現実世界とデジタル世界、それらはすでに切っても切り離せない関係になっています。しかし、現状両者の距離感は縮まっているとは思えず、それがどのように接近し未来を作っていくのかについては、まだ考える余地がありそうです。本記事ではデジタル資産の相続を中心に、今後の展開について考えていきたいと思っています。
デジタル経済が発展するにつれ、テキストファイルからYoutubeなどSNSのアカウント、デジタル写真に動画ファイルなど、ありとあらゆるものがデジタル資産として考えられるようになりました。現在ではNFTや暗号資産などが新しいアセットクラスとして認識されてはいますが、それらがいったい何なのか?何者でどう扱っていけばいいのかという部分に関しては依然として理解が薄いように感じます。
デジタルワールドにおけるアセットというのは、物理的な現実世界、これまでの資産(家、車、紙幣、家具、家電、本、雑貨)と比べて適用範囲が広いことが言えます。
例えば、資産クラスの一つにある「営業権」や「著作権」「特許権」はデジタル資産同様、目に見えず手に触れることのできない資産ですが、それらとNFTアートやデジタルペイント、イラストレーション、ないしはYoutubeの動画などは資産としてベクトルが異なるように思えます。端的に触れることができないだけでなく、感情を揺れ動かすものか、共感できるものなのか、など単なる権利価値だけではないものにまで定義を付けられます。
また、他方ではクリプトカレンシーのような無形ではあるもののお金として機能するものもあったり、Youtubeのアカウントのようなものであれば営業権を持ちつつもそれによって社会へのアプローチとなる共感や感動を与えることもできるアセットとして考えることもできます。
NFTアート(イラスト)= 著作権 + 共感価値 + 視覚的価値 + 金銭的価値
暗号通貨 = 金銭的価値 + 機能的価値
デジタルイラスト = 著作権 + 共感的価値 + 視覚的価値
SNSアカウント = 営業権 + 共感的価値
このように、デジタル資産はこれまでの無形資産の言うところの価値だけではない、複合的、かつ拡張的な解釈を持った資産クラスだということができ、その扱いに対するソーシャルな認識が追い付いていない部分が多数あるというのがここでの結論です。
デジタル資産のアセット考察をするならば、同時に考えておきたいのが物理的かつ電子的価値を持つフィジタル資産です。フィジタルという言葉は、物理的デジタルという意味を持ち、いわゆる実在的なものと、非実在的なデジタルなものを複合的に考えたときに生じる概念から来ています。
このフィジタルという言葉から、そのまま将来的に生まれてくるであろう野がフィジタル資産ですが、これはいわゆる、Web3の実生活での応用といってもいいかもしれません。簡単にイメージするなら電気自動車やウェアラブル端末、デジタルデバイスの片りんに見る将来のデジタルアセットの予想図です。
フィジタル資産にはデジタル資産が持っていた「無質量性」に加えて、質量のあるものが持つ価値も考慮する必要があります。例えば、室内空間を目いっぱい使った電気自動車内のデジタルイルミネーション、これはその自動車のフレームごとに別のイルミネーションが見れますから一つのフィジタルアセットとして見ることができます。
現段階では、フィジタルという概念自体が知られておらず、よりわかりやすい言語化もなされていない状態です。言語化もされていないというのも、安宅和人さんが提唱している電魂物才(和魂洋才)のような「デジタル」と「フィジカル」を折衷したような言葉に近いのですが、それをさらに一般化したようなワード、これがまだ表れていないのでは?ということです。
デジタル資産の相続問題はやがて日の目を浴びることになるのは意外と想像にむずかしくないかもしれません。Googleアカウントを持っていない人はほとんどいないかもしれませんが、そのGoogleアカウントやそのほかSNSアカウントに紐ついたデータ資産、もしくはGoogleアカウント内にある写真や音声ファイルなどは、持ち主が死んでしまったらどうなってしまうのでしょうか。
その答えは、シンプルに「無くなってしまう」です。しかし、この状態というのはいささか不思議に思うときがあります。車や家、そのほかの物理的な資産はすべからく「アセット」とみなされ相続対象になる一方で、デジタル資産がどういったものであろうと、それがわかりやすい金銭的価値を持っていなければまともに相続対象には見られないわけです。
Googleアカウントを保持したまま死んでしまった人がいた場合、Googleアカウントは規則にのっとってログインがなければ勝手に閉鎖されてしまいます。それは死亡人のアセットが消えることを指しており、相続されているわけではありません。相続人が居れば、車は引き継げるし家も相続できる他方、こういったデジタル資産をどのように引き継いでいくのかという部分に関しては夜明け前といってもいいでしょう。