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自助のかたまり

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  • 2020/10/20 14:18

 私は今東京に住んでいる。杉並区高円寺の賃貸住宅である。高円寺はリサイクルショップや古着屋、ゲストハウスや日替わりバーを運営する「素人の乱」など地元のコミュニティが割と元気な街だが、偶に棚など買う位で殆ど関わりはなく、また近所のコミュニケーションも皆無である。今の家は家賃9万円の2LDKで、日当たりが悪く庭も車庫もない。妻と二人暮らしだが、二人共できれば子供が欲しいと思っているし、動物も飼いたいと思っている。今の家でもそれは可能かもしれないが…正直ここ数年、ずっと住む場所を探している。何はなくとも住む所に満足できていれば、あとはどうとでもなる気がしている。どんなところに住めたら楽しいかはよく考えるのだが、別のベクトルからのヒントになる、面白いラジオを聴いた。

山下道ラジオ 48回

 自分が住む番地の家の不用品や普段使わない物を集めて置ける場所を作るというアイディア。同じ番地の人なら無料で使えるし、不用品なら無料でもらえる。但し一定期間経っても貰い手のない物は、メルカリで売るなりして処分される。共用の場を作ることで、共用の予算ができる。それで番地内に不備があったら改善もできるし、祭りをしてもよい。前述の素人の乱の主要メンバーでもあった山下さんのアイディアである。10年前に高円寺で「0円ショップ」を始めた人だ。ネットで0円で情報のやりとりが行われているように、リアルでも0円でやりとりができないか。金のやりとりをしない実験であり、つまらない世の中に「過激な善意」で一石投じる、みたいな気持ちで始められたことのようである。今年もイベント的に福岡で実施された。金銭による利害関係から離れた善意の交流は共感を広げている。

0円ショップってなんだ?

本も服も全部タダ 「バイトやめる学校」著者が開いた店

 ラジオの話から離れてしまったが、0円ショップの結論としては、物がタダで回る場を作ると、人の交流が生まれて楽しいということだと思う。不用品を使ってもらえて嬉しい、必要なものがもらえて嬉しいという気持ちしかないので、楽しいのである。ラジオでの山下さんのアイディアを受けて、下道さんが話し出したのは「食べ助け」であった。直島では島内で採れ過ぎた農作物などをもらい合うことが日常的に行われており、それを「助け」と呼んでいるという。不用品の共有と余剰作物の共有。重要なのは、どちらも押し付けがましくないということである。しなければならないというルールがある訳ではなく、責任も生じていない。余剰が生まれたら無料で回す→どこかの不足が埋まる→楽しい。楽しいし、そっちの方がいいなというのが共有されているので、不満も起こらない。私も青森の田舎出身なので、知人間の物流が起こるのは毎日のように見ていた。起きていない場所に物流を起こす試みのひとつが、番地内0円ショップということだと思う。番地というサイズ感と、誰もが所属している場に関わる感じがナイスだ。町内の交流会など(今やっているところがあるのかわからないが)よりずっと楽しいと思う。

 今の政府はまず自助という。自分のことは自分でなんとかしろ。その次に共助で、困ったことがあったら地域でなんとかしろという。なんとかならなかったら公助と呼ばれる公的支援を受けろという。自分や家族、知合い、公的機関の順番である。それが現在の日本のあるべき姿なのだと首相が言っている。税金の多くを政治家や竹中何某とかが懐に入れている状態なので、自分や家族や知合いで何とかしてちょうだい、国は何もしたくないしできませんということである。税金払う必要あるのかと思ってしまうがそれは別として、自助を合わせたら今より楽しく暮らしていくこともできるのかもしれないとラジオを聴いて思えた。自助を合わせるとは、自分が住んでいる場所に住む人たちで不足を補え合えないかということである。前提さえ(これが一番難しいのかもしれないが)共有できれば、近さ故にすぐさま問題が解決する可能性がある。副業として広まっている民泊は空き部屋のシェアだし、Uberは体力と時間を移動や運搬に提供するということである。余剰を提供するにあたり、企業と契約する必要があるのか。町内でそれをやれば中抜きも無く、無駄な時間も無い。もちろんUberなど仕事として生活費を稼ぐには、近所では埋められる不足が足りないから外に出ていくのだが。またクックパッドなどレシピの共有や、SNSでの日常の共有が行われている現状では「生活のシェア」がうまくいく素地はあるような気もする。承認欲求は不特定多数からしか得られないのかもしれないが、私などは自分が知人の助けになれていたらそれで満足である。今は近所に知人自体がいない。

 もちろん、近所で補い合える不足や困りごとには限界がある。家賃が払えないので立ち退きを迫られているなどは一気に公助が必要になるし、近所で出来るのは生活保護申請を助けてくれる団体を紹介する位だろう。あくまで楽しさ、嬉しいという気持ちが必要なのであり、責任が生じると途端に楽しくなくなってしまうのである。実は近所の老人たちは毎朝道路でラジオ体操をしているのだが、明らかに目が死んでいる人がいて心配である。ただ深刻な社会問題とされている不足の中にも、近所で解決できることがあるのではないかと思う。例えば待機児童や介護老人の世話の手、登校拒否の子への教育などである。専門性は個別に考えればよい。時間も技術も教養も「その人の常識」も、余剰として使えると思う。日常では「ちょっとの間」が大きい。ちょっとの間みてもらう、使わせてもらう、ということが気兼ねなくできる地域では、きっと生活はし易いはずだ。私は子供は大人全員で育てるのがいいと思っているので、子供の面倒を近所の人にも見てもらえたらいいなと本気で思っている。生活で起こる困ったことの解決にも、まず近所の集団にあたってみるということである。

 だがやはり懸念されるのは「ここではそういうもの」として押し付けられる責任である。提供しなければならないというルールがあっては窮屈だし、声が大きいものの影響が強くなりがちである。地域でやる上で無理があってはいけないし、急用でやっぱりできない、というのも当然ある。命に関わることや教育などは専門家の力を借りる必要はある。だがそれ以外は、緩い協力関係において他者を喜ばせること、自分を喜ばせることを、それぞれ考えながら生活していけたら、楽しいのではないだろうか。近所で生活のシェアをするなんて犯罪に利用されかねない、性善説だなどと言われるかもしれないが、基本的に人間は自分がコミュニケーションをした相手を傷付けることは中々しないものだと思う。知らないから平気で傷つけるのである。

 街ではネット非接続のおじいおばあが不安そうだったり不満そうだったりしてるのを見る。価値観が古いままの人は面倒なので話しかけることもないのだが、例えばおうちの空き部屋を貸してもらうことになれば話さざるを得ない。その際、社会の現状やITに興味がある人なら説明はできるかもしれない。私が住んでいる地域には回覧板もないし、地域の関係性は分断されている。現状では隣に誰が住んでいるかもわからないし、若者はネットに繋がって個別に生きているようである。回覧板がないならポスティングからだろうか。ポスティング自体はつまらないし辛い。近所との関係があるなら、0円ショップの話をしてみるとかだろうか。いやまず適切な場所があるかどうかが大きいので場所探しからがよいのかもしれない。どう考えても地縁は利用した方が得である。すぐに損得勘定が入り込むので注意は必要だが、嬉しさ楽しさを金持ちや土地持ちにどう共感してもらうかが考え所だ。お互い楽しいとさえ思えたら何とかなるし、そこで力を発揮するのが山下さんのような個性なんだなあと思う。ところで近所の相互扶助というと、素人の乱の在り方に近づいていくような気もする。だが団体として固有名が付くのは個人的にはちょっと嫌だ。

  私は以前、主に近所のおばあちゃんの飼っている犬の散歩をして生計を立てていたことがある。1回1500円で1日2回だったので犬の散歩だけで月に9万円になる。金持ちのおばあちゃんだった。それと近所の雑貨屋の店番、基金訓練をしている時はその補助金もあったので、裕福ではないが余裕で生活できた。年寄りを利用するというとイメージは最悪だが「関わりさえ持てれば食っていけるのだな」と思ったのを覚えている。ただどうやってその仕事を手に入れたかといえば、偶然である。無計画に仕事を辞めて生活に困りそうだったので、行きつけの雑貨屋に相談したら雇ってくれ、店番してたら近所のおばあちゃんの話が舞い込んできたのだった。偶然に乗るのは簡単だが、流れを起こすのは難しい。意図的に起こせばそれはもう偶然ではない。

 私は雑な性格だが人見知りはしない。まだ39歳だし、地域や個人レベルならできることはあると思う。妻はプロの俳優なのでやはり東京がよいのかもしれないが、親子で楽しく住める家さえ見つかれば、楽しくできる範囲で近所も助けまくりたいし助けられまくれたいと思う。正直言って社会の為に働きたいとは思えないが困っている人は助けたい。本当は1円も稼ぎたくないしずっと無名でいたい。クソ政治で疲弊しきっている今は、地域で緩く繋がれるチャンスでもある。疲弊しきっているゆえにヤバくなっている人もいそうだが、周囲の隣人たちの8割はマトモと思いたい。物件を見つけて引越も手だが、今いる所の地域を意識してみるのもよいのだと思う。コロナもこわいし考えてしまうと難しいが「動く範囲内で出会う人たちと自分たち」がどうしたらもっと楽しく居られるのか、それだけに意識を集中できれば、機会は幾らでもありそうだ。満足できる場所に住みたいと言う時、近所にどんな人がいてどんな関係が持てるかというのは重要だが、まずはこの辺の人たちという意識をもつところからであり、周囲に何があるのかキョロキョロするところから、始まるのだと思う。先に「別のベクトルからのヒント」と書いたが、物理的な家の不満や、実際に住んでいる人そのものについてはどうしようもないが、自分を含めて地域を見る+嬉しい楽しいことだけを地域で共有するという意識を持っていたら、住んでいることに現状より少しは満足できるかもと思えたのだった。

(追記)

近所で不用品を並べるご隠居さんは結構いる。だが今のところ自分の裁量でやりたいようである。面倒くさいもんね。神社の敷地内に0円ショップを用意したら暇な時に協力してくれるかもしれないとは思う。

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