暗い闇
暗闇
とても暗く、光が届くことのない深い世界。
前後左右、どこを見ても黒一色。
目を閉じても開いても、何も見えない漆黒の場所。
小さいころ、インフルエンザにかかり、高熱にうなされた時のこと。
目の前は、漆黒の闇。
そこをさまよっている自分。
どこへ向かっているのかがわからない。
あれ?
遠くから、声が聞こえる。
母親が、僕の名前を呼んでいる声が聞こえる。
声のする方向へ、歩いてみよう。
しばらくして気が付くと、母が僕を抱きかかえて名前を呼んでいました。
あまりにも必死の形相であったため、何があったのか母に聞きました。
母が言うには、高熱のあまり、筆者が夢遊病のように家の中をさまよい歩き、玄関から外に出ようとしていたようです。
その姿を見て、母は慌てて筆者を抱きかかえ、必死に名前を呼んでいてくれていたのでした。
大人になってからも、同じようなことがありました。
その時も、幼少の時と同じように、暗闇の中を歩く夢にうなされていました。
ただ、自分が大人になっている自覚があったので、さまようのをやめて暗闇の中、一人膝を抱えてうずくまっていました。
すると、父親が筆者の名前を呼ぶ声が聞こえてきます。
「あれ?お父さん?どうしたん?」
と声に出しながら、目が覚めました。
時計を見ると、深夜の3時。
ああ、夢だったかと安心し、再び床に就きました。
携帯電話がひっきりなしになる音で、目を覚ましたのが朝の7時半くらい。
着信履歴を見ると、おびただしい数の姉からの着信。
嫌な予感がして、すぐに折り返すと。。
「朝起きたら、隣で寝ていたはずのお父さんが冷たくなっていたって、お母さんから電話があった。」
会社の上司に電話で事情を話し、すぐに支度をして実家に戻りました。
葬儀も終わり、しばらくしてから。
声を聞いたまさにあの時、父がこの世から旅立っていったのではないかと思うようになりました。
暗闇という漢字を考えた人々は、もしかすると闇深く苦しいときに、こうした声や音を聞いた。。。だから、「音」を漢字の中に込めたのかもしれませんね。