今のところ、台湾は独立した政治体制、経済組織を持つ地域として世界中で実質的に認知されていますが、独立した「国家」としては国際的に認められていません。
そのため、国際的な舞台に「台湾」として参加することは、そもそも認められない場合も多々ありますし、さまざまな条件が付されたり、さまざまな工夫を経て参加するという方法が取られます。オリンピックに「中華台北(Chinese Taipei)」として参加していることがその一例ですね。
あるいは、「実質友好」という形で、政治的なスタンスを経由せず、経済上・文化上・科学技術上の個別の案件を通じて諸外国と交流するという方法が取られています。
今日はそうした取り組みのひとつとして、ブロックチェーンに関する国際会議に「中華民国」として参加した、台湾の立法委員(日本の国会議員に相当)の許毓仁さんの動向が話題になっていましたので、少し書き留めておきたいと思います。(文中の日本語訳はざっくりとした粗訳ですので、参考までにご覧ください(^^;)
・許毓仁さんが「中華民国」を代表して国連本部へ
・台湾におけるブロックチェーンの取り組みを紹介!
・台湾が国際的な舞台で活躍するために…
台湾のニュースサイト「今日新聞NowNews」が報じた記事によると、台湾・国民党の立法委員である許毓仁さんが、先週、国連本部で開催された「ブロックチェーンインパクトサミット(Blockchain for Impact Summit、區塊鏈高峰會))に「中華民国」を代表して参加したということです。
国連の「ブロックチェーンインパクトサミット」は、記事によれば、国連が進めているSDGs(Sustainable Development Goals、持続可能な開発目標、全球永續發展目標)のグローバルパートナーシップ(全球夥伴)のコミッショナー(主席)が、世界中の300を超えるブロックチェーン関係者を集めて開催された国際会議だと説明されています。
この会議、日本語で読める情報が見つからないんですよね…わずかに、COIN NEXTのこの記事に少し触れられているだけです。
水資源、食料、民主化、AI、デジタル通貨政策、デジタルID、インフラ、医療に関するインパクトファンド(Impact Fund)設立をめぐる重要な議論が展開されたようなのですが…どこかに日本語の信頼できるソース、ないでしょうか(^^;
許毓仁さんについては僕もこれまでにいくつか関連記事を書いてきましたが、台湾のブロックチェーンに関する法整備を積極的に進めている立法議員で、「TEDxTAIPEI」の創設者としても知られています。
許毓仁さんは頻繁に、国際社会における台湾の「外交困境(外交における苦境)」を解消するために、台湾はブロックチェーンに力を注ぐべきだと主張しています。(僕もこちらの記事に書きました)
平素からこうした主張を展開する許毓仁さんだからこそ、中華民国の代表として招聘されたということがわかりますね。
「今日新聞」の記事によれば、許毓仁さんは台湾の事例を2つ紹介し、以下のように台湾のブロックチェーンのかかわりについて説明したようです。
DTCO 的達悟幣和自律聯盟(SRO),並且參與亞洲區塊鏈聯盟的發起,他表示這些都是台灣社群能夠貢獻世界的地方。
(DTCOの「タオコイン」と業界自主組織(SRO)に加え、アジアブロックチェーンアライアンスの発足に参画すること、彼はこれらが台湾というコミュニティが世界に貢献できる場だと述べた)
台湾のブロックチェーン開発企業であるDTCOの「タオコイン」とは、台湾の少数民族のひとつである「タオ族」の人々のデジタルIDをブロックチェーンベースで発行しようという取り組みです。こちらの記事にまとめました。
また、「SRO」は台湾のブロックチェーン業界の自主組織として結成されたもので、許毓仁さんも団体結成に中心的な役割を果たしていたようです。これについてもこちらの記事にまとめています。
こうした台湾の取り組みが国際的な場で紹介されたことは、ブロックチェーンに対する世界的な取り組みが進むなかで、台湾も積極的に具体的な動きを展開していることをアピールするという意味で、非常に重要なことだったと思います。
許毓仁さんも今回のサミットへの参加について、以下のようにその意義を述べています。
他能受邀至聯合國總部參加全球區塊鏈論壇,並且以國家代表身分發言,意味台灣能拋開傳統外交包袱,用跨界的議題如平權、科技、數位、區塊鏈等議題在國際上發聲並邀請全球一起合作。
彼(許毓仁さん)が国連本部からグローバルブロックチェーンサミットへの参加を招聘され、国家を代表する身分で発言をしたことは、台湾が伝統的な外交的な壁を払いのけ、平等・権利、科学技術、デジタル、ブロックチェーンなどのクロスボーダーな課題を通じて国際的な舞台で発言し、グローバルに協力をしていくことを呼びかけるということを意味する。
台湾が国際的な「外交困境」に直面するなかで、個別の議題を通じてグローバルに繋がっていくためのステップとして、今回のサミットへの参加が位置づけられていることがわかりますね。
許毓仁さんがサミットで披露した台湾におけるブロックチェーンの活用事例は、それ自体としては台湾のローカルな取り組みに過ぎません。
しかし、そうしたローカルな取り組みが国際的な場で披露されることによって、ブロックチェーンというグローバルな新技術を媒介として、世界各国が「私たちの事例」のリストに台湾の取り組みを書き込みます。
台湾のニュースサイト「ETtoday新聞雲」に掲載された記事には、許毓仁さんが今回のサミットへの参加を通じて、“The world needs Taiwan, Taiwan is part of the world.”という思いを強くしたとのコメントが掲載されています。
台湾が国際的な舞台で活躍するためには、さまざまな工夫が必要です。そのための活路のひとつがブロックチェーンなのかもしれませんが、ローカルな取り組みをグローバルな文脈に位置づけていく姿勢は、台湾に限らず、世界中でブロックチェーンを普及・発展させていくうえで参考になるのではないかなと思います。
世界的な潮流を意識しつつ、これからも台湾のブロックチェーン・仮想通貨に関する動きを追いかけていきたいと思います!
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