alis.to のみなさん、おはこんばんわ。
投げ銭作家のとし兵衛です。ながらく自由人として暮らしているぼくですが、大学を出て二年弱会社勤めをした経験があります。今日はその昔話をさせてください。
ぼくが就職したのは、1980年代も終わりに差しかかり、けれどもまだ泡ぶく景気(バブル)まっさかりの頃のことでした。
製造業でしたので、同期で就職したみなさんは、残業が月100時間越えるのは当たり前みたいな感じでしたが、ぼくは幸い、閑古鳥部署に配属され、二年弱の勤務期間中、実質残業はゼロでした。
そんな楽勝な部署だったにも関わらず、会社勤めがどうにも性に合わなかったんですね。東京の世田谷から横浜の方に通っていたので、ラッシュとは逆方向の通勤になり、当時の通勤列車はガラ空きで楽勝でした。
それなのに、毎朝会社へ向かう列車内のぼくは憂鬱で、
「あー、あと何駅で、会社の最寄り駅についちゃう」
「あー、もう、次の駅だ、あーーー」
などと思っていたのが、昨日のことのように思い起こされ、腰に緊張が走ります(うっ!!)。
お医者に診断してもらえば、「適応障害」ということにでもなりましょうか。
とまあ、そんなこんなのぼくの会社勤めの日々だったのですが、大手企業なので、入社してから三ヶ月ほど研修が続きました。
しかもこの会社が営業系が強い会社で、社長さんはみんな営業畑の人なんです。だもんで技術系で就職しても、一律に販売実習をやらされるんですよ。
見知らぬ人と話すのが苦手な、引きこもりニート系SFオタクの私には、まったく地獄としかいいようのない制度でありました。
やる前から「勘弁してほしいな」ともちろん思ってました。
でも、さすがにそれを口に出す勇気はありませんでした。
販売実習の中身は飛び込みの営業です。担当の地域を指定されて、そこにあるお店に虱潰しで営業をかけていきます。いや、そんなの、ぼくできないって。
販売実習の期間はたかだか二週間ほどだったかと思いますが、二、三日やってみて、
「これは無理、ぼくには無理、ぜったい無理、二週間なんて当然無理に決まってるから、もうやめさせてもらうわ」
と思って、実際にはまだ配属されていないので、一度挨拶をした程度なのですが、配属先の担当上司に連絡を入れました。
「あまりに無理なので販売実習はパスしたいんですけど」という趣旨です。
そしたら、「じゃあ、会って話を聞くから、会社の近くの駅まで来い」というような話になりました。
それで、よし販売実習途中でやめるぞと、気合を入れて行ってみると、五十くらいのおじさんと、三十くらいの若めの方が二人でぼくを出迎えてくれました。若いほうの方が、ぼくら新人を実際に担当してくれている方でした。
そして、どういうことになるのかと思ったら、寿司屋に連れていかれてしまったのです(笑)。
日本の社会というものが分かっていなかった世間知らずの若者は、そこで大いに拍子抜けしてしまいました。
行くまでは、
「販売実習は絶対もうやらない、ひとりぼっちでもいいから、先に配属先に
行って、どうにかさせてもらう」
みたいなことを勝手に考えてたんですが、寿司屋でビールを注がれながら、
「まあ、きみもしんどいだろうけど、どうだね、あと十日ほどじゃないか、なんとか、がんばってみないか」とかなんとか言われたら、
(うーむ、まあ、それでもいいか、こうやって、日本企業の対応の仕方を身を持って経験させてもらって、いい勉強になったし)
というような気持ちになって、
「はあ、そうですね、なんとかやってみます」などと言っている自分がいたのです。
というわけで結局、販売実習はやめられませんでした。
やめずに続けはしましたが、形だけの飛び込み営業はやったものの、大いに時間を持てあますことになり、一人ビリヤード屋に入って暇つぶしをしたりしてたのは、内緒の話。(当時ビリヤードが流行ってたんですよね。トム・クルーズの「ハスラー」なんて映画もありまして)
そんないい加減なことをやってたにも関わらず、一件だけは成約できたんだから、人生というのは不思議なものです。
てなことでみなさん、ナマステジーっ♬
[改稿: 2018.12.06]
[初出: 2017.06.04 https://dimofsoul.mitona.org/entry/2017/06/04/165542]