まだメーカーさんが協力会社に対して「チーム」として
見て頂いていた頃のお話を。
自分が初めて遊技機(パチンコ)を作り始めた時
当時、自分は「デバッグ」の重要性をあまり理解していませんでした。
理解していないというか
「理解していたつもりだった」
というのが正しいでしょうか。
ちなみに「デバッグ」とは、完成したゲームや遊技機等
ソフトにプログラムやデザインミスがないか?
しっかりチェックする作業の事です。
デバッグ専門の会社も大小問わず、多いです。
※国内ではデジタルハーツやポールトゥウインが2大デバッグ会社です。
もちろん社内でもデバッグをしていたのですが、
これがとにかく辛いのです!w
・出目のチェック(これ重要)
・デザインのドット欠け
・処理落ち(これも重要。※これ今度機会があれば解説します)
・仕様バグ
・予告複合のチェック …etc
こんなものではないですが、とにかくチェックが多く、
また単調な作業も多いので、当時は手抜きしていました。
しかし会社としても、遊技機の開発は初めての仕事。
良くプロデューサーや先輩たちと
という都市伝説を結構信じて話していましたw
※当時も今も絶対そんな事はないですからね!
そして機種が完成して、マスターアップした後、
今ではありえませんが、当時はマスターアップと同時に
保通協(一般財団法人 保安通信協会)に機種申請をメーカーさんが出しました。
※保安通信協会は、遊技機等を販売する前に、メーカーから持ち込み
出玉性能や射幸性、エログロ表現がないか?等、規則にあった機種に
なっているか?申請書類通りに作られているか?をチェックする機関です。
ここの許可が出ないと、販売できません。
で、申請出した次の日…
会社の上層部が慌ただしいのです。
みんなで「なんかあったの?」と話していると
常務が…
みんな血の気がサーっと引きました。
保通協でのチェック中にブラックアウト(画面が突然真っ暗になる事)
する事は絶対あってはならない事です。
開発スタッフの意識がブラックアウトする所でしたwww。
「おいおい!マジで東京湾に沈められるぞ!」
という話が広がりましたが、またみんなで
「拉致されそうになったら、みんなで戦おうぜ!」(⇦アホ)
なんて話しながら、ブラックアウトの原因を探り始めました。
自分もエミュレーターを使いながらチェック。
しかし保通協で起きた事なので、どういった状態で起きたか?
等の情報が何もないので、絞り込みも出来ない。
そうこうしているうちに21時半過ぎくらいにプロデューサーから
連絡が入ります。
みんな一斉に「マジかー!」状態。
開発部長さん…ガタイがでかくて、正直カタギに見えなかったのです。
(部長さん、ごめんなさい)
そして会社前にタクシー到着。
みんなの頭の中に「ダースベイダーのテーマ」が流れていました。
開発室に入ってきた、開発部長。
(怒られる!)
(沈められる!)
みんなそう思っていました。
そうしたら、開発部長はバグを探しているメンバー一人一人の席を回り
と肩に手を置いて、優しい声で言葉をかけて頂きました。
そして開発にあるテーブルの上に、メーカー担当者さんが持ってきた
大きな袋を二つ置いて
と言って帰られました。
「し、沈められなかった…」
みんな安堵の表情に。
しかしバグの原因はまだ見つかりません。
袋を開けたら、中には大量のカップラーメンやお菓子と
ユンケルの箱が。
「徹夜しろってことね…」
プログラマーが苦笑いしていました。
結局徹夜して、次の日の朝方、ブラックアウトの原因が分かりました。
原因がメインから送られてくるイレギュラーコマンドを本来スルーするのですが
メインからそもそもイレギュラーコマンドが送られてくる事自体が
良くないので(それそのものはメーカー側の問題)、プログラマーが
イレギュラーコマンドが送信された時に、それが分かるように
デバッグモードとして、画面がブラックアウトする仕様にしていたのです。
そのデバッグモードのフラグを下していなかったのが原因でした。
メインからのイレギュラーが見つかったのである意味良かったのですが
スルーさせなかったこちらのミスもあるわけで…。
(その後、プログラマーはみんなから「お前か~!」と首絞められていましたw)
その後も開発部長とは何度かお会いしましたが
本当にメーカー開発の上司としても、人としても
懐が深い人だなぁ~と感動した事を覚えています。
部長はその数年後、突然の病で亡くなってしまい
そこからそのメーカーは迷走していたので、
やはりあの部長は凄かったんだなぁ~と思いましたね。
メーカーも保通協申請に何百万も使うので、今回のバグで
再申請が必要になります。
そうすると前の申請費用も無駄になり、再申請費用もまたかかるので
金額は倍に!
メーカーの開発部長は自分の責任問われるのに、
そんな状況の中でわざわざ開発まで差し入れを持ってきて
穏やかな笑顔で一人一人に声をかけてくるメーカーの開発部長は
今、どれくらいいるでしょうね?
本当にそう思いました。