ちょっと前に『後編)スイスは何故、ラグジュアリーを含めた嗜好品に強いのか?』という記事を書いたのですが、あの中で書いた架空の例が以下です。
これをスイスの場合で考えてみます。スイスから出てドイツに行商に行き、お客さんに不評だったらフランスに移動して売ることもできます。日本のように市場が日本国内しかないから日本人相手にがんばって売るしかないという状況ではありません。つまり「ドイツ人の好みに合わないんだから仕方がない、フランスに移動して売ってみるか。だから無理して買ってもらわなくても良いよ?」という話になります。
上記リンク先の記事では「スイスは陸続きだったから、労働者を含めた供給側の人が移動することができ、市場を選ぶことができた(それに対して日本は島国だったから、供給側かつ労働者の立場が不利になった面がある)」という話をしています。
この記事を書いた後に知ったのが、ここからのお話。
SINNというドイツの高級腕時計があります(「ジン特殊時計会社(名前が渋い!)」公式サイトはこちら)。
ラグジュアリーというよりもちょっと無骨で通な人の好むブランドですね。
創業者の故ヘルムート・ジン氏は元パイロットで、引退後にパイロット用の腕時計の会社を創業するわけですが……なんと、ジン氏自ら全部検品していたという……ドイツ人らしくてエエですなぁー。
(この話にご興味ある方は、以下の記事もどうぞ。
ヘルムート・ジン氏が亡くなられた時の記事です)
そのSINNの大ファンだったユーザーの中に、ブルーノ・ベラミッシュ氏がいました。
彼は後にカルロス・ロシロ氏と共に、ベル&ロスという高級腕時計の会社を創業します(公式サイトはこちら)。
(ブルーノ・ベラミッシュ氏が故ヘルムート・ジン氏に触れている記事を見つけましたので、リンクしておきます。
ヘルムート・ジンさんからは「自分たちのコレクションを再発見したよ」という言葉を頂きました。
個人的にいいなと思った、上記リンク先の記事のベラミッシュ氏のお言葉です。
ベル&ロスは1994年に初のコレクションを発表しますが、それが「BELL&ROSS by SINN」として発売されたモデルです。
画像はA.M.Iネットブティック様の以下の記事からお借りしました。
このモデルの詳しい解説も載っていますので、ご興味ある方はどうぞ)
SINNに影響を受けたブルーノ・ベラミッシュ氏が後に創業したベル&ロスは、日本風に言えば弟子筋にも当たるブランドですが、ジン創業の国ドイツではさほど評判にはならなかったようです。
しかしフランスで人気を博し後にフランス軍で採用、今はそれが他国の軍隊にも広がり、さらに一般の愛好家にも幅広く支持されています。
つまり「ドイツではイマイチだけどフランスでは大ウケ」となりました。
というわけで、冒頭で引用した文中の「ドイツ人の好みに合わないんだから仕方がない、フランスに移動して売ってみるか。だから無理して買ってもらわなくても良いよ?」というのが、嘘から出た実的なところでした。
えー、それだけ?
すんません、それだけです。
でも、嬉しかったです。
ですがしばらくして、喜んでいる場合ではないことに気づきました。
……日本ヤバいじゃん。
私はそれまで「アメリカが伸びるのは当然(だから日本が劣るのは仕方がない)」とは考えていました。
つまり「アメリカは人種のるつぼと長く言われていた国だから、多様性に対応するのが容易い(だからアメリカが恵まれているだけ)」と思っていたわけです。
しかし実際は、欧州だって陸続きだからかなり恵まれているわけで、要するに先進国で比べると「多様化への対応については日本はあまりにも不向きであり、不利である」と言わざるを得ません。
いや、そんなことわかってたよー。
日本は島国だし日本語使う日本人しかほぼいないし……ぐらいは思っていましたが。
もうちょっと深く考えてみると、これは相当にやばいことなのではないかなと。