錦繍の秋が到来しました。
「今年も落ち葉アートの季節が来たなあ」と、いつもの公園に行ったのですが、この季節に鮮やかな紅葉を落としてくれていたナンキンハゼの木が根元から切られて切株しか残っていないではありませんか。
気を取り直して、街路樹にナンキンハゼがずらっと植えてある通りに行ってみると、こちらも枝が剪定されたばかりで葉っぱ一枚すらありません。
たくさんの落ち葉を集めて写真を撮ろうと思っていた私はすっかり肩透かしをくらってしまいました。
とは言え、実は私はつい最近身内に不幸があったばかりで、まだ何に対しても心から楽しめる気分ではありませんでした。
ナンキンハゼの木が切られていたのも、なんだか世の中の無常を見せられたみたいで、私の心情と連動しているような…
大量の落ち葉はあきらめて、目についた落ち葉を拾いながら散歩しました。
集めた落ち葉を種類ごとにまとめてみたら、なんだかおしゃれになりました。
上の写真はハナノキ(ハナカエデ)という紅葉がとても美しい木の葉です。
亡くなった親族の葬儀の日の朝、雲ひとつない秋晴れの青い空に街路樹の紅葉が眩しいくらいに映えていました。
私は紅葉を棺に入れてあげたいと思い、姉と買い物に出たついでにきれいな落ち葉を拾うことにしました。
道を歩きながら落ちている紅葉を見ても、どこかしら欠けている葉ばかりで、なかなか良い形のものが見つかりません。
木から直接葉っぱを取ってしまおうかしら…などと考え、ふと顔をあげると、一枚の赤いハナノキの葉っぱがひらひらと落ちてきて、私の右手の中に飛び込んできました。
本当に「自分から手の中に飛び込んできた」という表現どおり、まるで狙ったかのように真っ直ぐ私の掌に乗っかってきたのですが、それはただの風のいたずら…だったのでしょうか。
私の横でそれを見ていた姉は「これをお棺に入れろっていうことだね」と微笑みました。
紅葉が好きだった故人への、ハナノキからの手向けの一枚だったのかも知れません。