置については、政府は警察のほうに基づく行動は規定のメカニズムに基づき、職責に基づく独立した監警会によって処理されており、独立調査委員会を別に設ける必要はないと考えています。監警会は警察への苦情処理以外にも、その法で定められた職権に基づき、6月9日から発生した一連の大規模な市民活動について詳細に審議しており、市民が注目する7月21日の元朗襲撃事件もそのなかのひとつのポイントになっています。審議作業の目標は事実を再編成し、警察の処理を評価し、改善案を提出することです。監警会はすでに国際専門家小グループを成立させ、委員会の作業に協力し、報告内容と提案を公開しています。
3、デモの活動の定義については、わたしたちは重ねて述べているように、法律上は「暴動の定義」というものはありません。律政司はすでにはっきりと、それぞれの案件の刑事訴追は、証拠に基づき、法律および「訴追規程」をもとにおこなうと述べています。
4、逮捕されている人々の釈放要求については、訴追せず、違法かどうかを調べないということは、法治社会においては到底受けいれられません。「基本法」を基に、律政司の刑事訴追を決定し、どのような干渉も受けず、香港の法治精神に悖ることのないようにすべきです。
5、普通選挙については、これは「基本法」に定められている最終目標です。この目標を実現するべく、社会は法の基礎のうえに、平和と信頼の雰囲気のもとで、実務的な態度によって議論を進めていくべきであり、さもなければ社会にさらなる分裂を招いてしまいます。
この5つの回答は異なる要素を踏まえて出されたものであり、わたしたちの回答は社会の平穏をもたらすには足りず、多くの人の怒りを招いていることはわかっています。しかし、どんどん暴力が広がっていき、社会秩序への挑戦が続くなか、目下の困難を解決することはできるのか?みなさん考えてください。わたしたちは対話を通じて、香港の行く末を探るべきではないのか?
多くの人は、対話することが基本だと言います。行政長官として、わたしは終始力を尽くす責任があり、いろいろな状況の下で社会が前に進んで行くチャンスを探っています。わたしは今、4つの行動を示し、社会が前に向かって進んでいく起点にしていきたいと考えています。
第一に、特区政府は正式に条例草案を撤回し、市民の疑義を完全に払拭します。保安局局長は立法会の再開後、「議事規則」にのっとって条例草案の撤回動議を提出します。
第二に、わたしは監警会の作業を全力でサポートします。海外の専門家を招くほか、わたしはすでに2名の新たなメンバーへ監警会への加入を委任しました。その2名とは余黎青萍氏と林定國上級弁護士です。わたしはみなさんに、政府は監警会が後日提出する報告書を真摯に検討します。
第三に、今月からわたしとすべての司局長は、社区に出向いて市民と対話し、社会の各層、異なる政治的立場、異なる背景の人々へ、対話のプラットフォームを通じて、種々の不満を直接話してもらい、ともに解決方法を探っていくことを始めます。
第四に、わたしは社会的リーダー、専門家や学者を招いて、社会の根深い問題について独立した研究と検討を進め、政府に提案を示します。2か月を超えるなかで修正作業が引き起こした衝突によって、わたしたちの目の前の矛盾が長く積もり続けた政治的、経済的、社会的問題、たとえば家屋や土地の供給、貧富の差、社会正義、若年層の待遇、および市民の政治参加などが反映されたものであることを、みなさんは考えるようになりました。私たちの対話プラットフォームは、みなさんとともにこうした問題を考えるものになります。
市民のみなさん、生まれ続けた暴力が香港の法治の根底を揺り動かし、ごくわずかな人々は「一国二制度」に戦いを挑み、在香港の中央政府機構を襲い、国旗やシンボルを汚し、香港を危険な状況に追いやりました。市民が政府や社会の現状に多くの不満を持っているとしても、暴力は絶対に問題を解決する方法たりえません。目下、一番差し迫っていることは暴力を止め、法治を守り、社会秩序を再構築することです。政府はあらゆる違法行為や暴力行為を法に照らして厳しく取り締まります。
わたしとグループが望むのは、今日提出した4つの行動が困難を打ち破る一歩となり、対立に代えて対話し、社会を変えていくことです。
以上
2019年9月4日(水)
香港時間17時58分