NHK大河ドラマ『どうする家康』第29回「伊賀を越えろ!」が2023年7月30日に放送されました。「99.9%脱出不可能」と紹介されます。徳川家康演じる松本潤さんは『99.9-刑事専門弁護士』を主演しています。有罪率99.9%を克服して冤罪を追及するドラマです。『どうする家康』の家康も信長殺しの冤罪をかけられての脱出です。
99.9 刑事専門弁護士 THE MOVIE
序盤のイメージでは「どうする伊賀越え」というタイトルになりそうですが、目的に向けて真っ直ぐなタイトルです。『真田丸』や『おんな城主直虎』のようなコミカルなドタバタぶりはありますが、家康自身はコミカルではなく、ビシッとしているところが異なります。放送当初は歴代家康の中でも最も頼りなさそうで慌てふためくドタバタぶりを描くと予想していましたが、築山殿事件後はシリアスモードになっています。
茶屋四郎次郎は家康に本能寺の変を伝えるだけで、伊賀越えには同行しませんでした。岩井三四二『あるじは家康』など茶屋四郎次郎が伊賀越えに同行する話も多いです。商人は決死の逃避行に足手まといという考えもあるかもしれませんが、商人は武士以上に旅に慣れていました。旅慣れているということは山賊などの対処もできることを意味します。上方と三河を何度も往復しており、土地勘もあります。金で交渉するためには茶屋の財力が必要です。『どうする家康』の家康一行は、すぐに金がなくなり、飢えていました。
家康一行は危機に陥りますが、そこに三河一向一揆で追放された本多正信が再登場します。ケレン味たっぷりの登場で、反対のことを言って人を惑わします。主役を食うほどの存在感です。
『どうする家康』の築山殿事件は誰も死なせたいと思っていなかったのに起きた悲劇です。徳川家の交渉下手を示すものです。この点では駆け引きのできる正信のような存在は貴重です。正信が後に家康第一の側近になることも理解できます。
一方で石川数正出奔や大久保忠隣改易の背後に正信の讒言があったとのマイナスの描かれ方もあります。家康を助けるために言葉を使うことは面白くても、冤罪を作る悪い詐欺師は不愉快です。それに乗せられる家康も愚かとなります。『99.9-刑事専門弁護士』で冤罪を追及する側の松本潤さんが冤罪を作る側になることは笑えません。この辺りをどう描くかは見物です。
明智光秀は『麒麟がくる』とは対照的な俗物に描かれましたが、今回も俗物演出が上乗せされました。光秀は家康を白兎と言います。これは織田信長の呼び方です。信長が呼ぶのを聞いていたのでしょうか。
ルイス・フロイスは「己れを偽装するのに抜け目がなく」と評しました。『どうする家康』では於愛の方に謀反を起こしそうな顔を評されます。謀反を起こすことが顔に出る人が「己れを偽装するのに抜け目がなく」となるでしょうか。それとも織田家中にどっぷり浸かった訳ではないフロイスが評するくらいだから多くの人が裏表のある人と判断できる人物だったのでしょうか。
山崎の合戦はあっという間に終わりましたが、光秀は壮絶に戦いました。逃走中に竹槍にさされて落命とあっさり描かれることが多いですが、『どうする家康』では壮絶な討ち死にとなりました。武田勝頼と比べて優遇されています。
『どうする家康』第28回「本能寺の変」立ち止まって中止する決断力
『どうする家康』第27回「安土城の決闘」信長と家康と光秀の三角関係
『どうする家康』第26回「ぶらり富士遊覧」本能寺の変の新たな黒幕説か
『どうする家康』第25回「はるかに遠い夢」身代わりのだましは失敗