テレビドラマ『99.9-刑事専門弁護士 SEASON I 特別編 第一夜』が2020年5月31日に放送されました。SEASON Iの第1話の再編集版です。第1話は指紋のついた凶器や防犯カメラの映像に証言が揃っている冤罪事件に取り組みます。警察や検察は誰かが犯人を仕立て上げているのではないかと疑う視点が欠けています。
第1話ではブラック企業経営者の悲惨な末路が明らかになりました。冤罪とブラック企業や貧困ビジネスなどの社会悪という組み合わせは『白日の鴉』と重なります(林田力「『白日の鴉』冤罪と貧困ビジネス」ALIS 2020年3月21日)。
SEASON Iは検察組織の闇を明らかにします。検察庁法改正案や東京高検の黒川弘務検事長の賭け麻雀が問題になった2020年にタイムリーな放送です。先見性のあったドラマと言えるでしょう。
ドラマ開始時には松本潤さんと香川照之さん、榮倉奈々さんの主要3キャストがリモート出演しました。松本潤さんが榮倉奈々さんを「榮倉」と名字呼び捨てで呼んでいたことが印象的でした。二人の仲の良さを感じさせます。
ドラマの二人も息が合っています。立花彩乃弁護士(榮倉奈々)は振り回される役ですが、プロレス好きなどキャラとして存在感があります。『イノセンス 冤罪弁護士』の川口春奈さんも同じような役回りでしたが、序盤は文句を言うばかりの役立たずという印象を与えました。深山大翔弁護士(松本潤)が寒い駄洒落を言うなど隙がなさそうで隙がある点も共演者を活かしています。
『イノセンス 冤罪弁護士』と比べると恋愛意識が出ないところも良いと言えます。恋愛は物語の定番ですが、重苦しさがあります。恋愛がない方がコミカルな雰囲気を貫けます。恋愛を出さずに成功した漫画に『動物のお医者さん』があります。
深山弁護士と立花弁護士は息のあったコンビでした。ところが、SEASON IIでは立花弁護士さんが登場せず、代わりに尾崎舞子弁護士(木村文乃)になりました。SEASON II放送当時も立花弁護士のままが良かったと思ったものですが、改めてSEASON Iの第1話を観て、榮倉さんを出さないというチャレンジをよく決断したものかと思います。SEASON IIを見続けていくと尾崎弁護士は重要な役回りになります。
その木村文乃さんはNHK大河ドラマ『麒麟がくる』では明智光秀の妻の煕子を演じます。光秀は愛妻家として知られており、オーソドックスに描けば他を寄せ付けない圧倒的な完全無二のヒロインになります。ところが、沢尻エリカさんが麻薬取締法違反で降板し、帰蝶が初々しい川口春奈さんになり、ヒロインのような存在感を放ちました。さらに門脇麦さんの演じる架空の女性もヒロインのようになっています(林田力「『麒麟がくる』第九回「信長の失敗」」ALIS 2020年3月16日)。
しかも、煕子の見せ場である疱瘡のエピソードや越前への逃走時に背負われた話などは描かれませんでした。今は影が薄いですが、木村さんには『麒麟がくる』でも『刑事専門弁護士』のように序盤の影の薄さを圧倒する存在感を期待します。
99.9 刑事専門弁護士 SEASON I 特別編
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