fiestared様が上の記事で「DeepL」について触れていました。
「DeepL」は翻訳サイトです。ちょっと翻訳するなら無料で使えますが、有料のライセンスではドキュメントをファイル単位で丸々翻訳してくれるのが特徴です。
翻訳の具合を、Google翻訳と比較してみました。
■原文
You can plan software effort and schedule realistically.
Or you can gather hard-won experience, as IBM did at the beginning of the computer age.
The IBM System/360 was the largest software development of its time (the 1960s).
It is the project on which Fred Brooks learned the lessons that he so charmingly recounted in "The Mythical Man-Month".
In 1966 IBM's software budget was $40 million and 2,000 people were working on the 360's basic software, according to Thomas J. Watson, Jr., then IBM's chief executive officer.
■DeepL
ソフトウェアの努力とスケジュールを現実的に計画することができます。
あるいは、コンピュータ時代の初めにIBMが行ったように、苦労して得た経験を集めることもできます。
IBM System/360は、当時(1960年代)では最大のソフトウェア開発であった。
フレッド・ブルックスが「神話の人月」で魅力的に語った教訓を学んだプロジェクトです。
1966年のIBMのソフトウェア予算は4000万ドルで、当時のIBMの最高経営責任者であったトーマス・J・ワトソン・ジュニア氏によると、2000人が360の基本ソフトウェアの開発に携わっていたという。
■Google翻訳
ソフトウェアの作業を計画し、現実的にスケジュールすることができます。
または、IBMがコンピューター時代の初めに行ったように、ハードウォンの経験を集めることもできます。
IBM System / 360は、当時(1960年代)の最大のソフトウェア開発でした。
それは、フレッド・ブルックスが「神話の人月」でとても魅力的に語った教訓を学んだプロジェクトです。
IBMの最高経営責任者であるThomas J. Watson、Jr.氏によれば、1966年のIBMのソフトウェア予算は4,000万ドルで、2,000人が360の基本的なソフトウェアに取り組んでいました。
どちらもなかなかいい感じです。Google翻訳のいいところは、ですます調で統一されているところです。DeepLはである調とですます調が混在してしまっています。
DeepLは人名をカタカナにしてくれています。「hard-won」がちゃんと日本語になっています。basic softwareは基本ソフトウェアと訳すのが正解です。
どちらも「神話の人月」になっており残念です。そこは「人月の神話」として欲しかったです。(人月の神話は日本語訳されておりまだ本屋で買えると思います)
■原文
It is hard to pin down what an operating system is other than saying it is the software that runs in kernel mode -- and even that is not true.
■DeepL
カーネルモードで動作するソフトウェアであると言う以外に、オペレーティングシステムとは何かを特定するのは困難です -- それさえも真実ではありません。
■Google翻訳
オペレーティングシステムがカーネルモードで実行されるのはソフトウェアであると言う以外に、オペレーティングシステムを特定することは困難です。
Google翻訳は、"--"以降がどこかに行ってしまいました。それに日本語としておかしいです。これはDeepLの圧勝と言えます。
■原文
Black lives matter.
■DeepL
ブラック・ライヴズ・マター(黒人の命を軽んじるな).
■Google翻訳
黒人の生活が重要です。
DeepLは句点がピリオドになっています。「ブラック・ライヴズ・マター」という言葉があると認識しているみたいです。Google翻訳の方は「生活」ですか...。生活も大事ですが今の社会を認識してはいないようです。
単純な英訳だと面白くないので、古い言葉遣いを例にしてみました。(夏目漱石 草枕)
■原文
山道を登りながら、かう考へた。
智に働けば角が立つ。
情に棹させば流される。
意地を通せば窮屈だ。
兎角に人の世は住みにくい。
■DeepL
As I climbed the mountain path, I thought about it.
If you work with wisdom, your horns will be sharp.
If you let your emotions get the better of you, you will be swept away.
If you give in to your feelings, you will be swept away; if you give in to your will, you will be cramped.
The world of man is a difficult place to live.
■Google翻訳
While climbing the mountain path, I thought about it.
If you work for Satoshi
It will be washed away if it is emotionally affected.
It's cramped if you pass it on.
It is difficult for people to live in the rabbit corner.
「かう考へた」を、両方ともよく訳しましたね。Google翻訳の奮闘はしかしそこまで。Satoshiって誰?ALISユーザには面白い翻訳結果ですね。rabitt cornerって何だ。。。?これもDeepLの圧勝です。「;」を使っているあたりも、センス・意思のようなものも感じてしまいます。
Google翻訳は翻訳された文を自分のドキュメントに貼り付けること自体が苦労します。翻訳精度もさることながら、DeepLはドキュメント全体を翻訳してくれるところが最大の魅力でしょう。Starterライセンスで月750円とだいぶ安いので、例えば人工知能の論文を常にキャッチアップしたいとか、業務で翻訳が必要な人には大変便利です。私は常に翻訳が必要というわけではないですが、心惹かれるものがあります。翻訳サイトってありがたいですね。
DeepLに関して、あえて疑うならば、「今、翻訳していない」可能性があります。根拠は、ですます調とである調が混在しているところと、句点がピリオドになることがあることです。膨大な多言語対応文書データベースがあって、入力した文がヒットしたところの訳文を返しているだけなのかもしれません。
DeepLのWindowsアプリを導入してみました。Journeyの「Raised On Radio」の歌詞を訳してみました。訳したい部分を選択して、Ctrl+cを2回押すとアプリが上がってきます。
意味のある歌詞でないことがわかりますね。ところどころ訳されていません。人名や音楽表現が得意でないようです。Be Bop a Lu Laはよくある歌詞ですよね。She Loved Me Tender.もだめでした。カンマ、ピリオドの有り無しにも少し影響されるようです。
2020/07/06付記
DeepLのWindowsアプリをアンインストールしました。何もしていなくてもCPUを使ってしまうためです。
以上