仮想通貨周りのいろいろなことはまだまだ世界各国で発展途上、いろいろな対策が模索されている状況だろうと思います。
仮想通貨の適正な取引をどのように確保・実現していくかということも、そうした模索中の課題のひとつですね。制度的にこうした課題に向き合おうとしたときに、たとえばコインチェックのNEM流出事件などでも注目されたように、取引所の管理・監督制度の整備は喫緊の課題として重要だと考えられています。
台湾でも少しずつ貨幣通貨の取引所や販売所が開設されてきている状況のなかで、制度整備の議論が進んでいます。
今日はそうした制度整備に関する議論のひとつとして、仮想通貨の「マネーロンダリング」に関する公聴会が開かれたというニュースを目にしました。この公聴会で議論されていた内容が、仮想通貨をめぐる今の台湾の状況を映し出しているように感じたので、少し見ておきたいと思います。
台湾の報道機関である中央通訊社の記事によると、2018年5月2日に台湾の立法機関である立法院で「健全加密貨幣洗錢防制」に関する公聴会が開かれました。
日本語で表現するなら「仮想通貨健全化マネーロンダリング防止」という感じでしょうか。「洗錢=マネーロンダリング(money laundering)」、日本語でも「資金洗浄」という表現を使うこともありますね。
日本の場合は、「犯罪収益移転防止法」という法律の「特定事業者」に仮想通貨交換業者を位置づけることで、マネーロンダリングが疑われるような取引の届け出が義務付けられたりしているようですね。台湾の公聴会もこうした方向性を模索する動きといえるでしょうか。
公聴会の出席者のうち、記事に意見が掲載されているのは、
呉志楊さん(立法委員、国民党)
許毓仁さん(立法委員、国民党)
張冠群さん(国立政治大学法律系教授)
余宛如さん(立法委員、民進党)
劉世偉さん(現代財富科技公司執行長、台湾の仮想通貨交換業者でMaiCoinを運営している会社の「執行長=CEO」)
王立群さん(金融管理監督委員会銀行局副局長)
余麗貞さん(行政院洗銭防制弁公室執行秘書・法務部検察司副司長)
以上の7名です。立法委員、識者、業者、官僚というキープレイヤーが集まっている感じですね。
彼らの多様な意見のなかで注目されるのは、記事のタイトルにもなっているように「加密貨幣洗錢防制 實名制是共識(仮想通貨マネーロンダリング防止 実名制が共通認識)」というところです。(「共識」は「コンセンサス」とも訳されます)
仮想通貨の実名制といえば、今年2018年1月から韓国で「取引実名制」が導入されたことが話題になりましたね。台湾の公聴会では政治大学の張冠群さんが意見を述べていたようですが、このあたりの情報が参照されているのかもしれませんね。
また、仮想通貨交換業者の管理・監督を法整備によって進めていく必要性も共有された意見として見出すことができます。
そこには、消費者保護の観点から法律による管理・監督を強化する視点に加えて、政府が過剰に干渉するのではなく、対外的に開放され、仮想通貨の発展を促すような慎重な法整備が求められるという意見も出されています。
とりわけ、交換業者である劉世偉さんから、顧客の資産保護やマネーロンダリング防止の観点から、投資信託の仕組みを導入するとともに、資金の流れをしっかりと確認できる仕組みを業者が主体的に整備していくべきだと発言していることも注目されます。
単純に規制を厳しくしようというのではなく、まさに「健全」に仮想通貨市場を発展させていくための視点というところが、大きな共通認識となって議論がおこなわれているように感じました。
台湾でも国際的な潮流に掉さすような形で、仮想通貨をめぐる法整備が検討されています。健全な市場の発展には、制度整備も重要な要素のひとつです。また、多様な議論が積み重ねられていくことは、社会の中で仮想通貨の地位が向上していくきっかけの一つになるだろうと思います。
これもまた、勉強していかなければならない分野のひとつだなあと思って、コツコツ学んでいきたいと思います。
台湾の法務大臣が、仮想通貨を既存の「反マネロン法」の対象とすると4月10日に公表したことがコインテレグラフ発信の記事として日本語でも伝えられていますね。既存の「反マネロン法」とはおそらく「洗錢防制法」のことでしょう。
ココに書いた公聴会はこの流れで開催されたものでしょうか。日本語で読める仮想通貨記事のなかには今年の11月に新たな立法がなされるという報道もありましたが、ソースがはっきりしません。中国語でも関連記事を見つけられない状況ですが…情報を引き続き追いかけたいと思います。
kazの記事一覧はこちらです。よろしくおねがいします。https://alis.to/users/kaz
台湾の法制関係でこういう記事も書いています。