NHK大河ドラマ『どうする家康』第47回「乱世の亡霊」が2023年12月10日に放送されました。大坂冬の陣で大阪城は砲撃にさらされます。淀殿は成長して家康に再会した際に火縄銃を家康に向けて「バーン」と言っていました。大坂冬の陣では家康から大筒を撃ち込まれました。
大筒による砲撃は和議成立の契機になりました。淀殿が臆病風に吹かれて真田信繁ら徹底抗戦派の反対を押し切って和議に応じたとする描かれ方が定番です。これに対して『どうする家康』では砲撃の恐ろしさを描くことに成功しました。徳川家康自身が演出したものですが、戦争の凄惨さを示します。
和議で徳川方は豊臣方をだましたとされます。これには諸説あります。第一に外堀を埋めることが条件でしたが、徳川方は本丸以外を全て埋めてしまいました。惣構の「惣」が全てを意味すると正当化しました。方広寺鐘銘事件に通じる悪辣さです。
第二に外堀は徳川家、内堀は豊臣家が埋めるという条件でしたが、徳川方は内堀も埋めてしまいました。この説では最終的に埋めることは変わらず、誰が埋めるかとなりますが、豊臣家が埋める場合は儀礼的に一部だけ埋めて終わりにすることが想定されます。それを許したくないから徳川方が埋めましたが、むしろ儀礼的に一部だけで済ませることが当時の慣習でした。この説でも徳川は狡いとなります。
城を徹底的に破壊しなければ許さないルールは徳川家が押し付けたものです。後に福島正則は広島城無断修築で武家諸法度違反に問われます。幕府は正則に破却を命じ、正則は改修部分の一部を破却しました。幕府は破却が不十分として正則を改易にしました。
豊臣家とすれば方広寺鐘銘事件で難癖をつけられ、大坂冬の陣の和議でだまされ、家康に怒って当然です。豊臣方は徳川の卑怯を世に訴えようとします。
淀殿には賤ケ岳の合戦で助けに来なかった家康への恨みを抱えていました。第30回で描かれた茶々の不信が高台院や江によって掘り下げられました。
『どうする家康』第30回「新たなる覇者」茶々の不信感
家康は淀殿に手紙を出します。主人公の言葉で対立者が心変わりする展開は主人公中心主義で萎えます。しかし、市を引き合いに出して、子どもを未来に残すことが役目ではないかとの言葉は刺さります。市は茶々らを生かしました。豊臣秀頼を自分の思いで滅ぼしてよいかと思うでしょう。
淀殿は秀頼を自由にしようとしましたが、秀頼は淀殿の思いや恨みを受け継いでおり、それ以外の考えができませんでした。自発的な選択の形式をとっていますが、事実上は選ばされた選択になっています。アリバイ作りのためだけの本人の意思確認は現代日本でも問題です。
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秀頼は徳川と戦うと演説しますが、内容は空虚です。天下人アピールをしても現実離れを感じます。豊臣家の保身のために浪人衆を放り出さないことは正しいです。浪人衆追放という非人情なことを強要される言われはないと怒って良いです。方広寺鐘銘事件で開眼供養を中止させられ、大坂冬の陣の和議ではだまされました。天下人を目指す以前に現在の豊臣家が圧迫されています。秀頼は地に足ついたところで怒って良いでしょう。
次回は最終回「神の君へ」です。来年の大河ドラマは『光る君へ』です。昨年の大河ドラマ『鎌倉殿の13人』最終回には松本潤さん演じる徳川家康が出演するサプライズがありました。『どうする家康』最終回にもサプライズがあるのでしょうか。
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