こちら様で
※三式簿記に関してはALISでも最重要記事と思える下記を参照してください。
と紹介されていました。
それが
こちら様。
井尻さんという方(カーネギーメロンです。Wow)が作成した「Triple-Entry Bookkeeping」に関する和訳ですね。
拝見しました。
上記記事に対する私の素朴な感想は「わからない、みんなわかるの?」というものです。
三式簿記が何か、という点から説明しないとBTC(本質的にはブロックチェーン)とのつながりを理解できないと思われます。
というわけで、ここでは順を追って説明していきます。
まず複式簿記の確認です。
こちら様がわかりやすかったので引用します。
人がわかりやすく書いているものを、自分でわざわざ焼き直す必要ないと思いますのでリンクで失礼します。
何かを理解するには、似ている別の何かと比較するとわかりやすいです。
ここでは複式簿記(double entry bookkeeping)を理解するためにまずは単式簿記(single entry bookkeeping)と比較します。
上記引用記事は単式簿記と複式簿記の違いです。
家計簿をつけている方は多くいらっしゃると思います。その多くが単式簿記的な書き方のはずです。
これは財産(B/S的なもの)にアクセスする必要があまりなく、現金支払いと収支が一致するからなんだろうなぁ、と理解しています。現金収支表と家計簿は同じなのですね。
企業になると、これがなかなか難しいのです。企業と企業の取引は「掛け」が原則だからです。
ドラマや漫画で、オジサンが飲み屋で「ツケといて~」なんて言いますよね?「掛け」は「つけ」の事です。
そして月に一回、清算します。
これは、取引が反復継続的に行われるからです。
例えば月に5回、毎回事務手続きをしたり現金支払いを行ったりするのは手間なのです。企業がお付き合いする企業は規模にもよりますが何十社になります。月に一回清算という方法で事務を簡単にしたいんです。
結果として、自分も一時的な借金をするし、されます。これが貸借対照表(B/S)の売掛金や買掛金というもので、それぞれ資産、負債です。
買掛金はクレジットカードの今月のお支払いがどんどんたまっていく状況をイメージしてください。
さらには現金収支と収益・費用が合わない例として減価償却費があります。
次、仕訳に移ります。
仕訳というのは、取引があったときにどういう記帳をするのかというスタイルの事です。
個人が仕入れをした時を考えます。
先述した引用に則ると
単式簿記
2018/11/17 支出 商品代 10000円
という感じでしょうか。クレカ払いだったりすると、別途、使えるお金から引いたりして管理するでしょう。
企業が仕入れをしたとすると
複式簿記
2018/11/17 商品 10000円 / 買掛金 10000円
何気なく書いてある真ん中の「/」が重要です。右と左で違う事を表しています。
同じ10000円を表すのに複数の視点から見ているんです。
自分としては、商品を10000円分受け取った、と見れます。
その結果
(自分が)相手に対し、一時的な借金(買掛金)を負った、と見れます。
この仕訳を日本語の文章にします「自分は、10000円分の商品を仕入れて同額の買掛金を負った」
いかがです?複式簿記の方が買掛金がある場合はすっきりと一つにまとまります。
別途管理したりしなくていいんですね。
(実務上は別の伝票会計をやってます。話が込み入ってねじれるので、今回はやめておきます)
この辺りも参考になるかと思います。
なんとなく複式簿記のスタイルがわかりましたでしょうか?
(日付) 要素 金額円 / 要素 金額円
仕訳はこんな感じです。左と右の金額は一致します。
UTXOを使っている仮想通貨のトランザクション内でインプットとアウトプットの金額が同じになるのと似たような感じです。
では、いよいよ三式簿記の説明に入ります。
これ自体がわからないとBTC(ブロックチェーン)との関係がわかりませんから。
にて杉井 靖典さんという方が
取引きの連続性を、暗号と数学を駆使して証明可能にした点にある事だと、僕は思っています。
複式簿記は、帳簿の記録者が不正を行わないことを前提にして運用されますが、三式簿記は、必ずしも信頼できない人どうしの取引において帳簿が正しいことを証明できる基盤になります。
と書いています。端的にいえば仰る通りかと思います。この結論に行くには相当先ですが、頭の片隅に置いておいていただけるとよろしいかと思います。
本来の三式簿記は(誤解を恐れずに言えば)未来というか予測というか予算を取り入れた帳簿の記帳方法だと理解しています。WIKIでも「時制的三式簿記」「微分的三式簿記」の二つが示されていますので二つを確認したいと思います。
まずは時制的三式簿記。
こちら 3式簿記への招待-複式簿記の相対化 - 駒澤大学(pdf注意)
が良い例を出しているなぁと思うので紹介します。
第二回の3、三式簿記への招待をご覧ください。全部引用するのもアレなので、かいつまんで説明します。
単式簿記の仕訳は
(日付) 要素 金額円
でした。
複式簿記の仕訳は
(日付) 要素 金額円 / 要素 金額円
でした。
三式簿記の場合
(日付) 要素 金額円 / 要素 金額円 / 要素 金額円
となります。
期首試算表と期中の仕訳を合算すれば自動的に期末試算表ができるのが特徴です。
引用PDFを尊重して「財産X=資本Y=予算Z」という等式が成立します。
PDF通り、現状の複式簿記におけるB/Sの資産と負債が財産Xに、資本YはB/Sの純資産とP/Lを表します。
最終的に差額で金額が出てくるのが既存の複式簿記と合わないのかな?と思っています。
既存の複式簿記ですと、グロス(合計値)が出ます。そこからネット(差額)を計算するのは簡単です。
最初からネットで期末試算表が出ると結局期中仕訳をすべて総ざらえして見なくてはならず、既存のB/S、P/Lとの整合性は取りずらいと思うのです。(システムが発達した今ならできると思います)
次、微分的三式簿記。
「財産X=利益Y=利力Z」という等式が成立します。
引用PDFでいう「X(ストック)=Y(フロー)」Yを微分して「Y(ストック)=Z(フロー)」という考え方に基づきます。
ストックやフローや微分の説明をします。
ストックというのは一時点の有り高です。「今身長は何センチ?」答えられます。
フローというのは一期間の有り高です。小中学生辺りに「この一年で身長がいくら伸びた?」答えられます。
しかし、「今この時点で身長がいくら伸びた?」と聞くのはおかしいですよね?普通答えられません。
そこで例を変えます。野球です。
実際にピッチャーの手からボールが離れてキャッチャーミットに収まるまでの時間も測ることができます。また、それを微分してピッチャーが投げた球速を測ることができます。
微分するというのは変化の割合を測る事なんですね。その際に「ある要素」は無視できるくらいまで小さくします、上記ピッチャーの場合はピッチャーからキャッチャーにボールが移動するまでの時間です。その時間を小さくして、点で変化量を測ります。ボールがピッチャーの手を離れた瞬間で測れば初速が出ますし、キャッチャー辺りで測れば終速が出ます。
「財産X=利益Y=利力Z」にあてはめます。
財産(純資産)は利益が積み重なってできたものとみます。すると財産を今までに生じた会社の全期間で微分すれば一会計期間あたりの変化である利益が出ます。利益を一会計期間で微分して、取引取引での稼ぐ力とみると利力が出ます。(引用PDFだと最後の二つの処理、それぞれ、ですね)
これが私の理解です。
引用PDFでは現金決済でしたが、実際には「掛け」で仕訳が切られます。
「財産X=資本Y=予算Z」でも良いんですけども、「財産X=資本Y=現金Z」となると現在の財務三表を上手くあらわす方法になるかもしれません。
しつこいですけども、B/S、P/Lがネット(差額)で出てきますので、既存の財務諸表を作る場合には期首試算表から、仕訳をすべて合算する別処理が必要です。その意味では三式を超えて六式という見方ができるかもしれません。なんだか不便な気もしますがITが発達している現在、ユーザーの入力インターフェースと処理量によっては十分算定可能なものかと思います。
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ここまで、三式簿記というものがどういうものかを理解するために、複式簿記を確認し、三式簿記を「時制的三式簿記」「微分的三式簿記」二つの面から概観しました。
いよいよ本題の三式簿記とブロックチェーンの関わりです。
ブロックチェーン・レボリューションからざっくりと引用しますと
複式簿記ではなく、ブロックチェーンを追加して「三式簿記」にしたらどうか。
取引をするたびにタイムスタンプ付きでブロックチェーンに記録する。
それを株主や会計士がいつでも見られるように公開しておけば、効率的に情報を検索したりチェックしたりできる。
数字をごまかすことは不可能だし、ボタン一つでリアルタイムの財務諸表が見られるようになる。
ブロックチェーンの中に監査が組み込まれることになるので、会計事務所に頼る必要もなくなるとの見方も。
いかがでしょう、ここまでの三式簿記となんだか違いますね?
私は途中で「財産X=資本Y=現金Z」なんて書きました。それもどうやら違うようです。
「財産X=資本Y=ブロックチェーンZ」という感じでしょうか。
ブロックチェーンに絡ませて取引を記帳するので、透明性があり、変更されず(実際の会計処理では消して書くのではなく、帳消しにする記帳を行って新しい記帳を行います)監査を行う人間にとってはリアルタイムに取引を確認できます。パブリックチェーンでトランザクションを丸見えにするのであればだれでも内容を確認可能です。
従来のこういう記帳から
このような記帳に変わるという事ですね
下側のTの字になっている部分がブロックチェーンでの記帳を表します。
企業同士のクローズドな記帳ではなく、いつどのような記帳がされたのか、が公的に透明性と非検閲性をもって記録されるのですね。
「監査法人におけるブロックチェーン」にて私は
監査法人のブロックチェーンに対する利用はこの監査の効率化にあるんじゃないかなぁ?と思います。
と書きました。
その辺りの理由からです。
現状の三式簿記は本来の意味からはかけ離れていると感じます。現状の複式簿記に堅牢なDBへの記帳を絡ませることによって恣意性を排除することが主眼にあるようです。
三式簿記をご存知の方はおそらくですが前述のブロックチェーン・レボリューションで知ったのではないでしょうか?だから「三式簿記そのものは分からないけれどブロックチェーンに記帳する事で透明化を図ることができる。良い事だ」という理解なのかな?と。
それはそれで結構な事だと思います。
別に「正しくはこうでね」とか言うつもりもありません。役に立つものは使えるもので、使えるのだったら多少変化してもいいように思います。
実際のプライベートチェーンの利用ですが問題があります。
利用企業が内実をさらすことは競争相手に自身の情報を与える事です。
また、トランザクションの処理速度に問題があることは皆さんご存知のはずです。
なので、監査法人が提供するチェーンは、匿名化が図られ、トランザクション向上を図るために集中管理的なものになるように思います。
パブリックチェーンを使うのは難しいのではないでしょうか?
参考
複式簿記以来の革命:ブロックチェーンが作る新しい「信用」#1 - NewsPicks
Warren Henke Triple Entry Accounting
What is triple entry accounting?
Triple Entry Bookkeeping With Bitcoin
BlockchainTech: Can Triple Entry Accounting Save the World?
ではでは
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