温かい午後
あなたは河原の石を拾い
左手に握って
ぬくもりを確かめる
握ったまま目を閉じて
長い間立ち尽くしている
何をしているの
私にキスするのも忘れて
小さな石ころが
地球の歴史すべてを知っていると
あなたは言う
砂が
葉っぱが
栗鼠が
熊蜂が
みんなが
地球の歴史のすべてを知っていると
あなたは言う
僕らは
無限の過去から
ゆっくりと流れてきた氷河が
未来の海へと
今にも崩れ落ちる
ぎりぎりの切っ先にいる
なーんてね
時々そんなことを考えてしまうよね
あなたは目を開けて笑う
耳に石ころをあてながら
それからあなたは
石ころを斜めに投げる
川面に一回二回三回跳ね返る石
でも四回目には力を失い
五回撥ねることはできないで沈んでしまう
振り返ったあなたの頭の上に
午後の日射しは傾きはじめ
あなたはやっと私を抱き寄せて
熱を帯びたキスをする
地球の歴史の
すべてを知っている小鳥が
それと同時に
梢から羽ばたいて
舞い上がる
あんなに空遠く
小さな点になって
峰を越えて・・・・
あなたのキスで
気が遠くなっていく私のように