NHK大河ドラマ『どうする家康』第3回「三河平定戦」が2023年1月22日に放送されました。松平元康は岡崎城に入ります。この時点で今川家から自立の意思を持っていたと描かれることも多いですが、『どうする家康』では三河を織田から防衛するための今川氏真の指示とします。
『鎌倉殿の13人』で源頼朝は後白河法皇の夢を見ました。『どうする家康』の松平元康は今川義元の夢を見ます。天下人になる人物の共通項です。
元康の今川家への忠誠心は高いですが、今川氏真は援軍を「出す出す詐欺」で孤軍奮闘を要求します。元康は今川陣営のまま駿河を守る防壁を続けるか織田につくかの選択を迫られます。
徳川家康の偉人伝を書くならば、今川からの独立や織田との同盟は元康の主体的選択としたいところです。これに対して『どうする家康』の元康は今川家を離反する意思はありません。家族のいる駿府に戻りたいと思っています。今川の離反することは妻子と会えなくなることを意味します。
家康の生母の於大の方は「家臣と国のためならば己の妻や子など平気で打ち捨てなされ」と言います。『鎌倉殿の13人』で「鎌倉のため」に非情を貫いたことに重なります。『鎌倉殿の13人』では北条義時がブラックで、北条政子がホワイトでした。『どうする家康』では女性キャラが冷酷な乱世の論理を主張し、男性キャラが戦慄します。ジェンダーレスな作品です。
後に家康は築山殿事件で文字通り国のために妻や子を打ち捨てることになります。於大の方は築山殿を疎み、築山殿事件の背景になったとする見解があります。『どうする家康』の於大の方も築山殿事件で役割を果たしそうです。
家臣の酒井忠次は元康に無断で今川家からの自立の合意形成を進めます。それを三河のためと正当化します。忠次は後の築山殿事件で織田信長の前で築山殿や徳川信康を庇わず、謀反が事実との印象を与えました。忠次は信康の独裁傾向や岡崎派と浜松派の分裂を危惧し、むしろ信康を排除することが良いと考えたとする見解もあります。『どうする家康』でも「お家のため」と正当化するのでしょうか。
元康が今川から離反することは駿府にいる松平家の人々の生命が保障されなくなることを意味します。歴史を知っていれば瀬名と竹千代が人質交換で岡崎に来るため、あまり深刻に考えないかもしれません。しかし、駿府にいた全ての松平家関係者が岡崎に戻れた訳ではありません。重要なキャラクターでなくても非情なシーンを描きます。ゲーム画面のようなCG利用などの批判もありますが、乱世のリアルを追求しています。
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