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俯瞰ロッキード事件 序論

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  • starai
  • 2021/06/18 01:13

今年はロッキード事件が表に出、そして前総理であった田中角栄が逮捕されて45年となる。現在起きている事象を辿ってゆくと、戦争に行き着く前に、必ず一旦このロッキード事件、そして田中角栄という存在にぶち当たることになる。それは、このロッキード事件というのが、単なる汚職事件をこえて、大きいところでは外交・安全保障問題、政局に絡めた政治闘争、政治家の汚職に関わる司法の限界、飛行機という巨大許認可事業に関わる政官財の癒着、空港建設という巨大公共事業を巡るさや当て、ニクソンショックに絡んだ外国為替という国際巨大利権を巡る駆け引き、そして新聞をはじめとしたマスメディアとの関係といった様々な問題を包含し、最終的には田中の「日本改造計画」に象徴される開発主義とそれに関わる土地問題に集約されてゆく事になるからだ。土地というのは、長きに亘って曲がりなりにも農耕民族として歩んできた、そしてそれ以前からの先住民的な記憶に絡む略奪の歴史を含んだ、日本人の存在の根底に絡むような重要な問題である。それが、権力者の一存で、奪われ、解体され、取り巻きに安くばらまかれ、そしてそれによって投機の対象となって地価の暴騰を招いたのだ。それはバブル経済という狂乱の渦に日本中を巻き込み、そしてそれは当然のごとく破裂し、全てがはかなく消え去った。その傷跡は30年を経た現在でも深く日本の経済、それに留まらず社会全体に深く刻み込まれ、そして日本の経済社会は縮小の一途を辿っている。それほどまでに、この事件は、昭和史、戦後史、そして現代日本史において、更に言えば世界史的にも非常に大きな意味を持つ事件であり、現在の特に日本社会の閉塞感は、この事件に絡んだ様々なことを明らかにし、解決して、社会としてさっぱりしないことには突破できないのではないかとすら思うことがある。

このシリーズは、その謎に少しでも迫り、その事件が導き出す様々な問題とその帰結を明らかにすることによって、戦後日本にたまった澱のようなものを少しずつでも整理し、自分の心をすっきりさせて、それによって少しでも社会全体が前を向いて動き出せるようになれば、と願って書く物である。

 

様々な問題が絡むといっても、個々の問題の構図自体は比較的わかりやすく、すぐにある程度まとまるだろう、などと甘く見ていたが、ところがどっこい、田中角栄という人物を探れば探るほど底なし沼にはまるかのように戦前から続く昭和史の闇にとりつかれてしまった。まさにロッキードは1日にしてならずで、田中角栄の人生そのものが問われたかのような問題だったという事がわかってきたのである。全体のイントロとするつもりだった田中角栄の生立ちの部分が、どんどん膨らんで、一体なんの話だったのかがわからなくなりつつなってきたので、とりあえず原点に戻るということで、ロッキード事件そのものも見つめることから始めることとした。ロッキード事件それ自体においては、田中はむしろ脇役のような感じで、取り立ててその存在感が大きいわけではない。まさにそれがロッキード事件というものの本質をわかりにくくしている根本要因であると言えるのだが、そのような司法の性質を作り出したこと自体が、田中がこの事件で問われた本質的なことなのだと私は感じる。

そしてもう一つ、田中角栄の人生前半から中盤にかけての駆け抜けるような勢いは、様々な歴史的文脈を角栄流に都合良く並び替えることで、とにかく人の思いや記憶というものを改変して、それによって生じる様々な記憶の飛躍を利用し、そこを金で埋めることによって超特急というべきか、ロケットというべきか、そのような社会的な一体感というか連動感を形成し、金に突き動かされた政治的熱狂を作り出すことで生まれたのだと感じる。それを、特に様々な思いの染み込んだ土地というものをもてあそぶことで自らの権力の源泉にしたのが田中流なのだと言える。

その意味で、そんな田中を生み出した生立ちを後回しにしてどこまでまとまるのか一抹の不安はあるが、とりあえずは書き始めることとしたい。

 

*なお、このシリーズは、ノンフィクショナル・フィクションと称し、事実であろうと思われることをベースに筆者が推測を書き連ねるものであり、それが事実、ましてや真実であると主張するものでは全くございません。引用、参考などにする際は、必ず自らで裏をとった上で、自分の責任のとれる範囲でのご利用をお願いします。実名等を用いて公の場で推測を書き連ねることにはご批判もございましょうが、現実社会がそれに輪をかけたような決めつけや意図的な歪曲に満ちていることを鑑み、表現の自由に則って自らの考えることを自由に表現するのみです。反論、ご意見等ございましたら、コメント欄を使って具体的に議論に参加して頂ければ幸いです。

 

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