今日は仮想通貨ペトロシリーズ完結編です。
前回の記事では、ペトロを裏打ちする"ベネズエラの石油の信用"について、石油生産量がガタ落ちしているので疑わしい、、、とお話しました。
実は彼らの石油が信用できない理由は、あと2つもあります!
、、、、の前に、ですね。
前回の記事にこんなコメントが。
狸尊さんいわく、300人もICOステークホルダーいないとのこと。
おお、そうなのか!と思い確認方法を教えてもらいました↓
ベネズエラ政府は既に公共事業にペトロ使い始めていますが。。。
内情はどうなっているんでしょうね。
(にしてもこの界隈の方々は優しいですね、勉強になりました)
さてと、石油の話に戻ります。
ベネズエラの石油が信用ならない最初の理由は"石油生産量ガタ落ち"でした。
では2つ目の理由はというと、こちら
精油所不足
これ、どういうことかというと、石油って採ったばかりの状態(原油といいます)で運んでも、買ってもらえないことが多いんです。受け取り手が欲しいものは灯油だったり軽油だったりナフサだったり、、と色々だし、世界中の国が石油を精製できるわけでもないので、精油所ってところで加工してから輸出するんですね。
エネルギー×ブロックチェーンシリーズ開始の際に、エネルギー業界の上流、中流、下流を説明したの覚えていますか?
そこに追記すると、、
矢印のとこに精製の工程が入ります。
運ぶ前か後かは相手の国/企業次第です。すごい製油所持っているから原油持ってこい!って人もいれば、加工してから運んできてよって人もいるのです。
ベネズエラの弱点は、この精油所の不足。
じゃあ今までどうしていたかというと?
アメリカに運んでました。
この石油埋蔵量世界一の国は、アメリカに原油を輸出して、アメリカから石油製品を輸入しているのです。
効率悪すぎじゃないですか?
とはいえ、、、実はこれ、"ベネズエラの石油"に限らず、南米の経済モデルには多くみられること。
”安い原料または部品を輸出して、高い完成品を輸入する”というこのモデルは、南米諸国の工業化を遅らせ、経済発展を大きく妨げたといわれています。
(余談ですが、日本が戦後、粗悪品だと言われようと自国で作り、原料輸入・商品輸出国への道を進み、更にアジアの他の国に広げていったことは世界的に評価されています。もちろん他にも様々な要因はあるのですが、ここで違う道を選んでいたら今の日本、アジアはなかったでしょう)
さて、話を戻しましょう。
"ベネズエラは、アメリカに原油を輸出している"
ここまで言えば一連の記事をじっくり読んだ方はお分かりだと思います。
アメリカからの経済制裁に
"石油取引の制限"
ってあったよね、と。
つまり、アメリカに原油を送れなくなったベネズエラは、石油の大きな販売ルートを失ってしまったのです。では原油を買ってくれる他の国に運べばいい!といっても契約には時間がかかるし、大型タンカーは足りないし、何より輸送コストが上がります。
まさに、サプライチェーンを制する者は産業を制す、ですね。
そして最後に、、、
実はベネズエラ、世界一を誇る石油埋蔵量も怪しいって言われてます!
まず、石油埋蔵量とはそもそもなんぞやというと
・ちゃんと存在していて
・採算が合う範囲で採れる
石油の量を指すんです。
Proven Oil Reserves、日本語だと可採埋蔵量などと言います。
図解するとこんな感じです↓
ベネズエラの3000億バレルという数字は政府公式発表なのですが、この石油業界の常識からは外れています。石油の存在自体は確認できているみたいですが、なにせアスファルト状(!?)らしく無茶苦茶コストのかかる石油なんです。
これを"採ったら儲かる石油"とは言わないだろ!ということでノルウェーのリスタッドエナジー社って会社が計算しなおしたところ
せいぜい80億バレル
という衝撃の結果に。(出所:プラッツ社)
何とも勢いよく盛ってくれたものですね。
ということで本シリーズの結論は、
ベネズエラの仮想通貨ペトロを裏打ちするはずの石油は怪しい、なぜなら
1. 生産量ガタ落ち
2. 製油所足りていない
3. そもそも埋蔵量怪しい
さらに
4. ICO結果にも嘘ありそう
うーん、いいところがない!
ペトロは怪しい、、という結論になりました!
これにて仮想通貨ペトロシリーズ完結です!ぱちぱちー!
ペトロのことをなんだかボロカス書いてしまいましたが、そんなものに頼らざるを得ないほどベネズエラは"まずい状況"にあるということです。
ただ一方で、ベネズエラが西側諸国を嫌い、新たな経済圏を必要としているという点は理解もできるし同情すべき点もあるのです。
植民地時代から続く長年の搾取構造。それを変えようとしたのが、前職のチャベス大統領でした。その意思を継いだのが現職マドゥロ大統領。
しかし、残念ながら彼らにはベネズエラ最大のビジネスである石油産業への理解が足りませんでした。そして、その産業の構造をちゃんと理解しないまま喧嘩を売り、さらには経済の石油依存度を上げてしまったのです。
言い換えれば石油に全ツ政策失敗です。
その結果、アメリカからの経済制裁に弱い体質を作ってしまった。掲げたビジョンと、とった政策が矛盾してしまった例だと言えます。
苦肉の策として出てきたペトロ。
ベネズエラの前途は多難以外の何でもない。
だからこそ、たとえはったりであろうとも、ペトロが突破口をつくり未来を築くのであれば、私はその未来を見てみたいとも思うのです。
MALIS
ペトロシリーズはこちら
1. 仮想通貨ペトロはベネズエラの救世主となるか?