埼玉県警武南警察署(川口市辻)の50代の男性警察官の新型コロナウイルス(COVID-19; coronavirus disease 2019)感染が2020年3月5日に判明しました。武漢市からのチャーター便帰国者以外で埼玉県では初の感染確認です。武南はあまり知られていない地名で、武漢は字が似ているため、報道を見て戸惑った人もいるでしょう。
男性警察官は2月24日と25日に38度台の熱が出て、25日に医療機関を受診しましたが、インフルエンザ陰性とされました。26日と27日は平熱に戻ったとして、勤務しました。しかし、28日は37度で出勤して体調不良で早退しました。翌日の29日は当直勤務し、3月1日も出勤しました。
体調不良でも出勤する昭和のガンバリズム、精神論根性論が有害です。東急ハンズは2016年に公式Twitterがインフルエンザに「勇気とメンタルで立ち向かいたい」とツイートして炎上しました。東急ハンズは心斎橋店従業員が長時間労働やパワハラで過労死し、ブラック企業大賞にノミネートされており、それと重ね合わせて批判されました。昭和のガンバリズムは民間感覚では許されなくなりつつありますが、まだまだ残存しています。
男性警察官は、2日は37.5度でした。同じ医療機関を受診し、インフルエンザ陰性とされました。3日も37.5度。4日は38.4度で別の医療機関を受診し、5日にPCR検査で陽性が確認されました。検査されるまで医療機関を渡り歩いたことになります。中々検査が受けられない実例です。
男性警察官の出勤や医療機関受診など感染判明前の日々の行動は、埼玉県のWebサイトで発表されています(埼玉県「新型コロナウイルスに関連した患者の発生について」2020年3月5日)。男性警察官が2月22日に上尾市の「東武バンケットホール上尾」で80人ほどが出席して開かれた同窓会に参加していたことも報道されました(「埼玉で50代警察官ら2人が感染確認 新型コロナウイルス」NHK 2020年3月5日)。
このような行動情報は立正佼成会附属佼成病院の感染患者からは出て来ません。佼成病院では4人も感染者が出ている割には報道が少なく感じます。ここには疑問を覚えます(林田力「新型コロナウイルス報道の疑問」ALIS 2020年3月1日)。
https://alis.to/hayariki/articles/3Y1bvp5ANJNA
武南警察署は感染者と一緒に当直した署員や同僚課員35人を濃厚接触者として自宅待機としました。一方で武南警察署の署長は感染判明の翌日の6日午前8時45分に大会議室に署員ら約70人を集めて訓示をしています(「<新型肺炎>残された警察力で頑張る 職員感染の武南署、署長が訓示「市民のため、やるべきことやろう」」埼玉新聞2020年3月7日)。全員を一か所に集めて会議することは感染リスクを高めます。
新型コロナウイルス感染症対策専門家会議は以下のように指摘します。「感染を拡大させるリスクが高いのは、対面で人と人との距離が近い接触(互いに手を伸ばしたら届く距離)が、会話などで一定時間以上続き、多くの人々との間で交わされる環境だと考えられます」(「新型コロナウイルス感染症対策の基本方針の具体化に向けた見解」2020年2月24日)
新型コロナウイルスの世界的な予防措置に反します。報道では「頑張るぞ」と格好よくまとめていますが、やはり昭和の集団主義や精神論根性論が有害です。
新型コロナウイルスと全国一律の対策
https://alis.to/hayariki/articles/KJNnWXoRo4bo