3月からだったのが、コロナ騒動のおかげで会期が変更になり、6月から開催、
来月上旬終了となった。
自分の母が、チケットをもらったとかで、招待券を持っていたのだが、自分も興味あり、チケットプレゼントに応募して、当選していた。
チケットだぶってるときは、人にあげることが多いのだが、自分は先に、友人を誘っていて、母は母で、私と行くつもりだったため、結果、2回行くことに。
母と行ったのは8月の終わり。
事前予約なしで入れたのでよかった。
中に入ったら、検温などはある。
ガラガラでもなく、ちょうどいい人の入りで、快適に絵を見れた。
もともと、ピーター・ドイグのこと知らなかった。
広告に載っていたこの絵の色合いに惹かれたのがきっかけ。
1959年生まれの現代のアーティストで、イギリス人。
日本での個展は初めてらしい。
過去の有名作家の手法やモチーフや、映画など現代のカルチャー、自分が住んだ場所など、様々な要素を彼のやり方で再構築して、美しい作品を作っている。
現代、最も重要なアーティストの一人と言われているそうだが、自分の周りでも、彼を知っている人はひとりしかいないくらいだった。
入ってすぐは、彼がカナダで暮らした頃が土台となっているシリーズ。
そこに、映画や、広告からのイメージが重なったものなどが続く。
湖面に映ったものが描かれているものがいくつかあり、湖面が鏡写しではないところが不思議な感じさせる。
ちなみにこの上の絵は、2015年にオークションで、約30億円相当で落札されたそう。
どこかで見た感じもするのは、過去の有名画家の作品からアイデアを得ていたり、みんなが知っているような映画からイメージしたものを加えてるからかもしれない。
色んな要素があるから、色んな人の心になにか、合致して、共感を呼ぶように思う。
不思議さに惹かれるというのもあるだろう。
この絵は、ぱっと見だと、ただ大きい絵で、綺麗な色って思うくらいだったが、
よく見ると、たくさんの人がいることに気づき、キャンバスの表面には、アクリル絵の具の白い塊がぼつぼつところどころに乗っかっているものが、
雪を描いただけでなく、この絵にかかった雪だと、違和感なく思えてくる。
ニセコのスキー場がのった広告パンフレットから思い描いて描いたそうだが、
最初はこの絵は半分だった、といった説明書きが絵の横にあった。
細々と人が生きている様子は、説明にある通り、ブリューゲルっぽい。
この絵については、9月の頭に、友人と行ったときに改めて見て、いかに1度目にちゃんと見てなかったか、自分で驚くほどだった。
つまり、2度目で気づいたことが結構あったということ。
いくつもの要素をこのようにバランスよく、絶妙な色合いで描かれているので、見ていて飽きないし、夢か現かという不安定さと、どこかで見て知っている絵画の手法の安定感のためか、見やすい。
絵であり、写真そっくりの絵ではないし、はっきりした具象でもないが、目の前の、自分の目と脳を通して感じる映像のよう。
写真よりも、イメージがリアルに思えた。
実際、同じものでも、人は同じように見てない。
雪山や森や畑のような絵から、彼が移住したカリブ海の島国トリニダード・トバゴでの絵に移る。
国と国ってどうしてこんなに違うんだろうって思うことあるが、絵の色も描き方も変わって、絵から感じる空気も南国のものになる。
上の絵は、小津安二郎の「東京物語」から影響を受けたものと、説明にあった。
この展覧会の絵は、すべて撮影可能なのだが、この記事では自分が何となく気に入ったものだけ貼り付けている。
上の絵の上の方の空の部分は、美術館で見ても、一見白っぽいのに、よく見ると白でなく、銀色でしかない。
つくづく、絵は、美術館で観たいなぁ、やはり美術館で直に見るのは違うなぁと思った。
絵筆のタッチにアーティストの息を感じるし、平面でなく、立体。作品という、もの、生き物のように思うから。
さっと見るだけでは、ライオンにばかり目が行く。
この記事では、こうして切り取られているから、左の人に気づきやすいが、美術館の中では、もっと亡霊のよう。
どれも、違う時間を重ね合わせた、場所の記憶にも思える。
実際、創作なわけで、どちらも実在しないものを実在させているわけだけれど。
南国シリーズもカナダの寒い景色のシリーズと同じようにたくさんあった。
人によって、好みのものは違うから、自分がたいして興味持たなかったものが、ミュージアムショップのグッズの絵として選ばれていることは多い。
2度目に行った時は友人とだったが、友人は、ミュージアムショップのグッズ用に選ばれていたひとつの絵を見て、自分はこれが一番印象的だと言っていた。
大きな絵画の後、ピーター・ドイグが友達とやっていた上映会の宣伝用の手書きポスターがずらっと並んでいた。
日本の映画のもいくつかあって、彼の趣味がなんとなくわかる。
よくこんなデザイン考えるなと思う。ピンポンのラケットに人の顔があるのは、映画の内容にも合ってるし、
知らない映画でも、何か謎過ぎて、興味惹かれるし。
ざっと書いた感じでも、塗りつぶしていても、立体感があるのも、うまいなーと感心するし、
よく、ここを切り取ろう、こういう構図にしようというバリエーションの豊富さにも驚く。
・・・って、そりゃ、超凄い人みたいだもんね・・・・(東京国立近代美術館のサイトの説明参照↓)
ピーター・ドイグとは
1959年、スコットランドのエジンバラ生まれ。カリブ海の島国トリニダード・トバゴとカナダで育ち、1990年、ロンドンのチェルシー・カレッジ・オブ・アート・アンド・デザインで修士号を取得。1994年、ターナー賞にノミネート。2002年よりポート・オブ・スペイン(トリニダード・トバゴ)に拠点を移す。
テート(ロンドン)、パリ市立近代美術館、スコットランド国立美術館(エジンバラ)、バイエラー財団(バーゼル)、分離派会館(ウィーン)など、世界的に有名な美術館で個展を開催。
同世代、後続世代のアーティストに多大な影響を与え、過去の巨匠になぞらえて、しばしば「画家の中の画家」と評されている。
しかし、色のトーンや構図など、なかなかスタイリッシュというか、洒落ているので、若い人も好きそうだし、映画好き男子、フランシス・ベーコン好き男子も気に入りそうだし。
それでいて、ゴーギャンや、ゴッホ、ブリューゲルっぽさもあったりするし、
現代なのに現代絵画過ぎず、年配の人も楽しめそう。
具象寄りの抽象、物理的には具象なのだが、自分に吸収されたら、抽象的になるというか。
2回行っても楽しめ、引き付け力を感じた。