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宇佐神宮祭神

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  • starai
  • 2019/11/08 02:00

 では、八幡社の本宮とされる宇佐神宮についてみてゆきたい。宇佐神宮については、縁起等を含め、多くの分析がなされているが、どうも強い先入観にとらわれているように感じるので、なるべくフラットな視点から問題を提起するような形にしたい。宇佐神宮が本宮とされる根拠として、延喜式頭注が上げられる。そこには、「八幡の語義は諸説あって確定しないが、八幡神の信仰は当社から始まるという点ではほぼ一致している。後に神仏習合の風潮の中で大菩薩の号が贈られた。菩薩は悟りを開き、他者のために救済を行う者。宇佐は郡名に同じ。」となっており、八幡信仰が宇佐神宮から始まったことが明記されている。これは本稿の範囲を逸脱することではあるが、延喜式というものの成立背景というものを考慮に入れて考える必要があるだろう。

 その祭神は、その延喜式に従えば、宇佐郡の三座として名の上がる八幡大菩薩宇佐宮、比売神社、大帯姫廟神社がそれぞれ近世資料『和漢三才図会』で宇佐八幡宮祭神として挙げられている応神天皇、玉依姫、大帯姫神に比定でき、それが一之御殿(誉田別命、応神天皇)、ニ之御殿(三女神:多岐津姫命・市杵島姫命・多紀理姫命)、三之御殿 (神功皇后、気長足姫命)ということになる。なお、近世には宇佐八幡宮とされていたことに注目したい。主祭神の八幡神についていえば、その初見は天平3年(731)の撰であるとされる「住吉大社神代記」に八幡神の記載があるが、その信頼性はあまり高くない。宇佐在地の宇佐氏のもとの祭神は天三降命であり、八幡神、あるいは応神天皇とはかかわりがない。宇佐の祭神が応神天皇であることが明確に見える初見は弘仁6年の宇佐神主大神清麻呂解状「件仏大菩薩、是亦太上天皇御霊也」(弘仁12年太政官符による引用)を引用した「宇佐八幡宮弥勒寺建立縁起」(以下「承和縁起」)の「是品太天皇御霊也」という語句だが、これは肝心の太上天皇のところを品太天皇と変えているので、実質的には「承和縁起」が初見だといえる。比売大神に関しては、玉依姫説(承和縁起、宇佐託宣集)と江戸時代に始まった誓約の三女神 (宗像)説などの説がある。後者については日本書紀神代上第六段一書に、天照大神と素戔嗚命の誓約によって生まれた市杵島姫命・端津姫命・田霧姫命の三女神が葦原中国の宇佐嶋に降るとの記述がある。これについても、名前は確かに宇佐となっているが、葦原中国の宇佐嶋という表現と、現在の宇佐神宮の鎮座地、あるいはその由来の地が結びつくのか、という検討は必要であろう。そして、この三女神説自体、宇佐とのつながりを日本書紀に求めるために持ち出された説といえる。なぜなら、宗像の三女神自体が日本の歴史に深くかかわっており、日本書紀でも別に三書を立てなければならないほどその考えがまとまっていないものだからだ。まず、古事記と日本書紀ではその記述は全く違っている。古事記では、天照と素戔嗚が持ち物を交換してそれぞれ三柱の女神と五柱の男神を生み、素戔嗚の持ち物から女神が生まれたことからその心が正しいという証明になっているのに対して、日本書紀ではいずれも男神が生まれたら潔白の証明となっており、その通り素戔嗚から男神が生まれたこと自体が証とされて三柱の女神が素戔嗚に下されることになる。これは、古事記と日本書紀の立場の違いをもっとも端的に表しているものとみてもよいだろう。つまり、古事記は女神を上に置き、日本書紀は男神を優先しているということだ。そして、三書が立っているということは、それぞれの姫の立場を表しているとも考えられる。しかしながら、三書はいずれも市杵島姫に比定できる姫が最初に生まれたとしており、そのままでは適用できそうもない。一方で、撰文では田心姫、湍津姫、市杵島姫の順になっており、また、古事記では多紀理毗売命、市寸島比売命、多岐津比売命の順になっている。三書ではそれぞれ瀛津島姫・湍津姫・田心姫、市杵島姫命・田心姫命・湍津姫命、そして瀛津島姫命・湍津姫命・田霧姫命となっている。このうち、古事記は一つの完結した話であろうから、その立場が多紀理毗売命を奉ずるものであることは間違いないだろう。いずれにしても、ここからわかるのは、姫を首長とした複数の国があり、それが誓約の結果として素戔嗚に従うことになったということで、それが二之御殿に祀られているのだ。

 さて、三之御殿の大帯姫だが、大帯姫は弘仁14年(823)奉斎された。「延喜式神名帳」に大帯姫廟神社となっており、筑前香椎宮に始まったものかと思われる。神功皇后であろうと思われるが、記紀に大帯姫という別名は記載されていない。これらの祭神の変遷の背景を探ることが、八幡神の性格を考える際には重要なことである。これについてはまた後程詳しく見る。

 若宮は、天長元年(824)に大神蘊麻呂(つむまろ)の母酒井勝門主女に託宣があり、それに従って祀ったとされ、仁寿2年(852)の項で託宣集に初めて現れる。貞観18年の解状(876)(託宣集)によると、菱形宮の西の荒垣の外に隠れていた神で、祟りを恐れて祀られるとする。もともとは小椋宮の西方に穏座する「神一前」であり、「宮殿一宇」を立てて祀ったが、その名を顕わさぬ一種の祟り神であったので、のち「若宮神」と名付けられたという。これは、時期的に石清水八幡宮の創建時期と重なることもあり、その観点から意味を探る必要がありそうだ。

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