テレビ朝日のテレビドラマ『相棒 season18』が2019年10月9日から始まりました。第1話「アレスの進撃」はテレビ朝日開局60周年記念スペシャル番組です。『相棒』は前シーズンのシャブ山シャブ子で薬物の恐ろしさを描きましたが、その姿勢は「アレスの進撃」でも一貫しています。
『相棒season17』第4話「バクハン」(2018年11月7日)のシャブ山シャブ子演出は大きな反響を呼びました。警察の建前論的な啓発活動よりも、よほど薬物乱用防止の教育効果のあるものでした。しかし、この演出は批判や抗議も受けました。そのためにドラマ制作が萎縮する懸念もありました。成宮寛貴さん復帰のフェイクニュースもシャブ子演出抗議者への屈服または取引と読むこともできました(「成宮寛貴さんの相棒復帰はフェイクニュース」ALIS 2019年10月4日)。
https://alis.to/hayariki/articles/KmQMkJY45eGO
この懸念は杞憂でした。「アレスの進撃」では「ロシアンルーレット」という名の幻覚作用を持つ薬物が登場します。冠城亘(反町隆史)に「違法なものではない」として勧められます。これは「脱法ドラッグ」「合法ドラッグ」「脱法ハーブ」「合法ハーブ」の名目で販売される危険ドラッグのアナロジーになります。
杉下右京(水谷豊)に対しては食事の中に混入されます。薬物は相手の判断力を奪う犯罪に利用されます。薬物は暴力と同じです。「被害者のない犯罪」ではありません。シャブ山シャブ子の恐ろしさもシャブ子の人格崩壊だけでなく、犯罪組織に利用されることでした。シャブ山シャブ子の演出で訴えたかったことを改めて訴えています。
意図せず薬物を摂取させられた右京はトリップ状態に陥ります。本人は愉快そうですが、傍から見ると間抜けです。薬物乱用が惨めであることの教育効果があります。いつもキリッとしている右京のイメージを崩しかねない演出ですが、主役が体を張って演じました。今後も反薬物の姿勢を期待します。