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【二宮・三宮を巡る】 何もかも謎だらけの三宮(三重県)波多岐神社(はたき)・宇都可神社(うつか)

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  • 2021/03/06 07:08

前回前々回と三重県、当時の伊賀国の一宮と二宮を参拝した。
両社とも、この地の有力な士族を祀っており、特に二宮はあの「秦氏」の流れをくむ服部氏を祀っていた。

今回は三宮の波多岐神社を参拝しようと訪れたのだが、入り口の二の鳥居脇の社名碑には2つの式内社の名前が記されていた。

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二の鳥居・社名碑(波多岐神社・宇都可神社)

基本情報

鎮座(所在地)

三重県伊賀市土橋752

創祀

(波多岐神社)

不詳(『式内社調査報告』によれば「延喜以前の総件であることはうまでもない」とされる)

(宇都可神社)

不詳(『三國地誌』及び『惣國風土記』において天武天皇二年(673)に初めて祭礼をおこなったとされるものの、信憑性は低い。但し『日本三大實録』にて貞観十五年(873)に正六位上から従五位下に昇叙との記事があり、この時期以前である事は間違いなさそうである)

社格等

(波多岐神社)

式内社(小社) 伊賀國阿拝郡 波太伎神社 小

旧社格:郷社

宇都可神社)

式内社(小社) 伊賀國阿拝郡 宇都可神社 小(論社)

国史見在社(日本三大實録)

旧社格:村社

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拝殿内の祭神額
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拝殿内・相撲額

 

御祭神

(波多岐神社)

大鷦鷯尊 [仁徳天皇](おおさざきのみこと)

(宇都可神社)

大物主命(おおものぬしのみこと)

大己貴命(おおなむちのみこと)

罔象女命(みつはのめのみこと)

高皇産靈命(たかみむすびのみこと)

建御名方命(たけみなかたのみこと)

源滿仲(みなもとのみつなか)

源頼光(みなもとのよりみつ)

源頼信(みなもとのよりのぶ)

源頼義(みなもとのよりより)

源義家(みなもとのよしいえ)

縁起

(波多岐神社)

当社は往古より現社地の鎮座にして由緒は「明細帳」に

「延喜式 阿拝郡波太岐神社府中村三ノ宮仁徳天皇

 延長風土記 阿拝郡国府山有神號波太岐神社所祭仁徳天皇

 准后伊賀記 国府湊三ノ宮神領里人之を三ノ宮とご称し又波多岐神社と號す

永閑伊賀名所記 阿拝郡三ノ宮国府のあたりに侍るよし宗祇の至實抄に侍る是は仁徳天皇のよしある記に侍る

三国地志府中村土橋村に座す三ノ宮と称す山神、西條、東條、印代、土橋の總社とす云々

大日本史 波太岐神社(○太一作多伎又作岐今在府中郷土橋村称三ノ宮)

伊水温故記 波多岐社と號して仁徳天皇を祭る延喜式神名帳二五座の随一云々大谷村阪の下村府中七郷の内云々」

とあり

明治六年村社に列せられ明治三六年十月郷社に昇格、明治三九年十二月三重縣告示第三百八十號を以て新撰幣帛料供進指定社に定めらる明治四十五年二月本縣優良神社として戌申証書謄本下附せらる

『三重県神社誌 第二巻 P.89-90』より抜粋(国立国会図書館デジタルコレクション)

(宇都可神社)

当社の創祀は明らかでない。『三國地誌』は『惣國風土記』の記事を挙げて、天武天皇二年(六七三)に初めて祭礼を行った、とあるが、『惣國風土記』は近世初頭の偽作であって、その説は必ずしもそのまま受け取りがたい。しかし、貞観十五年(八七三)九月二十七日に正六位上から従五位下に昇叙したことが三代実録にみえているから、このころひろく崇敬を得ていたことが知られ、その創祀はある程度遡ることは推察に難くない。

その後の推移については、ほとんど知ることができないが、上述のように明治九年、土橋・内保両村の間に式内社論争が起こり、土橋村の宇都可神社に決定された。しかし、その所在地は土橋の山中(阿山郡府中村大字土橋字鳥羽谷一〇九九番地字内大堀山)にあり、村内から路が遠くかつ険阻である上、厳峯の社地であって、安政元年(一八五四)六月、地震で社殿近くの社地が崩壊したので、明治十年十一月、波多岐神社境内に社殿を新築し、山宮神社と合殿とした。

明治四十年二月、村内に散在していた貴船神社、薦枕神社、諏訪神社、寄建神社をこれに合祀し、村社宇都可神社と称したが、明治二十一年、社格が廃止された

『式内社調査報告 第六巻 東海道1 伊賀国・伊勢国(A)』 式内社研究会編纂 P.11より抜粋

交通情報

公共交通機関

JR関西本線 佐那具駅下車 徒歩23分(1.9km)

名阪国道 伊賀一之宮ICより2.5km

駐車場

神社境内には駐車スペースはなし。

境内脇(二の鳥居を左に斜めに小坂を上がって拝殿の左脇の建物の脇に1台程度止められるスペースはあり)

近傍は田畑が多いが、道もそれほど広くないので、駐車には十分な注意が必要。

参拝記

この日は伊賀国の一宮・敢国神社、二宮・小宮神社に続いて三宮である当社(波多岐神社)に参拝。

恐らく当時の国司もこのような順序で参拝されたのではないか、等と考えてみる。

さて、この三宮はなかなかに難しい。

実は来てみて初めて知ったのだが、一つの社殿に式内社が二社一緒に祭られている。

一つはもちろん伊賀国三宮・式内小社・波多岐神社、そしてもう一つは式内小社(国司見在社)・宇都可神社である。

しかも、境内にあまり情報がなく、せいぜい拝殿内上部に掲げられている額に御祭神が記載されている程度なので非常に困ってしまった。

参道はJR関西本線の線路や柘植川の河川敷からほぼまっすぐに伸びており、突き当たりに二の鳥居と年季が入っている両社の誇らしげな社名碑(式内郷社 波多岐神社・国司見在延喜式内 宇都可神社)、そこからそれほど長くはない階段が伸びていて、三の鳥居、そして境内中央に大きな相撲の土俵が置かれていた。

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境内の土俵

 

まず、前記のように拝殿に入って参拝すると、中央上部に額がかかっていて、そこに祭神が記載されている。

同じく拝殿左脇には相撲のシーンが額で飾られていて、境内中央の大きな土俵と併せて相撲との何らかの関係と表しているようにも見える。

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拝殿
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拝殿 外観

 

波多岐神社、宇都可神社以外に府中神社も祭られているようだ。

いろいろ調べてみると、宇都可神社が近傍の神社を合祀されたことから、祭神の数が非常に多い。

宇都可神社の元々の祭神は、『三重県神社誌』によれば大物主命だけのようである。

両社とも実は創建の時期が判然としない。

まず、波多岐神社であるが、前記のように創立・創建時期が伝える者が何もなくて全くの不明、そして有名な織田信長による「天正伊賀の乱(天正九年(1581))」の際に社殿が焼失し、その後慶長九年(1604)に再建されている。

祭神についても、現在は大鷦鷯尊 (仁徳天皇)とされているが、『神名帳考証』によれば保食神ともされる。

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山上参籠所

 

なぜ仁徳天皇が祭られているかも不明。

さらに、なぜ波多岐神社と呼ぶのかについても、

1.昔境内に樫の木があって、それが皆曲がらずにまっすぐだったので朝廷に旗木(はたき)として献上したから、旗木=波太岐=波多岐となった。(『三重県神社誌』)

2.京都府の眞幡木(まはたき)神社が神功皇后外征の際に、艦上で立てた御旗を宮中に収め、これを祀ったから。(『式内社調査報告』)

と幾つかの説があり、これもはっきりとは分からない。

三宮なのに分かっていることがほとんどないといっても過言でないほどミステリアスな神社である。

同様に、宇都可神社に至っては論社となっており、「上野市(現伊賀市)土橋字鳥羽谷字大堀山説」と「阿山郡阿山町内保説」の2説がある。

実際には、論争に決着がつかず、明治9年に当時の内保村と土橋村の間で紛争が起こり、国の教部省に訴えた結果として土橋村が勝利した、という経緯がある。

一応論社ではあるが、国との間では土橋村に決着している。

ただ、現在の土橋の波多岐神社社地も移転後の場所であって、そもそもはもっと山奥で参拝もままならない場所に本来祀られていたようで、安政元年の地震で社殿近くの社地が崩壊したことから、やむを得ず現在の波多岐神社の地に合わせて祀られたとのことである。

確かに、付近をGoogle Mapの写真で見ると、境内の背面には大きな森が広がっており、この山奥になぜ宇都可神社として祀られていたのか、もよくわからない。

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一の鳥居(その先は関西本線)
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三の鳥居から斜面下の二の鳥居や関西本線を望む
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神宮遥拝標

 

宇都可神社(土橋)は祭神を大物主命としているが、もう一方の論社の宇都可神社(内保)は金山彦命であるらしい。(『三國地誌』『式内社調査報告』)

一宮である敢國神社は金山比咩神を祀っていたので、少しだけ関係がありそうな気もするが。

何度も境内をくるくる巡ってみたがよく分からず、帰宅してからデスクワークで調査しても全くといって良いほど分からなかった。

それでも三宮と称されているのであるから、今も昔も周囲の人達にとって大切な地域の守り神だったのだろう。

御朱印 

神職が常駐していないようで、書き置きの御朱印(年のみで日付は空欄)が拝殿にプラスチックケースに入れておかれている。

初穂料を賽銭箱に投入して頂戴できる。

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書き置きの御朱印

【伊賀国一宮&二宮・三宮巡りの記事】

併せてお読みいただけますと幸甚です。

忍びの里の一宮を巡る(三重県)伊賀国一宮 敢國神社
【二宮・三宮を巡る】 忍者で有名なハットリ氏の祖先を祀る(三重県)小宮神社(おみやじんじゃ)

 

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