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マスクはまだ息苦しい

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  • 2020/09/06 09:29

 コロナ禍で大半の時間を自宅で過ごすようになったが、元々人と会わないし、外に出ても妻と散歩に行ったり公園で球投げするくらいなので生活は変わらなかった。マスクを付けること、買い物にいく店の様子が変わったくらいである。実家にも数年に一度帰るかどうかだし、妻の実家は同じ東京なので変わらず行ける。家族の健康状態は誰も悪くない。個人的には今のところネットがあればやっていける状態である。生活が成り立たなくなった人には当事者の活動への署名や、フードストレージへの支援などできる範囲で続けているが、考えてみればコロナ前からそういうことはしている。パンデミック以外にも環境問題も気になる。メディアや政治の監視も要るし、差別や暴力や生活困窮の問題は人の手で解消しなければならないと思う。でも私個人への影響に限って言えば、特に変化も閉塞感もない。世界も人生もわからないことが殆どだし、不安を持とうと思えば幾らでも持てるが、悩んでも仕方ないことも多いというのは変わらない。社会の変質は生存に影響が出たり習慣に変化をもたらすほどでなければ、個人の意識に影響を持たないようだ。

 いま死にたくはないが、いつ何で死んでも仕方がないと思って生きている。社会に対して無責任に生きることも、私は否定できない。自らの意志で世界に現れた命などないので命自体は全て等価であり、何をしようがどう過ごそうが、社会の価値基準に従ってその価値を測ろうとするのは間違っている。命を奪うことや生きる喜びを損なわせること、自由を制限することは絶対の禁忌だが、それ以外の社会によって規定される規範は大概が相対的で、価値観も流動的なのであまり気にすることはない。決まりが無ければ優劣も無く、流行も型という縛りに大勢を乗せようとするものに過ぎない。こういう考え方は、生物としての自分の存在を肯定する為に定着してきたものであり、ウイルス同様自分なりに、できるだけ死なないよう生きてきた結果である。

 私は社会において恒常的に何者かであらねばならないということを承服できない。生物としての自分のままで生きて何が悪いのか。物であれ人であれ、それがそこに存在しているだけで面白いし、事実の中で存在を感じているだけで楽しい。我ながらそんないい性格の子供が、某か肩書を持ち税金を払い生きるのが人間の当然という押し付けを受けて、嫌々社会生活を続けてきたのである。恋の悩みや家庭や学校での押し付けへの抵抗も経験したが、生物としていさせてくれという気持ちしかないので、社会的に何者かになろうとする志は持つことがなかった。生活において世話になっているのは実際に必要な物やサービスを提供している人であり、人に対しては感謝の気持ちもあるし助けあっていこうと思うが、仕組や決まりは有難がることではなく現状に応じた形に改良していく対象である。社会的な何者か、つまり肩書など要らない。どうしても要るなら、無職が最も望ましいと思う。

 ただ例外的に、役者という在り方には関心があった。思春期のミーハーや父が地元の劇団にいた影響もあるが、社会的に最も正直にいられる役者という在り方に惹かれたのだと思う。建前をもって生きることを嘘の生き方だとすると、これは嘘ですよ、役を演じてますよと公言できる役者ほど正直でいられるものはない。幸い出会ってきた役者はそういう意味で正直な人も多く、ほっとした。その中の一人は妻である。自分もそうなろうと思い、機会が乗じて自分でもやってみたことはあるが、外見や動作についての客観的な意識が乏しく、伝わる表現の蓄積がなかった。伝わるかどうかの前に、現在の自分の状態を他人に伝えることにも興味がなかったのだと思う。これは致命的だと思い、そこから興味を持ち直すことが出来ずに諦めた。努力できないということは、向いてないということである。向いていないことはやらなくてよい。

 そういうわけで他者にどう思われるか、社会的に自分がどんな人と見られるかも、どうでもよい。肩書に限らず、イケてなかろうが、面白くなかろうが、無意味であろうが、生物として日々の出会いを楽しんでいられたらそれでよいのであった。出会いとは、自分以外の存在を意識することである。相手は生物だったり無生物だったり、景色だったり、ごはんだったりする。自分の意志では制御できない出会いは必ず偶然を孕んでおり、また二度と同じ出会いは起こらない。もし前と同じに思えたとしても、よく見ると必ず何かしら違っている。ただ偶然性に惹かれて生きている。

 出会った偶然にどう向き合うか決めるのが「私」だ。選択も感じ方も自由であり、過去との整合性がとれてなくてもいい。出会いを意識している私自身も自然に変化し続けているからだ。昨日と今日で言ってることが違う方が好きである。だが留めておきたいこだわりの状態はそれはそれで惹かれてしまう。語ることにおいては死を否むのだが、行動がそれを認めているのである。整合性をとろうとするのがこだわりであり、こだわりは不自然で愛おしいが状態としては固定=死である。出会いを味わい変化しながら、こだわりという死を持ち続ける状態が生と言えるのではないだろうか。出会いを楽しむ「私」の状態としては空っぽが一番いいと思う。出会った偶然で空が満たされ、その偶然を味わい、大半は忘れる。だが中にはいつまでも想起されるひっかかりもあり、その感情や経験は「これは何?」と表現しないと、ずっと残ったままになってしまう。表現することで思い出として忘れることができ、空になっていくのではないかと思う。そういう意味では思い出の残滓に染まった空っぽを包む境界が、「今の私」であるとも言えるかもしれない。何をかっこつけたことを言ってるんだと思うが、まだ作れていない映画でも、親しみをもって死を受け入れられるようなものを実験していきたい。いつも生物として日常をどう生きるかにこだわり、感じることを意識することに努力していきたい。自分なりに哲学すること、は全然苦ではない。

 

(補足)

 先日ある場所で「コロナ禍での生活に閉塞感がない」と発言した理由を言語化してみたのだが、上記の通り個人的な有り様しかなかった。要は今すぐ生活に困ることもなく、行動変容もなかったことに加えて、そもそも社会的な自分の在り方にこだわりがないからである。ただ、社会的な肩書や評価以外に自分に価値を見出せない人は苦しそうだから、私のような人もいると伝えたいとは思った。私はできるだけ無名で無職のまま、半端仕事などしながら生きていきたい。その為にはできるだけ沢山の人と繋がっている必要がある。ところでネット上の人格は限定的ゆえに、実在の要素を取捨選別して見せたいものだけ公開することができる。SNS等で知り合いやりとりすることは、実在する人との出会いではない。仕事ではないが、最近SNSで球体人形の出どころについて問い合わせてみたらtwitterよりもfacebookの方が反応がよかった。それは実際に会ったことのある友達がfacebookの方が多いからかもしれない。自分のふるまいについても、facebookの方が「いい人」っぽい感じがする。twitterは目的の有無に限らず発表会になる。半端仕事を見つけてやっていくには、実際に会ったことのある友達を含む場において、自分がどんな人間で何ができるか提示しておくことが大事な気がする。今はZoomなどの会議システムもあるが、仲良くなって、困った時に相手に負担のかからない範囲で相談できる相手がどれだけいるか。LinkedInのような仕事ありきのビジネス特化型の場所は、必ず成立させることが前提のまともな仕事ばかりなので合わない。もっと無責任に期間限定でやれることだけを見つけていきたい。個人的な話が出来る程仲良くなるには、ある程度閉じている必要もある。山下陽光さんは、自身のメルマガやオープンチャットでひたすら実践していて面白いので興味のある方はチェックするとよいと思う。https://twitter.com/ccttaa

あと単純に社会で「勝ちたい人」は下記のリンク先の記事など読んだ方が為になるだろう。無職で楽しく生きる為にも、参考になると思う。専門性、めんどくさいことであるが、好きなことだけやっていれば勝手に身に付くことでもあり、まず方向性をどこに定めるかである。https://t.co/u6acHNuSX3?amp=1

「社会的に何もしない」ことが一番贅沢な時間の使い方である。生物として「ただ在るということをしている」とも言える。風に揺れる木の葉のざわめきを見たり、波の音を聞いたり、自然の中に社会的な自我が消えてしまうのはとても気分が良いものだ。だから何もしないで生きていけるのが理想だが、それができる環境をどう確保するのかが考えどころである。その状態は社会のゲームに積極的に参加し、金が入るシステムを作った結果とも似ている気がする。目的が同じなら好きな道を通っていきたい。生物である以上、本当のゴールは誰もが結局は肉体的な死だろうけども、面白かった~と思って終わりたいではないかと思う。

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